行政書士試験の行政法では、地方公共団体の問題も範囲となっています。その中でも基本的な内容といえるのが、普通地方公共団体と特別公共団体の違いです。
この記事では、上記の2種類について具体的な役割とともに解説します。行政書士試験を受験される方は、ぜひ記事を参考にしてください。
普通地方公共団体とは
普通地方公共団体とは、都道府県および市町村のことを指します。ここでは都道府県と市町村の役割について紹介します。併せて大都市に関する特例も押さえましょう。
都道府県と市町村の関係
都道府県と市町村は、少々複雑な関係となっています。一般的に市町村は、都道府県に内包される形で存在しているのが特徴です。
ただし、都道府県は市町村より立場が上なわけではありません。あくまで両者の関係は対等です。
市町村は、住民と最も近い存在となっています。基礎的な業務のほとんどをおこない、できる限り住民の手続きに関与しなければなりません。規模が大きければ、都道府県の仕事も一部任せられる場合があります。
都道府県は、市町村に対する援助や連絡調整が主な仕事です。補助金の申請手続きや国からの文書を送付する役目を担っています。そのため国と市町村の板挟みに遭いやすいのも特徴です。
大都市に関する特例
市町村は、さまざまな条件に応じて市・町・村のいずれかになるか決まっています。
条件 | |
---|---|
市 | ・人口が5万人以上 ・都市的施設・要件が存在する ・中心市街地に全戸数の6割以上がある ・商工業者等や都市的業態が全人口の6割以上 |
町 | 条例で定めている人口等の要件をクリアしている |
村 | 特に要件はなし |
その中でも、人口が多くて経済的に栄えている市が大都市です。大都市は、指定都市と中核市の2種類に分けられます。それぞれに分けて、特徴を解説しましょう。
「指定都市」となる要件
指定都市とは、人口50万人以上の市です。指定都市の例として、札幌市、仙台市、横浜市、名古屋市、大阪市、北九州市などが挙げられます。
指定都市では、都道府県が処理すべき事務の全部または一部を担当しなければなりません。区の設置も義務とされています。指定都市に住んでいる人は、住所に区も含まれるのでイメージしやすいでしょう。
なお特別区の場合と異なり、指定都市に位置する区は法人格を持ちません。あくまで事務処理の都合で分けられた区域でしかないためです。
また関係市の届け出がなくとも、指定都市の認定がされます。この辺りの簡単なルールを押さえておくとよいでしょう。
「中核市」となる要件
中核市は、人口20万人以上の市です。函館市、秋田市、水戸市、富山市、岐阜市、大津市、松江市、久留米市などが例として挙げられます。
中核市は、指定都市がすべき事務の全部または一部を担当します。指定都市とは異なり、区を設置できないのが特徴の一つです。
ほかにも中核市の認定を受けるには、関係市の申し出をする必要があります。具体的には、あらかじめ議会で議決し、都道府県からの同意を得ないといけません。
特別地方公共団体とは
地方行政をすべてこなす際に、普通地方公共団体だけでは業務がパンクしてしまいます。そこで普通地方公共団体を救うべく、設置されているのが特別地方公共団体です。
特別地方公共団体は、大きく分けて特別区・地方公共団体・財産区の3種類が存在します。それぞれに分けて解説しましょう。
特別区=東京23区
特別区は東京23区を指しており、基本的な役割は普通地方公共団体と変わりありません。ただし東京は人や設備が密集しており、都だけで業務をまとめるのは困難です。
そこで東京を23区域に分け、事務をスムーズに進められるようにしました。さらに区は住民にとって身近な存在でもあり、市町村と同じ役割も担っています。条例を定められるだけではなく、区長も住民の選挙によって選ばれます。
なお特別区については、指定都市の区とは異なり法人格を有するのが特徴です。したがって東京23区には議会が存在しており、事務処理の権限も持ちます。
一部事務組合および広域連合
地方公共団体にも「組合」という概念が存在します。主な例が消防組合です。
地方公共団体に消防団を設立しようと思っても、地域によっては人や自動車が不足しているところもあるでしょう。財政上の理由で用意できないと、その地域の消火活動に著しい支障が出てしまいます。
そこでいくつかの地方公共団体が、共同で事務をこなすこともあるのです。このような団体を地方公共団体の組合と呼び、大きく一部事務組合と広域連合に分かれます。
組合の種類 | 特徴 |
---|---|
一部事務組合 | 事務の一部を共同でおこなう |
広域連合 | 広域かつ総合的な計画を作成 国からも事務処理の権限を移譲される |
財産区
財産区とは、市町村または特別区の一部で財産・施設を有している団体のことです。ただし財産に対する権限は、管理・処分・廃止の3つに限定されています。幅広い方法で自由に活用できるわけではありません。
主な財産の種類となるのが、土地・山林・原野などです。そのほかにも温泉やスキー場、公会堂といった施設も含まれます。
地方開発事業団は廃止されたので注意
昔は、特別地方公共団体の一つとして地方開発事業団がありました。しかしこちらは2022年に完全廃止されているので、勉強する際には十分注意してください。
地方開発事業団の特徴
地方開発事業団は、元々複数の普通地方公共団体で構成された団体でした。これらの地方公共団体の事務を委託し、地域の開発に向けた事業を提供していました。
事業を受託したときに構成され、完了したら解散するのが主な特徴です。また法律により、どの着手できる事業にも制限がありました。こうした特徴が、一部事務組合との違いといえます。
なぜ廃止されたのか
廃止された理由は、長期にわたって新規の地方開発事業団が現れなかったからです。概念を残しておく理由もなくなり、2022年に青森県の建設事業団が解散したことで消滅しました。
地方公共団体の勉強のポイント
地方公共団体を勉強する際には、普通地方公共団体と特別地方公共団体の違いを正確に理解しないといけません。
普通地方公共団体については、市町村の定義について理解しましょう。指定都市や中核市の概念も押さえておけば、試験も基本的には対応できます。
一方で特別地方公共団体は、普通地方公共団体とは異なりイメージしにくいのが悩ませるポイントです。大きく種類が3つあることを押さえ、それぞれの定義を覚えるようにしてください。