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レペタ事件の結果|判例および裁判でメモを取る行為について解説

行政書士試験や公務員試験の憲法を勉強するうえで、重要判例として位置づけられるのがレペタ事件です。こちらは裁判の傍聴における筆記の自由に大きく関わります。

この記事ではレペタ事件の詳しい内容について、公務員試験や行政書士試験に一発合格した筆者が紹介します。ぜひ勉強の参考にしてください。

 

レペタ事件とは

※画像はイメージです

レペタ訴訟とは、原告が裁判の傍聴の際にメモを取りたいと許可を求めていたものの、許さなかったために始まった裁判です。原告の名前はローレンス・レペタであり、その名を取ってレペタ事件と呼ばれるようになりました。

原告はアメリカの弁護士であり、自身の研究のために7回もメモを取る行為について許可を求めていたそうです。結果的に認められず、精神的損害を負ったとして国家賠償請求訴訟を提起されました。

 

レペタ事件と判例

裁判をメモする行為については、各裁判でもさまざまな見解が示されました。ここでは憲法の規定と照らし合わせながら、最高裁判例を見ていきましょう。

裁判の公開

日本国憲法では、第82条で裁判の公開について定められています。裁判の対審や判決は、公開法廷で行わないといけません。なお対審とは、原告と被告が法廷で口頭弁論する審理を指します。

しかし裁判の内容によっては、公開することで原告または被告に著しい支障をきたす場合もあるでしょう。そこで憲法は、公序良俗を害するおそれがあるときに対審を非公開にすることは認められます。

ただし政治犯罪や出版に関する犯罪、国民の権利が問題になる事件の対審は常に公開しないといけません。加えて判決は、例外なく常に公開されます。

憲法第82条の趣旨

対審や判決の公開を定めている趣旨は、国民から信頼されるような裁判を保障するためです。しかし国民側から裁判所に対し、傍聴することを権利として認めたわけではありません。要するに憲法第82条が、メモを取るのを保障しているとはいえないわけです。

裁判長には広範な裁量がある

裁判長は、その名のとおり裁判におけるトップの存在となります。円滑に裁判を進めるうえでは、進行を妨げるような人物を排除する権利も与えられます。当事者だけではなく、傍聴人に対しても権利を行使できるわけです。

このように訴訟は、裁判長の広範な裁量によって進められます。裁判においては、裁判長の判断が最大限に尊重されないといけません。

メモは憲法第21条に合致する

裁判の傍聴において、メモをとる行為は憲法第21条に基づいています。つまり表現の自由として尊重されると考えられているのがポイントです。したがって裁判長は、原則としてメモを自由にするのを任せるべきと判旨しました。

メモを禁じても問題ない

基本的にメモをとる行為は尊重されるものの、裁判長は禁止できないわけではありません。事件の内容や傍聴人の状況などにより、メモをとるのを一般的に禁止することも認められています。

また状況に応じ、個別的に許可するといった取り扱いも可能です。理由なく禁止するのはNGですが、そういった事情がなければ裁判長の裁量となります。

違法性は認めなかった

ここで紹介した趣旨をまとめると、憲法はメモをとる行為について直接保障しているわけではありません。さらに訴訟の進行は、裁判長の権限に従ってすべきとされています。

特定の機関(報道陣など)に限定し、メモをとるのを許可するといった方法も可能です。こうした理由により、最高裁は原告の上告を棄却しました。結果的に敗訴となったものの、今後の裁判に重大な影響を与えた事件でした。

レペタ事件が与えた効果

レペタ事件が発生する前、日本の裁判ではメモが禁止されるのが一般的でした。掲示板でも「メモ禁止」と書かれることが主流だったようです。

しかしローレンス・レペタ氏が法廷で争ったおかげで、日本の裁判ではメモが実質的に解禁されるようになりました。今ではメモをとるのが当たり前になったともいえ、裁判の公開に大きな進歩をもたらします。

法廷での争いでは、ローレンス・レペタ氏は結果的に敗訴したかもしれません。一方で日本の裁判のあり方が改良されたことから、非常に意味のあった訴訟といえます。このように社会は、裁判一つで大きく変わるケースも珍しくありません。

 

 

レペタ事件で間違いやすい設問

レペタ事件は有名な判例であるため、行政書士試験や公務員試験で出題されるケースも少なくありません。ここでは引っかけ問題として、出題されやすいポイントを紹介します。

憲法はメモを保障していない

行政書士試験や公務員試験では、「傍聴人がメモをとる行為は憲法第82条で保障されている」と引っかけてくる場合があります。この設問は、誤りとなるので注意してください

そもそも日本国憲法は、裁判所でメモをとる行為を保障しているわけではありません。あくまで憲法第21条(表現の自由)において、尊重されているだけです。

もちろんメモをとる行為も、裁判の内容を記憶するうえで重視されうることは触れられています。そのため「故なく妨げられてはいけない」と判旨されました。

「尊重されている」と「保障されている」は意味合いが似ているものの、取り扱いは全く異なるので注意してください。

 

裁判を傍聴するときの注意点

※画像はイメージです

行政書士試験や公務員試験対策から話はそれますが、中には裁判を傍聴してみたい人もいるでしょう。一般的に裁判は誰でも自由に見学できますが、場を乱さないためにルールを守らないといけません。

ここでは裁判の傍聴における注意点をいくつか紹介します。実際に現場で見学することも、勉強において重要な取り組みとなるので押さえてください。

メモをとるのは原則自由

最高裁の争点にもなったメモですが、原則として傍聴では自由とされています。ノートと筆記用具を持ち込めるので、本格的に勉強してみたい方は用意しておくとよいでしょう。

一方でパソコンでメモをとるといった行為は、裁判所側から断られることもあります。許可が下りれば使えるものの、なるべく手書きで記録を残したほうが賢明です。

写真やビデオ撮影は禁止

メモをとることが原則認められる一方で、写真やビデオ撮影は禁止されています。スマートフォンを持ち込む際には、必ず電源をオフにしなければなりません。

報道機関であれば、許可を得たうえで持ち込みが認められる場合もあります。とはいえ一般人は基本的に認められないので、機材は持っていかないようにしましょう。

飲食は基本的には禁止

法廷では、基本的に飲食は禁止です。食べ物はもちろんのこと、ペットボトルや水筒の飲み物も飲んではいけません。

裁判の傍聴は議場で行いますが、こちらは出入り自由となっています。喉が乾いた場合は、一度議場の外に出て飲むようにしてください

危険物の持ち込みは禁止

当然といえば当然ですが、裁判の傍聴では危険物の持ち込みが禁止されています。仮に変なことに使う意図がなくても、勘違いされるものを持ってきてはいけません。裁判所へ向かう際に、自分でも持ち物チェックをしましょう。

普段使っている長い傘も、裁判所側は危険物と同じ認識をします。基本的に裁判所の外に傘立てがあるので、中には持ち込まないようにしてください。

 

レペタ事件のまとめ

レペタ事件で特に意識したいポイントは、最高裁が傍聴でメモをとるのを憲法が保障したとジャッジしていないことです。あくまで表現の自由(第21条)で尊重されているだけであり、国民にメモをとる権利が与えられているわけではありません。

一方で現代の日本の裁判では、傍聴する際にノートや筆記用具の持ち込みが認められています。スケッチも含め、傍聴中にメモをとることは禁じられていません。

「裁判の公開」を勉強するうえで、レペタ事件は押さえたい判例の一つです。行政書士試験や公務員試験の受験者は、必ず当該判例の内容に目を通してください。