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審査請求の流れ|審理手続きから裁決までのプロセスを徹底解説

行政不服審査法の審査請求は、流れが細かくて覚えにくいと感じる人もいるでしょう。特に審査請求をしたことがある人もほぼいないと思うので、イメージしにくい分野でもあります。

この記事では、公務員試験や行政書士受験生に向けて審査請求の流れを紹介します。審理手続きや裁決についても理解できるようにしてください。

 

審査請求とは

※画像はイメージです

審査請求とは、行政庁の処分に不服のある人が申し立てる制度のことです。法律上保護された利益を侵害された、必然的に侵害される恐れのある人が審査請求の権利を有します。

審査請求の申立期間は、次の2パターンがあります。

  • 処分があったのを知った日の翌日から3ヶ月以内
  • 処分があった日の翌日から1年以内

ただし正当な理由があれば、例外的に期間を過ぎてもOKとされています。行政事件訴訟法と間違いやすいので、区別して覚えてください。

 

審理手続きに参加できる人

審理手続きに参加できる人は、大きく分けて以下のように分けられます。

  • 審査請求人
  • 審理員
  • 総代
  • 参考人
  • 代理人
  • 相続人

それぞれがどういった立場に立つかを紹介しましょう。

審査請求人

審査請求人は、審査請求する本人です。審査請求人が処分庁か、最上級行政庁(不作為庁に最上級行政庁がある場合)に申し立てることで審理手続きが始まります。

審査請求ができう条件は、自己の権利や法律上保護された権利がある場合です。したがって何人も審査請求の権利が認められるわけではありません。

審理員

審理員とは、審査請求人らと処分庁の間に立って手続きを進める者です。審査庁の職員から指名され、選んだら審査請求人と処分庁に通知する必要があります(処分庁や不作為庁ではないので注意)。

審理員は、あくまで国民と処分庁側の主張を公平に聞く立場です。したがって次の条件に該当する人物は、審理員となることができません。

  • 審査請求人
  • 審査請求人の親族(配偶者、4親等内の親族、同居親族)
  • 審査請求人の代理人
  • 親族・代理人だった人
  • 審査請求人の後見人、補佐人、補助人(監督人も含む)
  • 参加人

なお審査庁は、審理員となるべき人をまとめた名簿を作成するように努めないといけないとされています(法的な義務ではない)。

総代

トラブルの内容によっては、膨大な数の利害関係人がいるケースもあります。しかし全員が個別に審査請求をすると、法律関係が複雑になってしまうでしょう。

この場合、3人を超えない人数で総代を選べば、取り下げを除いて審査請求の一切を任せられます。「取り下げを除いて」の部分が問題でも出やすいので注意してください。

総代が3人いても、通知は1人に対してすればOKです。

代理人

審査請求は本人だけではなく、代理人を介してするのも可能です。総代と異なり、代理人には人数の制限がありません(3人を超えても問題ない)。

基本的に一切の行為ができますが、審査請求の取り下げは特別の委任を受けた限りと制限が課せられます。勝手に取り下げられると、本人に不利益が生じてしまうためです。

相続人等(承継人)

こちらも試験で狙われやすいですが、審査請求は本人が死亡したら親族が相続することも認められます。審査請求人が法人である場合、合併や分割が生じたら存続会社等が権利を引き継げます。

このような相続人や存続会社等を「承継人」と呼ぶので必ず覚えてください。相続等が発生したら事実を明らかにすべく、審査庁に書面での届出が必要です(事実を立証できる添付書類も必要)。

なお「処分にかかる権利のみ」を引き継いだ人(特定承継人)の場合、地位を承継するには審査庁の許可を得なければなりません。

 

 

審査請求の流れ

審査請求の流れは以下のとおりです。

  1. 審査請求書の提出
  2. 事前準備
  3. 審理手続き
  4. 審理手続き終了
  5. 裁決

この5つの手続きにおいて、どのような対応が必要になるかをまとめましょう。

審査請求書の提出

審査請求を行うには、審査請求書の提出をしなければなりません。こちらは法律か条例で「口頭でできる」と規定がない限り、書面で提出する必要があります。

記載すべき事項

審査請求書に記載すべき事項は、次のとおりです(処分の場合)。

  • 審査請求人の情報(氏名、生年月日等)
  • 処分の内容、処分を知った年月日
  • 審査請求の趣旨と理由
  • 教示の有無および内容
  • 審査請求の年月日

不作為の場合は審査請求人の情報や審査請求の年月日に加え、不作為に関する処分の申請内容や年月日が必要とされます。

審査請求書の補正について

審査請求書に不備があった場合、審査庁は相当の期間を定めて補正を命じなければなりません。この補正命令は、国民の利益を守るために「義務」とされています。

混同しやすいですが、行政手続法の許認可の申請については、不備が発覚しても行政側は補正を命じずに拒否できます。間違えやすいので、行政不服審査法と行政手続法の例を区別して覚えましょう。

