外部不経済の範囲において、押さえておくと公務員試験の得点にも結びつきやすくなる分野があります。その分野がコースの定理です。
この記事では、コースの定理に関する具体例について紹介します。問題の解き方や成立する条件を細かく説明するのでしっかりと覚えてください。
コースの定理
コースの定理とは、当事者間の話し合いによって外部不経済を解決する手段です。仮に公害が発生した場合、これまでは政府による介入が解決の手立てだと説明しました。
しかし、政府が手を出さなくとも当事者間の交渉のみで市場の失敗は改善できます。コースの定理を理解できるように、具体例も出しながら解説しましょう。
コースの定理の具体例
コースの定理の具体例として、農場と牧場の関係が挙げられます。例えばお互い別々の経営者が、隣接した地で農場と牧場を営んでいたとしましょう。
農場では稲や麦といった穀物を中心に育てています。牧場では、牛を飼っていると想像してください。
牛が牧場で暮らしていれば、隣接された地にある穀物をエサとして食べてしまうケースがあるでしょう。当然、穀物が食べられたら農場側としては損失が発生します。
経営成績にかかわらず、損失を招いていることから外部不経済に該当する例の一つです。
こうした状況を改善すべく、農場の経営者は牧場の経営者に対して「損失を補償してくれ」と請求したとします。
仮に牧場の経営者が補償すれば、外部不経済による損失分はカバーできます。この取り組みがコースの定理です。
コースの定理の交渉パターン
公務員試験で出題されるコースの定理には、主に2種類の交渉パターンが存在します。
- 農場の権力が強いパターン
- 牧場の権力が強いパターン
農場の権力が強いパターンでは、牧場が基本的に損失補償で全ての損害をカバーしなければなりません。
そのため、牧場の利益を求める際には損失補償として支払った額を差し引く必要があります。
一方で、牧場の権力が強い場合に損失補償を支払うのは農場側です。農場側は自らの損失を防ぐべく、牧場の経営者に対して牛の頭数を減らすように願い出ます。
ただし、牛の頭数が少なくなったら経営にも支障が出てしまうでしょう。本来得られるはずの牧場の利益を農場側が補償するとイメージしてください。
公務員試験の問題でも、いずれかのパターンを使うと簡単に解けます。
コースの定理の練習問題
実際に、コースの定理に関する練習問題を解いてみましょう。まずは、以下の表を見てください。
| 牛の頭数 | 牧場が得る利益 | 農場が抱える損失 |
|---|---|---|
| 10頭 | 300 | 0 |
| 12頭 | 320 | 10 |
| 14頭 | 340 | 40 |
| 16頭 | 370 | 80 |
| 18頭 | 400 | 100 |
この中から、両者の話し合いによって均衡状態となるときの牛の頭数を求めてみましょう。
農場の権力が強いパターン
農場の権力が強いパターンのときは「牧場の利益−農場の抱える損失」で計算して考えます。
仮に牛の頭数が10頭であれば、損失は発生しないので利益が300のままです。
しかし牛の頭数が12頭になると10の損失が発生します。計算した後の牧場の利益は310です。
同じ要領で14頭以降も計算してみてください。すると、最も利益が高くなるのは12頭の310であると分かるはずです。
牧場の権力が強いパターン
続いて、牧場の権力が強いパターンについて紹介しましょう。こちらは牛の頭数が48頭で、利益と損失がそれぞれ400と100になる部分を基準に考えます。
仮に牛の頭数を16頭に下げました。すると農場の抱える損失は80まで下がります。
しかし、牧場の得られる利益も400から370まで下がってしまいます。その分を補填すると考えたとき、最終的な損失は「80+30」で110です。
この計算式を他の頭数で繰り返します。最も損失額の少ない箇所が答えです。
牛の頭数が12頭のときを見てみると、農場の抱える損失は10となっています。一方で、牧場の利益の下がり幅は「400−320」で80です。
これらを合わせると、最終的な損失額は90となり最も少ない数字であることが分かります。
農場の権力が強いパターンと見比べても分かるとおり、両者の話し合いで均衡状態になるのは牛の頭数が12頭であるときです。
計算しやすい方を選び、確実にコースの定理の問題を解けるようにしてください。
まとめ
今回は、ミクロ経済学よりコースの定理について具体例を挙げて詳しく紹介しました。コースの定理とは、当事者間の話し合いで外部不経済を解決する手段です。
政府の介入以外の方法でも、外部性は解決できることが明らかになっています。
コースの定理を解く手順は、2通りの中から選ぶようにしましょう。
- 農場の権力が強いパターン
- 牧場の権力が強いパターン
いずれを選んでも最終的な答えは揃うように作られています。自分が計算しやすい方を選び、確実に問題を正答できるように練習してください。
