債務者が全然債務の履行をしないとき、第三者が代わりに対応することもあるでしょう。こうしたケースにおいても、民法にはあらかじめ規定がなされています。
この記事では、弁済による代位の具体的な要件や効果を解説します。行政書士試験や法学検定を受験される方は、記事の内容を参考にしてみてください。
弁済による代位とは
弁済による代位とは、債務者の代わりに弁済した人が、債権者に代位できる権利です。具体的には、債務者に対する求償権が認められます。
求償権は、簡単にいえば払った分のお金を返すように請求する権利です。債務者の代わりに弁済した人を保護する目的で規定されています。
弁済による代位は、大きく分けて法定代理と任意代理の2種類に分けられます。
法定代位
法定代位は債務者の代わりに弁済すれば、法律上当然に代位権が認められるケースです。主に以下の人物が当てはまります。
- 保証人(連帯保証人)
- 物上保証人
- 連帯債務者
- 抵当不動産の第三取得者
- 後順位抵当権者
- 一般債権者
このように法定代位は、正当な利益を有するかどうかがポイントとなります。
保証債務や連帯債務の詳しい説明については、以下の記事を参考にしてください。
任意代位
任意代位とは、正当な利益を有していない人が代わりに弁済し、債権者の立場で求償権を得るケースです。任意代位については、ひとまず二重弁済を防がないといけません。
債務者や第三者に対抗するには、「債権者から債務者への通知」「債務者の承諾」のいずれかが必要です。なお民法大改正(2020年)により、債権者の承諾は不要となりました。
弁済による代位の効果
債務者のために弁済した人は、具体的にどのような効果が得られるかを解説します。
債権者が有する権利を引き継ぐ
債務者の代わりに弁済した人は、債権者が有する一切の権利が承継されます。求償権だけではなく、原債権や担保を引き継ぐことも可能です(任意に選択できる)。
債権者が有していた抵当権も、弁済者に譲渡されます。第三者が弁済しても、抵当権自体が消滅するわけではありません(債務者は引き続き弁済が必要)。
また債務者が第三者に対して、一部を求償(弁済)した場合は原債権と求償権の両方に充当されます。物上保証人たちの利益を守るためです。
一部弁済による代位の場合
債務全部ではなく、一部だけを第三者が肩代わりをすることもあるでしょう。この場合は、価額に応じて債権者と一緒に権利を行使できると規定されています。
一部弁済の場合は、債権者の権利が完全に消滅する(弁済者に承継される)わけではありません。そのため抵当権に関しても、債権者は単独で行使できます。
また担保となっている目的物から、利子などの配当が得られるケースもあるでしょう。一部弁済においては、配当を受ける権利も債権者が優先的に得られます。
代位弁済できる人が複数いるケース
弁済による代位において、該当者が複数いることもあります。このケースで一人が全額を弁済したとしても、ほかの該当者の権利も承継できるとなると、むしろ不公平になります。
したがって代位弁済できる人が複数いる場合は、権利の承継がある程度制限されます。詳しいルールについて見ていきましょう。
第三取得者と保証人
第三取得者とは、担保の目的となっている財産を譲り受けた人です。主に債務者から抵当権の設定されている家や土地を購入した人が該当します。
仮に第三取得者が弁済をしても、保証人や物上保証人に対して債権者に代位できません。反対に保証人や物上保証人の、第三取得者に対する代位が可能です。
その理由は、第三取得者には抵当権消滅請求や代価弁済などの救済措置があるからとされています。つまり不安な立場に立たされている保証人のほうが、保護を厚くしているわけです。
第三取得者間と物上保証人間
第三取得者間や物上保証人間については、各財産の価格に応じて債権者に代位します。例えば600万円の土地を譲り受けたAさん、400万円の家を譲り受けたBさんがいたら、Aさんは600万円分のみ代位できます。
自分の有する財産の範囲内で、権利を認めると考えればわかりやすいでしょう。
保証人と物上保証人
保証人と物上保証人間は、人数に応じて債権者に代位すると規定されています(民法504条第3項4号)。この人数を算定するタイミングは、弁済時を基準とします。
ただし物上保証人が複数いる場合、保証人の負担額を除いた残額を価格に応じて代位するのが原則です。保証人が物上保証人の立場でもあるときは、「保証人」として数えます。
保証人は、債務者の全財産について責任を持たないといけません。したがって物上保証人と比べ、基本的には有利な立場に立ちます。
弁済による代位のまとめ
今回の記事では、弁済による代位の定義や要件について解説しました。行政書士の勉強においても、この分野は割とマイナーです。
勉強する際には、弁済による代位の基本的な定義に加え、一部弁済や保証人などが複数いるケースを押さえてください。
そこまで深堀りする必要はありませんが、どうしてもイメージしにくいときは何度も本記事を参考にするとよいでしょう。