どーも、やまとのです!
今回は表現の自由における
『検閲』を解説していきましょう!
ちなみに、前回の内容についても復習しておいてください。
この範囲も公務員試験の勉強においてとても重要です。
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憲法21条の検閲とは
憲法21条に定められている検閲(けんえつ)とは、書籍や雑誌等を発表前に行政が主体となって検査した上で発表を禁止することです。
ここで重要なポイントが2つあります。
- 発表前に行われること
- 行政が主体となること
検閲は、事前に行われるものが該当します。発表後、表現があまりにも不適切な書籍の出版を止める行為は検閲ではありません。
加えて、行政が主体になるのもポイントのひとつです。訴訟で裁判所が審査するケースは検閲とはいえません。
この話は、後述の北方ジャーナル事件の解説で詳しく取り上げましょう。
現行の憲法21条では、検閲は『表現の自由』により禁止されています。
憲法21条
② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
しかし、戦前の頃は当たり前のように行われていました。
天皇機関説事件を中心に、日本中の思想家が検閲により表現の自由を規制された過去があります。
一方で現在の日本でも「これは検閲にあたるんじゃないか?」と疑われた事例がいくつか存在しました。
検閲の判例3つ
検閲にかかる判例として、今回は下記の内容を取り上げます。
- 北方ジャーナル事件
- 税関検査事件
- 岐阜県青少年保護育成条例事件
それぞれの内容を押さえましょう。
北方ジャーナル事件
北方ジャーナル事件は、検閲における最もオーソドックスな事件です。
北海道の知事選に出馬する予定の方が、自身を誹謗中傷した記事が発行される情報を聞きつけ、裁判所に対して差し止め仮処分を求めます。
裁判所の仮差し止めを指示したものの、この行為が検閲ではと問題視されます。
訴訟は最高裁まで持ち込まれ、司法の仮差し止めは検閲には当たらないと判断しました。
上述したとおり、検閲は行政による事前規制です。その上で司法の事前差し止めをどう捉えるか考えます。
ただし、司法による差し止めが必ずしも認められるわけではありません。
仮処分の事前差し止めも「表現の自由を規制する力が強い」のは最高裁も示唆しました。
裁判所による事前差し止めは
厳格かつ明確な要件のもとで例外的に許されると結論を下します。
税関検査事件
税関検査とは、本や雑誌等を輸入する際に日常生活を乱すようなものを禁じる規制です。
例をいえば、アダルトな本ですね。
これまでもアダルトな本に関する問題はありましたが、ここでは「税関検査が検閲にあたるのでは」と問題視されます。
結論をいえば、税関検査は思想そのものを統制するわけではありません。
以上から検閲にはあたらないと判断されました。
アダルトな本に関しては、チャタレー事件も有名ですね。
アダルトな本の出版は「公共の福祉に反する」と、地裁の判決が正当だと認められました。
岐阜県青少年保護育成条例事件
岐阜県青少年保護育成条例事件とは、
有害図書に認定された本の取り扱いが問題視された事件です。
アダルトな本を売る自動販売機が、かつては置かれていたそうですね。
条例では、有害図書にあたる自動販売機を撤収する旨が定められました。
しかし、当該規定は「憲法の表現の自由を侵害するのでは」と訴えられます。
最高裁の判決では、本件条例は憲法に違反しないと判旨しました。
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憲法21条の規制
ポイントをまとめていきましょう。
憲法21条を規制する基準にもさまざまあります。
- 二重の基準
- 明確性の理論
- 事前抑制の禁止
- 明白にして現在の危険の基準
- LRAの基準
難しい範囲ですが、それぞれをしっかりと押さえてください。
二重の基準
憲法21条(表現の自由)は、以下の2つの自由があります。
- 精神的自由
- 経済的自由
双方の自由から憲法21条を考えるのが二重の基準です。
経済的自由については、合理性をもって基準を作れば問題ありません。
一方で、精神的自由は経済的自由よりも優位にあるといわれています。
この関係を整理すると、示される基準は次のとおりです。
- 経済的自由は緩やかな基準
- 精神的自由は厳格な基準
よく用いられる考え方であるため、押さえておくといいでしょう。
明確性の理論
明確性の理論とは、法文が明らかでないときは表現の自由に制限をかけるのはNGと定めた基準です。
法律に不明瞭な部分があると、日々の生活に国民が萎縮してしまうために示されました。
徳島市公安条例事件で明確性の理論が用いられました。
この事件は条例が法律より重い罰則を定めたために、争われた事件です。
犯罪の構成要件を考える上で、条例の明確性も訴えの対象となります。
しかし、最高裁は合憲判決を出しました。
ちなみに、明確性の理論に従って違憲判決を行った判例は今のところありません。
事前抑制の禁止
他にも、事前抑制の禁止があります。
事前抑制は、事前規制とは異なり抑止力が大きいために原則禁止とされています。
「抑制も規制も変わらないだろう」と思うかもしれません。
しかし、規制は規定に則りながら行うために抑制の方が力は強いようです。
事前抑制は例外として
- 内容が真実ではない
- 公益を図るのが目的でないことが明白
- 重大で著しく回復困難な損害
があれば認められます。
税関検査の事件で最高裁は、
「税関検査は事前抑制にあたらない」として検閲じゃないと判断しました。
明白にして現在の危険の基準
「明白にして現在の危険の基準」は、実質的な害悪を引き起こす明白かつ現在の危険があれば表現を抑止できるという力です。
ただ、この基準は日本では適用されたことがありません。
存在だけ覚えてしまえば問題ないでしょう。
LRAの基準
LEAは『Less Restrictive Alternative』が正式な名称です。
直訳すると『より制度的ではない他の選びうる手段』と表せます。
立法の目的を達成するために、より制限的ではない他の選びうる手段がなければ、表現に関する規制も合憲となる基準です。
この基準は憲法21条に関する
内容中立規制の審査基準に用いるべきだと、学説上では考えられています。
内容中立規制とは、
表現する際の「時・場所・方法」への規制です。
学説上は内容中立規制にLRAの基準を使うべきだといっています。
しかしながら、実際の裁判では『合理性があるか否か』といった合理的関連性の基準が採用されています。
最高裁では、LRAの基準は用いられたことがありません。
「学説」と「判例」では考え方が異なるため、念のため区別して覚えてください。
まとめ
今回も『表現の自由』をテーマに
- 検閲にかかる判例
- 表現の自由を規制する基準
を見ていきました。
なかなか内容は濃かったのかなと思います。
書いている方もどっと疲れました(笑)
最後に『検閲』をまとめていきましょう!
- 行政権が主体となり
- 全部または一部の発表禁止を目的とし
- 発表前に内容を審査したうえで
- 不適当な書籍等の発表を禁止する
検閲は「表現の自由」により、原則的には「禁止」されています。
しかし、場合によっては例外もゼロではありません。判例を見比べつつ、検閲の内容を振り返ってください。
同じ表現の自由に含まれる、報道の自由については下記の記事を参考にしてください。
また、結社の自由に関する記事も執筆しています。
これらの内容を押さえつつ、表現の自由について理解を深めましょう。