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女性の再婚禁止期間が廃止された!その理由をわかりやすく解説

令和7年5月時点において、民法では女性の再婚禁止期間を設けていません。しかし以前の民法には、女性は離婚したあと100日間婚姻してはいけないという決まりがありました。

この記事では、行政書士試験や公務員試験に合格した筆者が、女性の再婚禁止期間が廃止された背景をわかりやすく解説します。判例についても詳しく取り上げるので、試験を受けられる方はぜひ参考にしてください。

 

女性の再婚禁止期間とは

2024年(令和6年)4月に民法が改正されるまで、女性には再婚禁止期間(100日間)がありました。このルールが作られたのは、性別にかかる生物学的な理由があります。

再婚禁止期間が存在した理由

再婚禁止期間を設けていた主な理由は、誰が本当の父親かを明らかにするためです。当たり前ですが、子どもは全員が女性から生まれます。したがって母親が誰かを特定するのは、基本的には難しくありません。

しかし男性の場合は、誰が本当の父親かわからなくなることもあります。離婚した直後に別の男と結婚して子どもができた場合、DNA鑑定が進んでいなかった時代では、誰が父親かを判別できなかったのです。

新しい夫との子であるにもかかわらず、前の夫に養育費を請求するといった事態も発生しかねません。血縁関係の複雑化を防ぐために、民法で再婚禁止期間が設けられました。

再婚禁止期間の設定内容

少し前の民法では、女性の再婚禁止期間が100日間となっていました。それより前は6ヶ月であり、廃止される前に期間が一度短くなった過去もあります。ただし例外として、以下の要件に当てはまる人は再婚禁止期間の対象外となっていました。

  • 前婚の解消または取消し時に懐胎(妊娠)していなかった
  • 前婚の解消または取消しの後に出産した

なぜ100日間に設定されたのか

女性の再婚禁止期間が100日間となっていたのは、嫡出子の推定を規定した民法第772条に起因します。嫡出子とは、法律関係の夫婦から生まれた子のことです。改正前の民法第772条では、嫡出子の推定方法を以下のように定めていました。

期間 夫と子の関係
婚姻成立から200日後に生まれた子 現在の夫の子
離婚後300日以内に生まれた子 前夫の子

 

ここで画像も一緒に見ていきましょう。

なぜ100日間の再婚禁止期間があったのかをわかりやすく示したイラスト

例えば母親が、離婚後すぐに別の男性と婚姻したとします。離婚後に子どもを生んだとしても、以前の民法であれば300日以内は前夫が父親です。しかし200日を経過すると、現在の夫も父親と推定されてしまいます。

要するに前夫および現在の夫において、自身の子と推定できる期間がそれぞれ100日間被っているわけです。この100日間においてはどちらが本当の父親なのか、昔の技術ではわかりませんでした。以上が再婚禁止期間が設けられていた原因です。

 

女性の再婚禁止期間と判例

女性の再婚禁止期間について、法の下の平等に反すると争われた判例が「最大判平成27年12月16日=平成28重判No.6」です。争われた当時は再婚期間が6ヶ月であり、女性にだけこうした期間を設けるのは不平等であると主張しました。

そこで国(法務省)に対し、国家賠償請求訴訟を提起します。行政書士試験や公務員試験においても、問われやすい部分であるのでしっかりと押さえてください。

 

100日を超える部分は違憲

まず押さえてほしいのが、再婚禁止期間を6ヶ月に設定していた部分が違憲と扱われた点です。先ほども示したとおり、民法第733条は父子関係の法的安定を図るのを狙いとしています。

そう考えれば、100日間を超える部分についても再婚禁止期間を設けるのは、過剰な制約にあたると判断されました。

100日間の再婚禁止は合憲

この判例において、気をつけなければならないのが100日間の再婚禁止は合憲とみなされた点です。当時は再婚禁止期間が6ヶ月間であったため、日数にすると約180日もありました。

そのため女性の再婚禁止期間の判例は「違憲」とだけ覚えてしまうと、100日という期間に問題があったと勘違いしてしまいます。この判例を受けて、民法第733条は「6箇月」から「100日間」に改められたのです。

2025年現在の民法では条文自体が削除となりましたが、ここまでの流れをきちんと覚えておきましょう。

 

再婚禁止期間が廃止された理由

※画像はイメージです

最高裁判所の判例では、100日間を超えない部分については、再婚禁止期間も合理性を有するとしました。一方で2025年現在の民法では、再婚禁止期間の規定が完全に削除されています。廃止に至った理由を詳しくまとめましょう。

DNA鑑定の精度が高まった

再婚禁止期間が廃止となった理由の一つは、DNA鑑定の精度が高まったためです。DNAの研究が目覚ましく進歩したことで、誰の子どもかを正確に認識できるようになりました。

つまり離婚時に懐胎していた場合でも、前夫との子か現在の夫との子かで争う心配もなくなったわけです。こうした科学水準の向上も、法律の改正に深く関わってきます。

嫡出推定制度が見直された

再婚禁止期間の廃止を見るうえで、嫡出推定制度の見直し(民法第772条の改正)も欠かせません。嫡出子とは、法律関係の夫婦から生まれた子のことです。

先ほども触れましたが離婚後に生まれた子に対しては、誰が父親かを推定するための制度があります。この推定方法が、2024年(令和6年)4月より改められます。

以前のルールは、離婚日から300日以内に生まれた子の父親は前夫となっていました。しかし前夫はこれを認めない人も一定数おり、戸籍のない子を生み出す要因となります。

そこで第772条に条文を追加し、再婚したあとに生まれた子は現在の夫を父親と推定するようになりました。推定方法がシンプルになり、離婚日から300日以内の縛りもなくなったので、再婚禁止期間の廃止につながったのです。

嫡出否認権が変更された

厳密には嫡出推定制度の見直しに含まれますが、嫡出否認権が変更された点も重要な要素です。嫡出否認権とは、夫側が婚姻中に生まれた子どもとの父子関係を否定する権利です。

以前は父親側のみに与えられていましたが、民法改正により子どもや母親にも認められるようになりました。つまり母親や子どもが「あの人は父親ではない!」と訴えられるようになったのです。

以前は出訴期間が1年となっていましたが、3年に伸長されたのもポイントです。この改正により、母親や子ども側からも誰が父親かを主張できるようになりました。

 

再婚禁止期間の勉強における注意点

女性の再婚禁止期間については、これまでの民法改正でルールが大きく変わっていったのが特徴です。従来は6ヶ月となっていましたが、「100日間→廃止」と順次改正されます

行政書士試験や公務員試験で押さえたいのが、女性の再婚禁止期間について争われた判例です。判例の内容をよく読み、100日間を超えた部分のみが違憲となった点を覚えましょう。

再婚禁止期間が廃止されたのは、DNA鑑定や嫡出推定制度の見直しが関わっています。ここまでの流れを把握すれば、判例の問題も正答できるはずです。