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外部経済と外部不経済の違い!正しく覚える市場の失敗

ミクロ経済学で押さえたい項目として、市場の失敗が挙げられます。前回までの記事では、外部不経済について紹介しました。

今回は外部経済と外部不経済の違いを紹介します。同じく図を使いながら解説するので、市場の失敗の内容を正しく押さえてください。

 

外部経済とは

外部経済とは、外部の要因が経済状況に良い影響を与えることです。よく挙げられる具体例として、ミツバチの行動があります。

養蜂家はハチミツを得るために、ミツバチを果樹園の方に放ちます。すると単にハチミツが取れるだけではなく、農家が育てている果物も実りやすくなります。

このように経済状況には良い影響を与えるものの、外部経済もまた「市場の失敗」といわれるタイプの一つです。

市場の失敗は単純に経済への悪影響を指すのではなく、あくまでパレート最適が実現されない状態を示しているので用語の定義をしっかりと押さえてください。

 

 

外部経済と図解

外部経済の状況も図解で説明できます。外部不経済との違いについて押さえつつ、市場の失敗を正しく理解しましょう。

外部経済と外部不経済の違い

外部経済と外部不経済の違いは、私的限界費用曲線と社会的限界費用曲線の位置です。外部不経済の場合は、下図のように表すことができました。

このような図になる理由は、公害や自然災害の発生により「社会的なコストが余計にかかってしまう」ためです。

政府が何も手を出さない場合は生産量を私的限界費用曲線で決めるものの、国が課税すると社会的限界費用曲線が基準になります。

この課税を「ピグー課税」とも呼ぶので、以下の記事もあわせて押さえておくといいでしょう。

外部経済の場合は、外部不経済のケースと見比べて私的限界費用曲線と社会的限界費用曲線を上下逆に引きます。

このように変化する理由は、外部の要因によってコストをかけずに経済活動が実現できるためです。

ミツバチの例でもそうですが、果樹園の農家は果物に対して特別なコストを支払っていません。ミツバチという外部の要素のみで、果物をより熟成させています。

そのため、外部経済では私的限界費用曲線を社会的限界費用曲線の上に描きます。

この特徴を押さえておけば、試験に出題された際にも混乱しにくくなるはずです。

余剰と死荷重の捉え方

続いて、外部経済のときの余剰と死荷重について紹介します。

余剰は外部不経済と同じく、消費者余剰と生産者余剰の2つを捉える必要があります。

消費者余剰と生産者余剰が決まるポイントは、私的限界費用曲線と需要曲線との交点です。以下の図ではX_0が該当します。

X_0が決まると、同時に価格でもP_0の値が明らかになります。この部分が消費者余剰と生産者余剰を決める仕切りです。

上側が消費者余剰、下側が生産者余剰に分けられます。

次に死荷重も図から求めてみましょう。

外部経済も市場の失敗の一例であり、放置すると死荷重(最適な資源配分ができない部分)が現れます。

ちなみに外部性が描かれているのは、私的限界費用曲線と社会的限界費用曲線のギャップです。図では、灰色の部分が該当します。

さらに死荷重と考えられるのは、社会的限界費用曲線と需要曲線の交点から余剰と外部性を引いた部分です。したがって、図の赤色で塗られた三角形が死荷重となります。

 

外部経済と補助金

外部経済が実現されると経済的にはプラスに働くものの、長期間放置するのも望ましくありません

市場に全て委ねてしまうと、価格が正常に設定されない危険性も出てくるためです。事実、果樹園の例においても実際よりも商品が多く作られています。

適切な方法以外で生産量が増えれば、需要と供給のバランスが崩れて価格にも影響が及ぶ危険はあるでしょう。

市場の失敗を取り除いて健全な経済活動が行われるには、政府の介入が方法の一つとして挙げられます。

ここでは、補助金が支給されたと仮定して外部経済の図解をチェックしましょう。

交点の位置が変わる

外部経済において補助金が支給されると、生産量を決める部分が変わります。

政府が介入しないときは私的限界費用曲線との交点で決まりましたが、補助金交付後は社会的限界費用曲線との交点が生産量を決めるポイントです。

同時に価格を決める場所も変わると押さえてください。

すると当然ながら消費者余剰と生産者余剰の範囲も異なります。政府が介入しないときと比べ、社会的余剰は全体的に大きくなるのが特徴です。

政府の損失もゼロになる

政府が補助金を出すことで、外部性の金額もまた変動します。これまではX_0で決まっていたため、死荷重も発生してしまいました。

一方で補助金が交付されると、生産量の位置もX_1に移ります。そのため、下図の青色の範囲が外部性の額(補助金の額)となります。

本来ならば図で囲まれた灰色の部分において、死荷重が発生するのもポイントです。しかし、補助金の額と重なることでプラマイゼロと判断されます。

補助金を交付すると、政府側も損失がゼロになることをしっかりと押さえてください。

 

まとめ

今回は外部性の範囲から、外部経済と外部不経済の違いについて詳しくまとめました。

外部経済は正の外部性ともいわれ、基本的には経済活動に良い影響をもたらします。

しかし、最適な資源配分ができていないことには変わりありません。放置しておくと、市場のメカニズムが上手く機能しない恐れもあります。

そこで、政府が補助金を交付することでパレート最適を実現できます。公務員試験では、図解を中心に出題されるので余剰や死荷重を答えられるようにしましょう。