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スウェーデンがNATOに加盟|32カ国目に加入した背景とは

2024年2月、スウェーデンが32カ国目となるNATOに加入しました。ヨーロッパの情勢が大きな要因となっていますが、そもそもNATOの意味が分からない方もいるでしょう。

ここではNATOの意味について詳しく解説するとともに、スウェーデンが加盟した背景を紹介します。

 

NATOとは


※イメージ画像

NATOの正式名称は、北大西洋条約機構です。北米とヨーロッパの国々で構成される軍事同盟であり、集団防衛圏を作るのを目的としています。

なお発足当初の本拠地はパリに置いていたものの、2024年2月現在ではベルギーのブリュッセルとなっています。

ここではNATOがどのようにして誕生したのか、背景について細かく解説しましょう。

NATOはいつ誕生した

NATOが誕生したのは、1952年です。

1949年から北大西洋条約をアメリカと西欧諸国は結んでいたものの、NATOが発足した要因になったのは朝鮮戦争が勃発して以降でした。

一方で北大西洋条約を結んだ背景には、ソ連を中心とする東欧諸国への警戒心が挙げられます。

よくソ連を昔のロシアと解釈する人もいますが、ただ単に改名をしたわけではありません。

ソ連はソビエト地方の国々を統合した連合軍のことであり、ベラルーシやウクライナ、アルメニアなどと多くの周辺国によって構成されました。

東欧諸国がどんどん連邦国に吸収されていくなか、西欧諸国との緊張状態が続きます。これが俗にいう東西冷戦です。

元々は孤立主義を採っていたアメリカもヨーロッパの問題に関与し、北大西洋条約が結ばれました。

ワルシャワ条約と東西分裂

アメリカと西欧諸国がNATOで関係を深める一方、ソ連も東欧諸国と結びつこうと考えました。この考えが表面化されたのは、西ドイツによるNATO加盟です。

1950年代のドイツは、西ドイツ(ドイツ連邦共和国)東ドイツ(ドイツ民主共和国)に分かれていました。

第二次世界大戦では枢軸国として、ドイツも敗戦国のひとつでした。そこから軍事力を持つのを禁じられたものの、1955年には解禁されて西ドイツでドイツ連邦軍が成立しました。

その状態で西ドイツがNATOに加盟し、有事へ発展したらソ連は不利な状態に陥ります。それを懸念したソ連は、東ドイツを含めた東欧諸国とワルシャワ条約を結びました。

なおこの動きの背景には、アメリカとソ連の双方が核開発に力を入れていたのもあります。

ワルシャワ条約機構は1991年7月に解散しますが、冷戦時代にヨーロッパを東西に分裂させた要因となっていました。

熱戦を防ぐのに貢献

NATOの大きな功績は、ヨーロッパの国々による熱戦を防いだ点です。ソ連および東欧諸国の脅威は、いつ第三次世界大戦を起こしてもおかしくない状況でした。

その最中、西欧諸国はアメリカの力を借ります。アメリカはジョンソン政権の頃、ソ連に対して「MAD(相互確証破壊)」の体制を打ち出しました。

MADとは仮に相手国から先制攻撃を受けても、莫大な核兵器の使用により報復できるようにする体制のことです。そうすれば相手国も報復を恐れて迂闊に攻撃できません。

お互いに緊張関係を張り巡らせたことが、結果的に甚大な被害を出すのを防止できたのです。

実際には代理戦争が行われたため完全に平和を実現できたわけではありませんが、被害を最小限に抑えられました。

したがって軍事同盟ではあったものの、冷戦期には武力行使には至りませんでした。

アメリカ同時多発テロ

2001年9月11日、アルカイダ(イスラム過激派)がアメリカ同時多発テロを起こしました。アメリカの航空機が次々とハイジャックされ、ワールドトレードセンターや国防総省本庁舎に激突します。

このテロにより、アメリカ人はもちろんのこと日本人の犠牲者も出てしまいました。アメリカ同時多発テロを皮切りに、アフガニスタン紛争や対テロ戦争が勃発します。

NATOは当該問題に対し、アフガニスタン攻撃や防空のサポートを行いました。ただし対テロ戦争では組織として行動せず、加盟国が個別で参戦する体制を貫きます。

 

NATOの加盟国


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NATOに加盟している国は、スウェーデンを含めると32カ国です。

発足当初に加盟していた国は下記の12カ国です。

  • デンマーク
  • ノルウェー
  • アイスランド
  • ポルトガル
  • フランス
  • イギリス
  • ルクセンブルク
  • ベルギー
  • オランダ
  • イタリア
  • アメリカ
  • カナダ

そこから加盟国はどんどん増え、今ではヨーロッパ全域が加盟しています。

2023年4月には、高度な教育水準を誇るフィンランドが加盟しました。さらに2024年2月、フィンランドの隣に位置するスウェーデンの加盟が話題になっています。

 