事前準備

弁明書と反論書の提出にかかる審査請求人・処分庁の関係を説明した図

審査請求書の提出後、審理手続きが開始されますが事前に提出しないといけない書類もあります。一般的にどういった対応が必要かを解説しましょう。

弁明書が送付される

審理員は、処分庁等から弁明書をもらいます。それを審査請求人に送付するのが、まず行われる手続きです。弁明書には、次の事項が記載されています。

審査請求の理由 事項
処分 ・処分の内容
・理由
不作為 ・処分していない理由と処分の予定時期
・内容
・理由
反論書を提出する

弁明書を受け取った審査請求人は、反論書を提出できます。こちらは弁明書の内容に対し、「ここが事実関係と異なる!」などと反論の意思を主張する書面です。

反論書をまとめたら、審理員に対して提出します。審理員が期間を定めたら、その期間内に提出しないといけません。

反論書を受け取った審理員は、処分庁に送付します。実際の試験では、反論書と弁論書をあべこべにして引っかける問題に注意しましょう。

審理手続き

審理手続きには、主に書面審理主義職権探知主義が働きます。また場合によっては、参考人の申述と鑑定の請求も可能です。これらの内容も解説しましょう。

書面審理主義

審査請求には書面審理主義が働き、書面でのやり取りが原則です。

口頭でのやり取りは、お互いに反論し合うのが予想されるため多大な時間を要します。そのため書面を原則とし、スムーズに審理を進めることを狙いとしています。

しかし口頭での申述が一切許されないとなると、審査請求人が不利益を被るケースもあるでしょう。そのため審査請求人や参加人の申立てがあったら、審理員は口頭で意見を述べる機会を与えないといけません(「与えることはできる」は✕です)。

審理員から許可をもらえば、補佐人の出頭も認められます。処分庁への質問もできますが、事件との関連性がなければ審理員により制限されることもあります。

口頭意見陳述の規定は、処分庁への質問を除いて再調査の請求に準用される点も一緒に覚えておきましょう。

職権探知主義

書面審理主義と同じく、迅速性の観点から審査請求には職権探知主義が認められます。職権探知主義とは、審査庁側が自分の意思に基づいて調査等できる原則のことです。

職権での対応が認められるのは以下のとおりです。

  • 物件(書類等)の提出
  • 参考人の陳述および鑑定の要求
  • 検証
  • 審理関係人への質問

審理員は、提出された物件を留め置くこともできます。

鑑定と検証の違いですが、鑑定は専門的な知識を有する人に意見を求める手続きを指します。検証は、得られた情報から場所や人などを認識する手法です。

審理手続きの併合・分離

審理員は、必要がある場合には審理手続きの併合や分離ができます。併合は、数個ある手続きを一つにまとめることです。一方で分離は、一つの手続きを数個に分ける状態を指します。

一度併合したものでも、必要があれば再度分離することも可能です。行政不服審査法39条に定められているので、条文だけ押さえれば問題ありません。

審理手続きの終結

審理手続きがある程度終結したら、審理員は審理員意見書を作成する必要があります。加えて審査庁は、行政不服審査会に諮問しなければなりません。それぞれの制度について詳しく解説しましょう。

審理員意見書の作成・提出

審理員意見書とは、審査庁がどのような裁決すべきかを示した書類です。審理員は手続きが終結したら、遅滞なくそれを作成しなければなりません。

作成が完了したあと、事件記録と合わせて速やかに審査庁へ提出します。審理手続きを間近で見ていた審理員の意思を反映させる制度です。

行政不服審査会への諮問

審理員意見書を受け取った審査庁は、裁決するにあたって行政不服審査会へ諮問します。審査庁が公正に裁決するべく、こちらの手続きは義務とされています。

行政不服審査会に諮問するタイミングは、あくまで審理手続きが終結した「あと」です。審理手続きに「先立ち」ではないため、引っかからないように注意してください。

裁決

審理手続きが終了したら、審査庁は審査請求人に対して裁決しなければなりません。裁判所の判決とは区別されるので、混同しないように注意しましょう。ここでは裁決の種類と効力について詳しく解説します。

却下裁決

却下裁決とは、そもそも審査請求の審理にかけないで退けることです。条件として、以下の2パターンが挙げられます。

  • 期間経過後にされた審査請求(処分)
  • 相当の期間を経ないでされた審査請求(不作為)
  • その他不適法な審査請求

「期間」「不適法」をキーワードに覚えましょう。

棄却裁決

棄却裁決とは、審理にかけたうえで請求を退けることです。主な条件として審理請求に理由がないときが挙げられます。

却下と棄却は間違えやすいので、それぞれの条件を区別して押さえてください。

認容裁決

認容裁決は、審査請求を認めることです。

審査庁が処分庁や上級行政庁の場合、処分の取消しおよび変更が認められます。処分庁や上級行政庁以外が審査庁であれば、処分の取消しのみがOKとされます。

ただし審査請求人にとって、不利益となる変更はできません。不作為に関しては不作為庁であれば処分、上級行政庁は不作為庁へ処分の命令が可能です。

 

審査請求の流れのおさらい

審査請求の手続きについては、以下の流れを押さえてください。

  1. 審査請求書の提出
  2. 事前準備
  3. 審理手続き
  4. 審理手続き終了
  5. 裁決

またこれらの流れの中で、細かい手続き方法が問われることもあります。勉強するのが大変な分野ですが、過去問も繰り返し解きながら慣れるようにしましょう。

ほかにも、審査請求に関わる人々の関係性を押さえることも大切です。裁決に関する詳しい記事は、近日公開する予定なので少々お待ちください。