地上権と間違えやすい物権の種類として、永小作権が挙げられます。公務員試験ではそこまで出題の頻度は多くないですが、他の権利にも関わるので覚えておいて損はありません。
この記事では、永小作権と地上権の違いを解説します。存続期間のルールを中心に、簡単な仕組みを詳しく解説しましょう。
永小作権と地上権の違い
永小作権とは、耕作や牧畜のために小作料を払って他人の土地を使わせてもらう権利のことです。地上権とよく似ている制度ですが、それぞれの違いを解説しましょう。
土地の利用目的の違い
永小作権と地上権は、土地の利用目的が異なります。
永小作権の場合は、あくまで耕作や牧畜のために土地を使う権利です。一方で地上権は、竹木や工作物を所有することが目的となります。
とはいえ永小作権は、現代においてはほとんど見られません。土地の賃借権のひとつとして、耕作や牧畜を使う権利が与えられているのが一般的です。
地上権と賃借権の違いについては、以下の記事でもまとめているので参考にしてください。
小作料の有無
民法にも規定されているように、永小作権を行使するには小作料を支払わなければなりません。
2年以上にわたって小作料の支払いを怠ったときは、土地の所有者は永小作権を解除できます。
一方で地上権には、原則として支払いが民法で義務付けられてはいません。特約がある限り、地上権者は所有者に対して地代を払うものとされています。
まずは、支払いが法律上で義務となっているか否かの違いがあることを覚えてください。
譲渡制限の違い
永小作権と地上権では、譲渡制限についても違いが見られます。どちらの物権も、原則として第三者への権利譲渡は自由です。
ただし永小作権は権利を他人に譲り渡すのを、設定時に禁じることが法律上認められます。仮に譲渡制限がかけられたら、法律上として効力を発揮できます。
一方で、地上権についてはこのようなルールが存在しません。特約で譲渡を禁じるのは自由ですが、登記はできないので第三者には効力を発揮しないとされています。
存続期間の設定の違い
存続期間の取り扱いについても、永小作権と地上権で違いが見られます。
永小作権は、存続期間が法律上で20年〜50年にすると定められています。
一方で地上権の場合は、法律に存続期間が明記されていません。状況によっては、永久に地上権を持たせるといった選択も可能です。
永小作権の存続期間
永小作権には、民法上で存続期間のルールが定められています。具体的な数字を中心に覚えておくといいでしょう。
通常の存続期間
上述したとおり、永小作権の民法上の存続期間は20年〜50年です。地上権とは異なり、永遠に小作権が与えられるわけではありません。
また50年以上の期間で設定しようとした場合、民法の規定により存続期間は50年までに下げられます。永小作権の重要な部分になるので、この期間はしっかりと覚えておいてください。
存続期間は更新できる
永小作権の存続期間は、民法において更新が認められています。
例えば、ある人物に50年の永小作権を与えたとしましょう。この期間が過ぎても、所有者がもう少し耕作や牧畜に使わせてあげたいと考えたら再度期間を設定することが可能です。
しかし、更新したタイミングから50年は超過できません。更新時も、あくまで存続期間の上限は50年以内で設定する必要があります。
存続期間を定めない場合
契約によっては、存続期間を定めないケースもあるでしょう。民法の規定では、存続期間を定めないときは自動的に30年で設定されます。
しかし、住んでいる地域の慣習でルールが決まっている場合は、それに合わせるのが一般的なルールです。
永小作権を整理しよう
今回は、永小作権と地上権の違いについて解説しました。正直なところ、永小作権はそこまで出題頻度の高い分野ではありません。
しかし別の分野を勉強している際に、ここで習った知識を活用するケースも考えられます。そのため、勉強の余裕が出てきたタイミングでも良いので、さらっと流し見しておくのをおすすめします。
一方で、地上権は公務員試験の民法でも問われやすい分野のひとつです。永小作権と比べることで、地上権の内容も理解しやすくなるかもしれません。
もし地上権の内容が理解しにくいのであれば、永小作権と比較するやり方も有効です。