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解約手付・証約手付・違約手付の違い|手付は何のためにあるの?

公務員試験の民法Ⅱでは、売買契約の問題も出されることが少なくありません。売買自体は身近にある取引ですが、公務員試験においては手付金の理解が重要です。

今回は解約手付・証約手付・違約手付について、それぞれの違いを紹介します。公務員試験や行政書士試験、宅建試験にも役立つので参考にしてください。

 

手付とは

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手付とは、売買契約において当事者の一方から他方に渡される金銭または有価証券のことです。主に不動産の取引で使われます。

なぜ手付が必要なの?

「コンビニで弁当を買う」レベルの取引であれば、お金と商品を簡単に交換できるので手付は必要ありません。仮に契約を解除するときも、それぞれを交換し直せばいいからです。

一方で不動産の場合、多額な費用かつ契約内容も複雑なため、途中でキャンセルされるとお互いに大きな負担がかかります。したがって手付には、無責任なキャンセルを防ぐ目的があるといえます。

手付の具体的な取引方法

具体的には、不動産契約時に買主が費用の一部を売主に渡します。

買主側が契約をキャンセルした場合、手付金をそのまま返還しなければなりません。これを手付を放棄すると表現します。

反対に売主側がキャンセルするには、倍額のお金を支払うルールとなっています。本来は不動産を入手できたはずなのに、ただ手付金を返還されただけでは不利益にしかならないからです。

◆手付のルール
買主:手付を放棄する
売主:倍額での現実の提供

 

 

手付の種類

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手付には、大きく分けて次の3種類があります。

  • 解約手付
  • 証約手付
  • 違約手付

 

それぞれにどのような意味があるのかを解説しましょう。

ここでは、より理解を深めてもらうために各種類の性質も紹介しています。しかし公務員試験で問われるのは、せいぜい民法は解約手付の性質を持つといった内容くらいです。

試験勉強では深く知る必要はないので、理解できなくても心配しないでくださいね。

解約手付

解約手付とは、契約の解除に合意する機能がある手付のことです。上述のとおり民法では、特段の事情がない限りは「解約手付」の性質を持つと考えています。

本来、売買契約が成立すると双方はその内容に従う義務が生じます。ただし例外なく契約を解除できないとなると、お互いにとっても不便となるでしょう。

手付には無責任なキャンセルを防ぐ目的があると説明しましたが、その一方で契約に縛られないようにする狙いがあることも押さえてください。

証約手付

証約手付とは、契約が成立したのを証明するための手付のことです。民法は原則「解約手付の性質を有する」としながらも、どの手付にも証約手付の機能自体はあると考えています。

とはいえ実際の契約では、署名・押印がなされた書面が最たる証拠となるでしょう。昔は金銭を契約成立の証とした時代もありましたが、今ではあまり使われていません。

違約手付

違約手付は、相手側の帰責事由で債務不履行となったとき、没収される手付のことです。違約手付には、大きく2種類あります。

種類 損害賠償額
の予定
違約罰
 特徴  手付が没収されるだけ
損害賠償は不可
損害賠償も可

損害賠償額の予定としての手付は、契約成立時にあらかじめ賠償額を定めておきます。しかしこちらの種類では、仮に損害賠償額が想像以上に多くとも追加での請求ができません。

一方で違約罰としての手付では、没収以外に損害賠償も可能です。どちらの性質を有するかは、違約金条項によって定めるとされています。

とはいえ違約金条項も無制限に作れるだけではなく、公序良俗やほかの法律も加味しなければなりません。

 

 

手付を解約するタイミング

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手付を解約できるのは、相手方が履行に着手するまでです。このタイミングの時期は、引っかけ問題としても出されやすいので気をつけてください。

履行に着手するとは

「履行に着手する」とは、給付の内容を一部でも実現した場合です(履行の提供に欠かせない前提行為も含む)。

例えば買主側が内金を支払った場合は、代金を納めているので履行の着手にあたります。反対に売主側が引き渡しの準備を終え、買主に通知すれば同じく履行の着手にあたるでしょう。

この条件は、客観的に見て給付を実現したのが分かることです。つまり引渡しの準備を済ませても、通知や登記を完了していないと客観的には判断できないので、原則として履行に着手したとはいえません。

自らが履行に着手した場合

あくまで解約できなくなるのは、相手が履行の着手を行ったときです。売主が何もしておらず、買主が代金を支払った状態であれば、買主側(自分自身)は解約できます。

なお自分の後に相手も履行の着手を行ったときは、当然ながら解約できません。こちらは実際の試験でも引っかけ問題として出題されやすい部分です。問題文をよく読み、騙されないようにしましょう。

解約されたときの効果

解約手付における解約は、債務不履行の場合と扱いが異なります。解約手付の場合、たとえ契約解除となっても損害賠償を請求できません。民法に定められている「買主は手付放棄」「売主は倍額」の範囲で収める必要があります。

債務不履行によって契約が解除されたら、損害賠償請求も可能です。債務不履行に関しては、こちらの記事でも説明しているので併せて参考にしてください。

 

手付はイメージが大事

特に大学生であれば、手付について具体的にイメージできない人もいるでしょう。不動産の取引に自らが主体的に携わった経験がなければ、中身を知らなくとも無理はありません。

機械的に暗記するのも悪くはないですが、間違えることが多いのなら制度をある程度イメージできるようにしましょう

ほかにも民法にはイメージ力が求められる範囲がたくさんあるので、今後もこのブログを参考にしてください。