今回は、公務員試験の民法でも得点源といえる失踪について解説していきます。
頻出度はそこそこくらいですが、この範囲はパターンが決まっているので確実に押さえましょう。
ここで取り上げる内容は、普通失踪と特別失踪の違いです。
また、失踪を取り消すときの方法も触れるのでしっかりと覚えてください。
普通失踪と特別失踪の違い
失踪とは、「誰かが行方不明になること」です。失踪には大きく分けて以下の2種類があります。
- 普通失踪
- 特別失踪
公務員試験では、これらの失踪の違いをしっかりと押さえなければなりません。
しかし、見分け方は極めて簡単です。
公務員試験で出題されたら、ラッキー問題だと思ってください。
普通失踪
普通失踪とは、「不在者の生死が7年間明らかじゃない」状態を指します。
7年間の期間が満了したら行方不明者は死亡したとみなされます。
そうなると民法上も死亡扱いとなるため、遺産の相続が可能です。
特別失踪
もう1つの失踪を指す特別失踪は、以下の事例が該当します。
- 船が難破した
- 自然災害が発生した
つまり、危難に見舞われた方の生死が分からない状態のことです。
普通失踪との違いとして、「危難が去った後1年間行方不明だった者」が該当します。
しかし、次のポイントに注意してください。
特別失踪で死亡と認識される時期は
「危難が去った時」です。
- 特別失踪と認定される要件は、「危難が去った後1年間の行方不明」
- その方が死亡した時期は、「危難が去った時」
両者の時期が異なるため、引っかけ問題として出されやすいです。
「危難が去った後1年間過ぎたら死亡したとみなされる」と、誤った選択肢が現れる場合もあります。
絶対に引っかからないよう気をつけましょう。
「引っかけ問題として出されやすいからちゃんと覚えよう」と押さえてください。
失踪の取消し方法
とはいえ、失踪の宣告を受けていた方が無事に生きていたというケースも考えられます。
相続の手続きとかが完了した後に、生きていることが判明したら失踪者の財産はどうなるのでしょうか?
取り消す先は家庭裁判所
まず失踪を取り消す際には、家庭裁判所へ請求する必要があります。家庭裁判所へ請求したら、失踪の宣告の取り消しが行われます。
人が生き返る事態は当然想定されていないため、取り消された行為は初めから遡ってなくなるのが一般的です。
例えば、ある方が失踪したのを理由にその方の所有物を売った場合、「失踪の宣告が取り消されたら売買行為」も消滅します。
ただし、何も知らなかった人がいきなり全ての行為を取り消されるのも納得いくはずがありません。
そこで民法は「善意の第三者」には取り消しの効力が及ばない旨記載されています。
善意は「事情を知らない」状態を指す言葉であり、善人の意味ではないため注意しましょう。
もし、財産を貰っていたら当然ながらそれは返還します。しかし、返す財産は現に利益を受けている限度においてのみです。
現に利益を受けている限度とは
現に利益を受けている限度とは、利益が手元に残っている状態のことです。
財産を確保していたら、もちろん利益は残っています。
では、お金を払って日用品を購入したら利益は残っていると判断されるのでしょうか。
正解は『○』です。お金は無くなっていますが、別の利益(日用品)として恩恵を受けています。
つまり、利益自体を失ったわけではありません。この考え方が、「現に利益を受けている限度」です。
ただ、浪費は「現に利益を受けている限度」にあたりません。
お金をギャンブルで溶かしたら何も利益はなくなってしまうからです。
浪費したお金に関しては利益がないため、返還する義務も消滅します。
中には、納得いかないなと感じる方もいるでしょう。しかし、制度上はそのように作られているため仕方ありません。
公務員試験でも、間違えないように注意してください。
まとめ
今回は民法の失踪について勉強していきました。
失踪はそこまで覚える内容が多くありません。まずは、基本的な部分を勉強してください。
ここで、押さえてほしいポイントは以下のとおりです。
- 普通失踪は7年間生死が明らかではない状態
- 特別失踪は危難が去ったあと1年間行方不明
ただし、特別失踪で死亡したと認識されるタイミングは「危難が去ったとき」です。
このあたりを押さえていれば、苦労せずに問題を解けるでしょう。