行政法の勉強をする中で、行政調査と犯罪捜査の区別をしっかりと付ける必要があります。しかし調査自体がいまいちイメージしにくく、理解できないと感じている人もいるでしょう。
この記事では、行政書士試験に短期合格した筆者が、行政調査の種類を説明するとともに犯罪捜査との違いを解説します。行政書士試験を受験される方は、ぜひ記事を参考にしてください。
行政調査とは
行政調査とは、行政機関が必要な情報を集めるための活動です。たとえばレストランの経営者が、何らかのルールに違反しているのを隠しつつ、業務を続けている場合があります。しかし証拠を揃えていなければ、いきなりペナルティを科すのは難しいでしょう。
そこでレストランに対して調査を行い、ルールに反しているかどうかを確認し、今後の対応を決めるわけです。行政調査の一般的な手続きを定めた法律はなく、個別法に基づいて実施されます。
行政調査の種類
行政調査には、大きく分けて3つの種類があります。
- 任意調査
- 間接強制調査
- 直接強制調査
それぞれの調査が、どのような特徴を持つかを押さえてください。
任意調査:相手の任意に基づく
任意調査とは、相手の任意に基づいて実施される行政調査です。法律の根拠は不要となっていますが、どこまでの行為が認められるかが議論となっています。
たとえば近所で銀行強盗が発生したところ、犯人のものと似ている車が道路を走っていたとしましょう。このときに車を停止させ、所持品検査ができるでしょうか。
最高裁判例では、強制にわたらない限りは所持品検査ができる場合もあると判旨しました(昭和53年6月20日)。このようにただ質問するだけではなく、公共の利益を守るために一定の検査が認められるケースもあります。
間接強制調査:刑罰等を提示
間接強制調査とは、刑罰を提示しつつ実施される行政調査です。適用されている法律の例として、食品衛生法第28条が挙げられます。
食品衛生法第28条では、厚生労働大臣や内閣総理大臣、都道府県知事に検査等を認めています*1。仮に検査等を拒んだり、虚偽の報告をしたりすると50万円以下の罰金に科せられます*2。
罰則を用いる調査であるため、間接強制調査をするには法律の根拠が必要です。従わない者に刑罰を科しても、犯罪捜査のための調査とはみなされません。

刑罰や制裁を突きつけて強制させるのが「間接強制」。法律の世界ではよく使われるよ!
直接強制調査:物理的な強制力
直接強制調査とは、罰則ではなく物理的な強制力を持つ行政調査です。主な具体例として、国税徴収法第142条が挙げられます*3。
こちらの条文によると、行政は滞納処分をしている者に対し、住居等を直接捜査することが認められています。場合によっては、金庫を開けるといった方法も可能です。
侵害留保説に基づき、直接強制調査をするには法律の根拠を必要とします。侵害留保説については、以下の記事で詳しく説明しています。
法律による行政の原理とは?法律の留保の考え方5つも押さえよう - 【資格の教室】ヤマトノ塾
行政調査と犯罪捜査との違い

行政調査と犯罪捜査は、目的や方法が全くもって異なります。行政調査は、犯罪捜査の目的で実施することは許されません。
しかしどちらも行政機関による活動であるため、具体的な違いが分からない方もいるでしょう。ここでは、行政調査と犯罪捜査の違いを簡潔に説明します。
実施できる機関
行政調査は、市町村役場や都道府県庁のみならず、国の省庁が行うことが可能です。一方で犯罪捜査に関しては、警察や検察といった捜査機関に限定されます。
市町村職員や都道府県庁職員は、情報提供くらいであれば関与できるものの、直接的に犯罪捜査できる権限は有していません。そのため行政調査は、犯罪捜査と比べると実施できる機関の幅が広いといえます。
令状主義の扱い
犯罪捜査の場合、強制に基づく捜査については令状を必要とします。このような考え方を令状主義と呼び、強制にわたる捜索や差し押さえに基づく令状は捜索差押許可状です。ただし任意に基づく犯罪捜査であれば、原則として令状は必要ありません。
一方で行政調査は、基本的に令状は不要です。ただし令状主義が必ずしも適用されないわけではありません。
有名な判例として、川崎民商事件(昭和47年11月22日)があります*4。こちらは過少申告が疑われた商工会の会員による事件ですが、令状主義について最高裁で触れられました。
最高裁によると、刑事責任追及を目的としないからといって、令状にかかる保障(憲法第35条の保障)の枠外にはないとのことです。ほかの判例でも、直接強制調査に関しては令状が必要になりうるとジャッジを下しています。
行政調査に関するまとめ
行政調査は、行政書士試験において頻出度が高い分野ではありません。ただし行政調査を発端とする事件は少なくないため、犯罪捜査との違いを中心に一通り見ておくのをおすすめします。
特に狙われやすい判例が川崎民商事件です。択一式で問われるだけではなく、多肢選択式で出題される可能性もあります。行政書士試験で点数を稼げるように、しっかりと復習してください。