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人身の自由に関する憲法の条文を解説!拷問が許されない理由

日本国憲法は、日本国民全員の権利を守らなければなりません。

その国民には、事件を起こした犯人として疑いをかけられている人も含まれます。

古い歴史の中では、無実の罪を着せられて処罰された人が数多くいました。

こうした反省から生まれた考え方が、人身の自由です。

こちらは公務員試験でも出題範囲のひとつであるものの、そこまで頻出度が高いとはいえません。

しかし、国家や地上・裁判所などと幅広く出題された過去があります。

特に警察官を目指している方は、仕事柄知っておくべき内容です。

試験勉強にこだわらず、日本で暮らすうえでの知識として押さえましょう。

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人身の自由と憲法の条文

まずは、人身の自由に関する憲法の条文を解説します。

こちらの条文をチェックしてみましょう。

憲法第18条:何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

憲法第31条:何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

憲法第36条:公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

憲法第38条2項:強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。

e-GOV法令検索

この他にも、人身の自由に関わる条文は数多くあります。

日本国憲法では、公務員による拷問は禁ずると規定されています。

また、拷問による自白は証拠にできない点も重要な部分です(後述します)。

一方で、警察官や検察官の取り調べは非公開で行われます。

尋問の方法が不適切なのではないかと問題視されるケースも少なくありません。

人身の自由と憲法の関係を踏まえつつ、拷問が許されない理由をまとめましょう。

  • 人身の自由は憲法でも重要な内容
  • 人の身体は不当に拘束されない
  • 各条文で拷問が禁止されている

 

日本と拷問の関係

戦前の日本では、拷問が当然のように行われていました。

開国した後に拷問禁止の制度が作られたのにもかかわらず、警察が権利を著しく濫用して問題になったケースが記録されています。

戦後ではGHQによる憲法改正で、拷問を禁止する旨の規定が作られました。

先程紹介した、憲法第36条や第38条2項の条文が該当します。

とはいえ、21世紀に入っても拷問がゼロになったわけではありません。

問題視された事件では、足利事件の取調べが特に有名です。

逮捕された者に対して警察が暴力を振るう問題は未だに起こります。

公務員を目指す方の中には、警察試験も併せて受験される方もいるでしょう。

該当する方は、今回の記事をよく読んで勉強していただければなと思います。

 

刑事被告人が持つ権利

つづいて、公務員試験に即した内容を記述していきます。

公務員試験では、「人身の自由に関する問題」も稀に出題されます。

ここで押さえるべき刑事被告人の権利は次の3点です。

  • 不利益な供述を強要されない
  • 拷問や脅迫による自白は証拠にならない
  • 不利益な自白が唯一の証拠では刑罰にならない

ちなみに刑事事件で起訴された方は、被告人と表します。

メディアは「~被告が」と呼びますが、「被告」はあくまで民事裁判で訴えられた人を指すため正しくありません。

このあたりの知識も法律を勉強するうえでは押さえておきましょう。

不利益な供述の強要は禁止

刑事被告人は自分にとって「不利益となる内容の供述を強要されない権利」を持ちます。

なぜなら、供述を強要させて仮に冤罪だった場合は大きな問題に繋がるからです。

取調べにおいて、あえて何も話さない権利を黙秘権と呼ばれています。

当該権利も憲法で当然に保障されているものです。

ニュースで「黙秘しています」と報じられるケースを見たことがある人もいるでしょう。

「なぜ、正直に話さないのか」と怒る人もいますが、供述の強要を防ぐためにも重要な権利のひとつです。

拷問や脅迫による自白の禁止

警察や検察官が取り調べる際には、拷問や脅迫を用いてはなりません。

こちらも人身の自由において欠かせません。

拷問や脅迫によって被疑者が自白しても、効果は持たないとされています。

痛みに耐えかねて、身に覚えのない自白をする恐れがあるためです。

先程も紹介しましたが、憲法第38条2項の条文で具体的に定められています。

不利益な供述は補強証拠が必要

刑事被告人が自分に不利益となる自白をしたとしても、事実を裏付ける証拠がなければ有罪にできません。

このような証拠は補強証拠といわれています。

例えば、殺人の容疑で有罪にするには凶器や指紋などの物的証拠が必要です。

供述のみを証拠にすると、警察や司法の恣意的な判断に左右される恐れがあります。

加えて、被疑者が真犯人を庇う可能性もあるでしょう。

事件の真の解決に至らなくなってしまうため、物的証拠はしっかりと探し出さなければなりません。

  • 不利益な供述は強制されない
  • 拷問や脅迫による自白は認められない
  • 供述には補強証拠が必要

 

遡及処罰の禁止とは

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憲法39条には遡及処罰の禁止について規定されています。

遡及処罰とは、当時に適法だった行為が現在では違法になったからといって遡って処罰できないという定めです。

例えば、今は普通にパチンコで遊ぶことができますが、法改正によってパチンコが違法に変わったとします。

その変更によって今までパチンコで遊んでいたからと逮捕されてはたまらないですよね?

このように遡及処罰は憲法で堅く禁じられています。

基本事項をしっかりと抑えれば、憲法だけではなく刑法などでも役立つ知識です。

刑法の知識はマンガでわかりやすく覚えた方が得策です。以下のテキストをおすすめします!

  • 憲法39条に遡及処罰の禁止がある
  • 訴求処罰の禁止は刑法にも出題される

 

まとめ

今回は、公務員試験の憲法から人身の自由について見ていきました。

逮捕・起訴されているとはいえどもその方々にも人権はあります。

加えて、本当にその方が真犯人なのかどうかもちゃんとは分かっていない場合も少なくないです。

  • 不利益な供述はさせない
  • 拷問の禁止
  • 遡及処罰も厳禁

この辺りをしっかりと押さえましょう!