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外国人に選挙権は認められないの?地方参政権との関係も解説

行政書士試験では、選挙権と外国人の関係についても出題される可能性があります。日常生活でも外国人が日本に暮らすケースも多いので、選挙権が認められるか気になる人もいるでしょう。

この記事では、外国人に選挙権が認められるかどうかを詳しく解説します。地方参政権との関係についてもまとめるので、行政書士試験の勉強の参考にしてください。

 

外国人に選挙権は認められない

原則として、外国人に選挙権は認められません。その理由は、公職選挙法第9条1項にて、選挙権を有する条件を「日本国民で年齢満18歳以上」と定められているからです。

ただし公職選挙法で定めているのは、あくまで衆議院選挙・参議院選挙となっています。地方参政権については、別に考えましょう。

なお参政権とは、人々が政治に参加できる権利のことです。具体的には選挙権に加え、被選挙権も参政権の一つとされています。外国人は、選挙権と被選挙権の双方が認められていないと押さえてください。

 

帰化したら選挙権は認められる

出生は海外でも、日本国籍を取得したら選挙権および被選挙権が認められます。日本国籍を取得すれば、その段階から日本人となるためです。

元々の国籍を捨てて、別の国の国籍を取得する行為を帰化と呼びます。実際に働いている国会議員にも、帰化している人は存在します。

 

外国人と地方参政権

次に外国人と地方参政権の関係を解説します。地方参政権とは、国ではなく地方自治体の選挙に参加する権利のことです。具体的には、都道府県知事選や市町村長選が挙げられます。

平成7年2月28日の最高裁判例では、地方自治体の選挙に外国人が参加できるかが争われました。ここでは判例の内容を紹介するので、国選との違いをしっかりと押さえてください。

地方参政権における「住民」

住民とは、その地域に住民票を置いている日本国民のことです。地方選挙も、該当の地域に住民票を置いている住民が参加できます。そのため東京都知事選において、北海道や沖縄県に住所を置いている人は投票できません。

また住民は日本国民を指すことから、外国人を含まないと考えるのが原則です。地方自治体も、国家を形成するうえで欠かせない要素の一つです。日本国憲法でも、第8章にて地方自治に関する規定を定めています。

以上を整理すると、憲法は地方参政権を直接的に保障したわけではありません。原則として、外国人が選挙に参加するのは認められないといえます。

各自治体の裁量に委ねられる

最高裁は外国人に地方参政権を保障しなかった一方で、完全に禁止したわけではありません。地方参政権を認められるかどうかは、地方自治体の判断に委ねられます。

外国人の中には「永住者」といって、一生涯を日本で暮らす人もいます。永久に日本で暮らす以上、自治体の長が誰になるかで、生活に与える影響も変わるでしょう。

そこで最高裁は「永住者かつ緊密な関係を持つ」と認められた外国人には、地方参政権を与えてもいいと判断しました。こちらは、あくまで地方参政権におけるルールです。国政選挙は基本的に日本人だけであるため、区別して覚えてください。

 

在外国民選挙権制限違憲判決

在外国民とは、海外に住んでいる日本国民のことです。今の世の中、仕事などの関係でに住んでいる人も少なくありません。

この在外国民が、日本の選挙に参加できるかどうかが最高裁で争われました。最高裁は、どのような判決を下したかを詳しくまとめます。

在外国民の取り扱い方

在外国民は、海外に住んでいるだけで「日本国民」に変わりありません。したがって外国人とは異なり、本来は選挙権が認められないとおかしいはずです。

しかし最高裁判例が出るまでは、在外国民に選挙権が与えられていませんでした。その要因は、投票できるシステムがなかったためです。

選挙を実施するには、住民票を基に投票で使うハガキを送付します。さらに、確認も住基(住民票の情報を閲覧できる役場の機材)を参考に作成した名簿で行われます。

つまり、国内に住民票がなければリストに名前を載せられません。このことが原因で、長らく在外国民には選挙権が与えられていなかったのです。在外国民にも選挙権を与える措置は考えていたようですが、なかなか実現に至りませんでした。

最高裁の判決

結論から述べると、在外国民に選挙権を与えない対応は違憲と判断されました。海外に住んでいるとはいえども、日本国民に変わりない点です。

憲法は、在外国民にも当然に参政権を保障していると判旨します。やむを得ない事情がなければ、参政権の制約はできないと考えました。

議論の対象となったのは、海外に住所を置いていることが「やむを得ない事情」にあたるかです。一方で現代社会では、地球規模で情報技術が著しく発達しています。そのため海外に住所を置いているからといって、やむを得ない事情にはあたらないとしました。

在外国民の投票制度が生まれた

最高裁が判例を出したあと、在外国民にも国政選挙を認める動きが生まれます。住んでいる国の大使館により、選挙人名簿の登録を行いました。在外国民が投票する際には、総領事館へ訪問し郵便で投票をします。

このように在外国民にも選挙権が与えられるようになりましたが、全ての選挙が対象なわけではありません。2025年時点では、最高裁裁判官の国民審査や地方選挙は対象外となっています。今後の法改正で変わる可能性はあるため、定期的に制度をチェックしてみてください。

 

外国人の選挙権に関するまとめ

日本国憲法および公職選挙法の考え方によれば、外国人の選挙権は認められていません。地方参政権については、憲法が直接認めていないものの、各自治体が条例で認める分には構わないとしています。ただし地方参政権においても、対象となるのは「永住者かつ緊密な関係にある者」に限られます。

さらに選挙でこれまで問題視されていたのは、在外国民に国政選挙を認めていなかったことです。こちらも最高裁判例によって、現在では選挙に投票できるようになりました。行政書士試験の対策として、外国人と選挙の関係をしっかりと押さえておきましょう。