前回は民法の意思表示について書いてみました。
上記の記事で紹介した内容の中では『通謀虚偽表示』の難易度が最も高いように感じます。基本的に他の法律行為と比べ、実生活であまり見られないためです。
ここでは、通謀虚偽表示についてイメージが深まるように詳しく解説します。特に第三者との関係を重点的に整理してください。
通謀虚偽表示の基礎
通謀虚偽表示を簡単にいえば「相手と通じて嘘を吐く」行為です。
- ①A郎くんの家が差し押さえの対象になった
- ②A郎くんは家を手放したくない
- ③B太くんと口裏合わせて家を売ったフリ
- ④表向きはB太くんが家の持ち主
- ⑤実態はA郎くんが住む
大体のパターンはこんな感じですね。
通謀虚偽表示は犯罪であり、取り引きも原則無効となります。
ただし、厄介なのは第三者が現れた場合です。
表向きの家の所有者はB太くんにあるわけですが、A郎くんを裏切って第三者であるC子さんに家を売っ払ったらどうなるのでしょうか?
この場合は、C子さんが善意なら取り引きは有効になります。
A郎くんが「元々嘘の取り引きだったんだから家を返してよ!」と要求したところで、C子さんには返還する義務はありません。
通謀虚偽表示の第三者と悪意
とはいえ、保護されるのはあくまで善意の第三者です。
上記のケースだと悪意のある第三者は、
家を返還する義務があります。
善意と悪意の話も前に記事で書いていました!
悪意はあくまで「事実を知っている人」を指すので、日常で使われるような意味に訳さないでくださいね。
ここから応用の話になります。
第三者が悪意・転得者が善意
ここでいう転得者は
「第三者から家を渡された人」と捉えてください。
第三者が悪意であれば、A郎くんは「無効を主張」できます。
しかし、これが善意の転得者に渡ったらどうなるでしょうか?
この場合、A郎くんはその転得者に無効を主張できません。
転得者との関係は、国家総合職のような難しい試験に出題される可能性があるので受験される方は気を付けておきましょう!
第三者は善意・転得者が悪意
次に
- 第三者が善意
- 転得者は悪意
だった場合を想定しましょう。
今更ながら転得者にも名前を付けましょうね(^_^;)
転得者はD美さんにします。
①C子さんが何も事情を知らない
②D子さんは通謀虚偽表示を知っていた
この場合は取り引きが有効になるでしょうか?それとも無効でしょうか?
最後に譲り受けたD美さんが悪意なら、取り引きは無効になるんじゃないの?
...って思いたくなるじゃん?
なんと正解は、「有効」になるんです。(判例では)
これは意外に感じるかもしれませんが、判例はC子さんの時点で権利が確定しているのでそれを引き継いだD美さんも問題なく取得できると考えました。
事例から読み取る問題
国家総合職などで問題が難しくなるとAやB、甲乙などと登場人物が現れて5行くらいの文章で出題されることもあります。
その際には、文章の状況把握に努めましょう。
基本的に応用問題は、必ずしも解かないといけないものではありません。
一方で、通謀虚偽表示の場合は基礎問題と対して差がないといえます。
問題の内容を理解するのに少し時間がかかるだけで、考え方自体は基礎問題に少々毛の生えた程度です。
民法以外の問題との兼ね合いにもよりますが、よっぽど余裕がないときでなければ通謀虚偽表示の応用問題は手を付けた方がいいと思います。
公務員試験は1問の正解が大きな差を生みます。
他の受験生と差をつけるのであれば、通謀虚偽表示は結構キーになる範囲です。(出題されればの話ですけど)
まとめ
今回は通謀虚偽表示の応用ということで、転得者との関係にも目を向けていきました。
・C子が悪意でD美が善意
・C子が善意でD美が悪意
→どちらも行為は『有効』
応用問題にも狙われやすい範囲になるので、しっかりと覚えておいてください。
ご覧いただき、ありがとうございました!