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行政行為の分類とは?命令的行為と形式的行為をわかりやすく解説

公務員試験の行政法で、得点源にしやすい分野のひとつが行政行為の分類です。

こちらの分野は条文を細かく理解する必要がありません。普段の生活にも深く関わってくる分野であるので、内容は比較的覚えやすいと思います。

出題されたらラッキーと思いながら解いていけるようにしましょう。

◆この記事でわかること◆
・命令的行為と形式的行為の分類
・準法律的行政行為の定義と種類

 

行政行為とは

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行政というと何を思い浮かべますか?

恐らく、大半の方は「政治」を一番最初にイメージするでしょう。しかし行政は、私たちの生活にも深く関わっている統治作用です。

行政に携わる職業として、以下の種類も該当します。

  • 市役所職員
  • 県庁職員
  • 国家公務員
  • 警察

これらの組織は、ときに国民の権利や義務を具体的に決定する権限を持ちます。

そういった国民の権利義務に直接的な効果を与える活動が行政行為です。

行政行為と一口にいっても、種類によって形態はだいぶ変わります。きちんとカテゴリーに分けていきながら行政行為の内容を勉強しましょう。

 

 

行政行為の分類の覚え方

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行政行為には、大きく分けて以下の分類があります。

  • 法律的行政行為
  • 準法律的行政行為

法律的行政行為は、さらに命令的行為と形式的行為の2種類に分けられます。

とはいえ用語だけ並べても、なぜこのように分類されているのか分かりにくいでしょう。ここでは、これらの用語の意味も踏まえて分類方法を紹介します。

命令的行為

命令的行為は、国民が生まれながらに持っている権利の制限に関する行為です。

我々は多くの権利を持っていますが、治安や社会秩序のために行政が制限することもあります。

新たな制限を設けたり、逆に制限を解除したりする行為が命令的行為です。この種類に分類される行為を紹介しましょう。

下命

下命は国民に対して、一定の作為義務を命令する行政行為です。

つまり、国民に「〜しなさい」と義務付けることが下命になります。

例を挙げれば退去処分です。

退去処分とは、土地や建物を差し押さえられているのに、いつまでも居残り続ける人に「出ていけ!」と命令する処分を指します。

下命を無視したとしても、それですぐに行為そのものが無効になるわけではありません。しかし罰則の対象になるため素直に従ったほうが賢明です。

ちなみに不作為義務、つまり「〜してはいけない」と命じる行政行為は「禁止」と呼ばれています。

許可

許可は、日常生活でもよく使われる言葉です。

行政法の概念では、禁止行為を特定の場合に限り解除することを指します。

具体例としてよく使われるのが「自動車の運転免許」です。

運転免許を持っていないにもかかわらず、自動車を運転したら無免許運転で逮捕されてしまいます。

もし自動車を運転したいなら、自動車学校や免許センターで所定の試験に合格しなければなりません。

このように条件をクリアすることで、本来禁止されている行為を特別に認めるのが許可です。

免除

免除も意味は許可とよく似ていますが、行政行為では明確に区別されています。

行政法における免除とは、義務や負担を解除する行為のことです。

例えば、条例に違反して営業停止処分を受けていた企業があったとしましょう。その企業に対して、営業停止処分を解除する行為が免除に該当します。

形式的行為

次に形式的行為の紹介をします。

こちらは、人間が生まれながらに持っていなかった権利を与える行政行為です。

当該行為には、次の2つが挙げられます。

  • 特許
  • 認可

他にもさまざまな種類がありますが、公務員試験では上に挙げた2つを押さえておけば十分です。

特許

特許とは、国が私人に対して本来持っていない権利を与える行政行為を指します。

例として挙げられるのが、以下のとおりです。

  • 漁業権の設定
  • 道路占用の許可
  • 公有水面埋立の免許

これらは3つとも国が有する権利であり、我々一般人には当然に備わっているものではありません。

その権利を特別に与えようというのが特許の性質です。

特許は行政側の裁量(独断)で与えないとすることも可能なので、貰う際には注意しましょう。

また、世紀の発見や発明をしたドクターへ出す「特許申請」とは意味が異なるため注意してください。

なお、先程説明した「許可」は人間の持つ権利であるものの制限された事例です。

特許は「国が持っていた権利」を与える行為を指します。これらの区別も付けられるようにしましょう。

認可

認可は、私人との契約に補充を行うことで法律の効果を発生させる行為を指します。

具体例は以下の3点です。

  • 農地の所有権を移転させる行為
  • 運賃の設定にかかる認可
  • 河川占用権の譲渡

我々は何かビジネスを運営する際において、国からのお墨付きを貰うことがあります。

そのお墨付きこそが、行政法上の認可にあたると押さえましょう。

特許とは異なり、行政が裁量的に認可をしないという決定を下すことはできません

認可を貰っていない行為は無効の対象にはなりますが、禁止事項に反したわけではないので罰則の対象にはならない点もポイントです。

準法律的行政行為

準法律的行政行為は行政の裁量が一切働くことなく、法律の要件に従って効果を発揮させる行為を指します。

とはいえ、法律的行政行為と準法律的行政行為の区別は曖昧でさまざまな批判が専門家からなされています。

準法律的行政行為とされるものは次の2点です。

  • 確認
  • 公証

他にも受理や通知がありますが、ここでは割愛します(あまり試験では問われないので)。

確認

確認は、争いのある事実や法律関係の存在または真否を確定させる行為です。

ここでいう「争いのある」とは、法律に違反がないかどうかを指します。

具体例として挙げられるのが建築確認ですね。

建築会社などが建物を建てる際には、必ず行政から建築確認を済ませないといけません。建築物が正しく建てられているかをチェックし、重大なトラブルにつながるのを防ぐためです。

こういった建築確認には行政の裁量が認められず、行政側が独自の意思で確認をしないといった判断を採れません。

公証

次に解説する公証とは、確認と違って争いのない事実関係を公に証明する行為を指します。法律に違反しているか否かを調べる行為ではなく、法律効果の存在の有無を明らかにします。

例として挙げられる行為が運転免許証の交付です。

すでに要件が備わっている事実を行政がきちんと証明することで、法律上の効果が与えられます。

  • 行政は国民に対して命令する→命令的行為
  • 行政は国民に権利を与える→形式的行為
  • 行政の裁量が働かない行為→準法律的行政行為

 

まとめ

今回は、公務員試験の行政法対策として行政行為の分類について詳しく解説しました。

覚える内容はそこそこ多いですが、具体例もイメージできれば理解しやすい分野です。

実際の問題では、具体例についても問われることがあります。機械的な暗記ではなく、なるべく定義を詳しく理解できるようにしましょう。

行政行為の分類について、表でもまとめてみました。公務員試験の勉強にぜひ役立ててください。

  行政行為(具体例)
命令的行為 ・下命(退去処分)
・許可(自動車の運転)
・免除(営業停止処分の解除)
形式的行為 ・特許(公有水面埋立の免許)
・認可(農地の所有権の移転)
準法律的行為 ・確認(建築確認)
・公証(運転免許証の交付)