NATOに対する国々の期待


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本来、世界平和を維持する役割を担うのは国際連合のはずです。しかし現在の状況では、国際連合には大して期待できません。なぜなら常任理事国にロシアと中国がいるためです。

国際連合では、決議に対して常任理事国が拒否権を発動できるルールが存在します。拒否権は常任理事国のうち一国だけでも発動すれば、決議されることはありません。

つまりロシアや中国が反対の姿勢を見せたら、国際連合の決定を阻止できてしまうわけです。

このことからも、国際連合には抜本的な改革が難しいでしょう。そのためロシアや中国を除いたNATOに、大きな期待が寄せられています。

 

スウェーデンの歴史


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NATOに加盟したスウェーデンですが、ヨーロッパにおいても重要な地位にいます。ここでは世界史の勉強も兼ねて、スウェーデンの歴史を紹介しましょう。

ヴァイキングによる交易

古代以前は除いて、いきなりヴァイキングの時代から解説します。ヴァイキングは今でいう海賊を指し、ヨーロッパ北側の地方で交易や略奪行為を行っていました。

彼らは、それぞれノルウェー・スウェーデン・デンマークの三国を本拠地にしていたのが特徴です。

そのなかでもスウェーデン人(スウェード人)は、幅広い国々と交易していたとされています。

主に西欧諸国と取引をしていた一方で、東ローマ帝国やアラブ・イスラム圏内とも接触していました。

さらに彼らは、キエフ公国の成立に一役買った点でも有名です。キエフ公国はロシアの起源であり、その礎を築いた一国であると考えられています。

カルマル同盟と絶対王政

時代は飛んで1397年、スウェーデンはデンマーク・ノルウェーとカルマル同盟を結びました。その背景には国家の弱体化に加え、デンマークとの戦争に破れた背景があります。

デンマークに支配される形で、三国共通の君主を置くといった状態がしばらく続きます。

しかし1523年には同盟を解消し、スウェーデンは本格的に独立を果たしました。そこからは経済・軍事大国として芽が出て、ヨーロッパの中でも比較的影響力の強い国となり絶対王政を敷きます。

その後はロシアに敗れて国力は再び衰えたものの、二大政党制を基盤とした民主政治が16世紀にはもう確立されていました。

北方戦争と全盛期

スウェーデンが全盛期とされたのは、グスタフ2世アドルフの頃です。当時強国であったポーランドよりも優勢に立ったのもあり、北方の獅子と呼ばれていました。

彼はバルト大国を築き上げ、当時の東ヨーロッパの支配者として君臨します。

そのあとの1697年にカール12世が即位すると、北方戦争においてライバル国に次々と勝利を収めました。世間はカール12世を古代ギリシャのアレクサンドロス大王に見立てて、北方のアレクサンドロスと名付けます。

しかし18世紀あたりになると、対ロシアとの戦いやナポレオン戦争で戦勝国となりつつも、少しずつ対外的な影響は薄れていきました。

なおこの時期にウィーン条約にて、スウェーデンはノルウェーを獲得しています。

平和主義・中立国へ

ナポレオン戦争が終わったあと、スウェーデンは戦争には参加しなくなりました。

第一次世界大戦や第二次世界大戦では、中立国の立場を維持します。しかし第二次世界大戦に関しては、ドイツに鉄鉱石を輸出するなど中立義務違反も見られました。

戦後もしばらくは中立国の立場に立っていたものの、武器輸出国として栄えます。その後は他国との協調に力を入れますが、中立政策を完全には捨てていませんでした。

 

スウェーデン加盟の背景


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スウェーデン加盟の背景として挙げられるのが、皆さんもご存知のとおりロシアの脅威に対抗するためです。

スウェーデンは事実上放棄していたとはいえ、完全には中立政策を捨てていませんでした。NATOは集団的自衛権を持つので、いざ戦争が始まったら支援をしなければなりません。

そのため中立国は、基本的にNATOのような組織には加入しないものとされていました。

こうした立場を捨ててまで、スウェーデンがNATOに加盟したことは現在の世界情勢に少なからず警戒心を抱いているためでしょう。

トルコはテロ組織と認定していた人民防衛隊(YPG)を巡り、スウェーデンやフィンランドのNATO加盟には否定的でした。

しかし世界情勢の緊張感が強まったためか、トルコも両国の加盟を最終的には認めました。なおNATOに加盟を希望する国は今も増えているようです。

 

NATOとスウェーデン

今回はスウェーデンがNATOに加入した背景を解説しました。NATOやスウェーデンの関係性を知るには、世界史をしっかりと振り返ることが大切です。

世界史は必須科目ではなくなりましたが、今後の世界情勢を捉えるうえでは欠かせません。以下のようなテキストも販売されているので、興味のある方はぜひ見てみてください。