どーも、やまとのです!
今回は表現の自由における
『検閲』を解説していきましょう!
ちなみに、前回の内容についても復習しておいてください。
この範囲も公務員試験の勉強においてとても重要です(^^)
1.検閲とは?
検閲(けんえつ)とは、世の中に発行する書籍や雑誌等を発表前に行政が主体となって検査した上で発表を禁止することです。
国に認められなかった書籍は、当然ながら世の中には出回らなくなります。
現在、検閲は『表現の自由』により禁止されています。
しかし、大日本帝国憲法時代は当たり前のように行われていました。
しかし、現在も
「これは検閲にあたるんじゃないか?」と問題視されていくつもの訴訟が起こっています。
検閲にかかる訴訟をいくつか紹介していきましょう。
2.検閲にかかる判例
検閲にかかる判例として、今回は下記の内容を取り上げます。
それぞれをしっかりと押さえましょう。
・北方ジャーナル事件
北方ジャーナル事件は、『検閲』における最もオーソドックスな事件です。
北海道の知事選に出馬する予定の方が、自身を誹謗中傷した記事が発行される情報を聞きつけ、裁判所に対して差し止め仮処分を求めます。
要は裁判所に発行しないよう対処してほしいと申し出ました。
しかし、裁判所の仮差し止めが『検閲』にあたるのではと問題視されます。
最高裁まで持ち込まれ、司法の仮差し止めは『検閲』には当たらないと判断しました。
いろいろ複雑に絡む事例ではありますが、公務員試験レベルなら
- 『検閲』は行政による事前規制
という基本事項をまず押さえましょう。
その上で司法の事前差し止めをどう捉えるか考えます。
司法の行為だから絶対的に差し止めが認められるというわけでもなく、仮処分の事前差し止めも表現の自由を規制する力が強いのは最高裁も示唆しました。
そして、裁判所による事前差し止めは
『厳格かつ明確な要件のもとで例外的に許される』と結論を下します。
同じような事例として
『「石に泳ぐ魚」事件』があります。
この事件の場合は、人格権に基づいて侵害行為で被害者が重大な損失を受ける恐れがあります。
そこで、回復を見込むのが不可能かつ著しく困難であれば、事前差止めは認めるべきだとしました。
・税関検査事件
名前を聞くと複雑な感じがしそうですね(笑)
税関検査とは、本や雑誌等を輸入する際に日常生活を乱すようなものを禁じる規制です。
例をいえば、アダルトな本ですね。
これまでもアダルトな本に関する問題はありましたが、ここでは「税関検査が検閲にあたるのでは」と問題視されます。
結論をいえば、税関検査は思想そのものを統制するわけではないので、検閲にはあたらないと判断されました。
アダルトな本に関しては、チャタレー事件も有名ですね。
こちらもアダルトな本の出版を公共の福祉に反するという地裁の判決が正当だと認めました。
・岐阜県青少年保護育成条例事件
岐阜県青少年保護育成条例事件とは、
『有害図書』に認定された本の取り扱いが問題視された事件です。
アダルトな本を売る自動販売機がかつては置かれていたそうですね。
今でもあるのでしょうか?流石に自販で買おうとは思わないですが(笑)
条例はこういった自動販売機を撤収する旨定められました。
しかし、当該規定は憲法の表現の自由を侵害すると訴えられます。
最高裁の判決は本件条例は憲法に違反しないと判旨しました。
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3.表現の自由を規制する基準
まずは、分かりやすくここでやるポイントをまとめていきましょう。
表現の自由に関する規制の基準にもさまざまあります。
難しい範囲ですが、それぞれをしっかりと押さえてください。
・事前抑制の禁止
表現の自由の制約に関しては、
- 精神的自由
- 経済的自由
に分けて2種類の基準で決めましょうというものがあります。
これが二重の基準です。
以前もこの基準に関しては説明しましたね。
経済的自由については合理性をもって基準を作ればOKです。
一方で、精神的自由は経済的自由よりも優位にあるといわれています。
そのため、精神的自由における規制については
『厳格な基準』が用いられるのです。
- 経済的自由は緩やかな基準
- 精神的自由は厳格な基準
が基本となります。
・明確性の理論
『明確性の理論』とは、法文が不明確な場合は表現の自由に制限をかけてはいけないと定めた基準です。
徳島市公安条例事件で明確性の理論が用いられましたが、最高裁は合憲判決を出しました。
ちなみに、明確性の理論に従って違憲判決を行った判例は今のところありません。
・事前抑制の禁止
他にも、
『事前抑制の禁止』という基準もあります。
事前抑制は、事前規制とは異なって抑止力が大きいために原則禁止とされています。
抑制も規制も変わらないだろと思うかもしれません。
とはいえ、規制は規定に則りながら行う分、抑制の方が力は強いようです。
事前抑制は例外として
- 内容が真実ではない
- 公益を図るのが目的でないことが明白
- 重大で著しく回復困難な損害
があれば認められます。
先程説明した税関検査の事件で最高裁は、
「税関検査は事前抑制にあたらない」として検閲じゃないと判断しました。
・明白にして現在の危険の基準
「明白にして現在の危険の基準」は、実質的な害悪を引き起こす明白かつ現在の危険があれば表現を抑止できるという力です。
ただ、この基準は日本では適用されたことがありません。
存在だけ覚えてしまえば問題ないでしょう。
・LRAの基準
これは『Less Restrictive Alternative』、
つまり
『より制度的ではない他の選びうる手段』の基準です。
立法の目的を達成するために、より制限的ではない他の選びうる手段がなければ、表現に関する規制も合憲となる基準です。
この基準は表現の自由に関する
『内容中立規制の審査基準』に用いるべきだと学説上では考えられています。
内容中立規制とは、
表現する際の「時・場所・方法」への規制です。
学説上は内容中立規制にLRAの基準を使うべきだといっています。
しかしながら、実際の裁判では『合理性があるか否か』といった合理的関連性の基準が採用されています。
最高裁では、LRAの基準は用いられたことがありません。
「学説」と「判例」では考え方が異なるため、念のため区別して覚えなければなりません。
4.まとめ
今回も『表現の自由』をテーマに
- 検閲にかかる判例
- 表現の自由を規制する基準
を見ていきました。
なかなか内容は濃かったのかなと思います。
書いている方もどっと疲れました(笑)
最後に『検閲』をまとめていきましょう!
検閲は「表現の自由」により、原則的には「禁止」されています。
しかし、場合によっては例外もゼロではありません。
判例を見比べつつ、検閲の内容を振り返ってください。
次回は「集会・結社の自由」を勉強します。