ヤマトノ社会科塾

法律・経済学・歴史学の勉強ブログ

現実の引渡しと簡易の引渡し|引渡しの4類型の違いを解説

動産の取引においては、現実の引渡しや簡易の引渡しといった方法があります。民法の物権を勉強するうえでは、基礎的な内容となります。

この記事では行政書士試験に一発合格を果たした筆者が、現実の引渡しと簡易の引渡しを含め、引渡しの4類型をわかりやすく解説します。行政書士試験を受験される方は、ぜひ記事を参考にしてください。

 

引渡し4類型

引渡しは、以下に4つの種類が存在します。

  • 現実の引渡し
  • 簡易の引渡し
  • 占有改定
  • 指図による占有移転

それぞれどのような方法で目的物が移動されるか、図も用いながら解説していきます。

現実の引渡し

現実の引渡しについてわかりやすく説明した図

現実の引渡しとは、占有権を目的物とともに移転させる方法です。引渡しの中でも、最も一般的な方法といえます。

たとえばAがBに対し、時計を譲渡する旨の契約を交わしたとします。この場合、特別な事情がなければ時計を移転させるだけで、引渡しを成立するのが特徴です。動産は不動産と異なり、引渡しで取引が成立する点を押さえておきましょう。

簡易の引渡し

簡易の引渡しについてわかりやすく説明した図

簡易の引渡しとは、譲受人がすでに目的物を保有している場合、占有権移転の合意をするだけで引渡しを認める方法です。たとえばAがBに対して、時計をプレゼントしようと考えていました。

しかしAがBと一緒にランチを食べていたところ、レストランのテーブルに時計を忘れてしまいました。その際にBが、Aに渡そうと時計を一時保管したとしましょう。

BがAに「時計を忘れていたよ」とメールを送ったとき、Aから「元々Bにあげるものだったから受け取っていいよ」と返信が来ました。このようなやり取りが、簡易の引渡しに該当する例です。

占有改定

占有改定についてわかりやすく説明した図

占有改定とは、占有権の譲渡は完了したものの目的物が移転していない状況のことです。たとえばAがBに対し、時計を譲渡する契約を結びました。

本来、時計はBに渡されるはずですが、少し壊れている部分があったので修理するためにAが引き続き保有します。この場合、BはAを介して時計を占有する代理占有者となります。代理占有については、以下の記事でも説明しているので併せて参考にしてください。

指図による占有移転

指図による占有移転についてわかりやすく説明した図

指図による占有移転とは、直接目的物を占有している人に対し、第三者のために占有することを指図する方法です。たとえばAがBに時計をプレゼントしたいと考えていました。

しかしBは1カ月間海外旅行に出かけており、いつ会えるかわからない状況が続きます。その際にAは第三者Cが、Bが日本に帰ってきてからすぐに会う約束をしていることを知りました。

そこで「Bが帰ってきたら時計を渡してほしい」と、Cに時計を預けます。この場合、CはBのために時計を占有することになります。

 

引渡しと即時取得の関係

引渡しの方法を捉えるうえで、押さえないといけないのが即時取得との関係です。即時取得とは平穏に、かつ公然と善意無過失で占有を始めた者に、所有権などの権利を認めることです。

しかし引渡しの方法によっては、即時取得が認められないケースもあります。認められるケースと認められないケースに分けて解説していきます。

即時取得が認められるケース

即時取得が認められるケースは、大きく分けて以下の3つです。

  • 現実の引渡し
  • 簡易の引渡し
  • 指図による占有移転

即時取得は、目的物が実際に移動する取引で認められます。現実の引渡しも簡易の引渡しも、目的物が実際に移転する取引です。指図による占有移転も、最高裁判例によって即時取得を認めました*1

即時取得が認められないケース

引渡しの類型の中で、即時取得が認められないケースは占有改定です。占有改定は占有権自体を移転させているものの、目的物が移動しているわけではありません

即時取得は、あくまで外観上の取引の安全を保護する効果です。占有改定では客観的に目的物が移動していないので、保護しないのが最高裁判例の見方になります。

とはいえ学者の中には、占有改定にも即時取得を認めてもよいと考える人もいます。占有改定と即時取得の関係については、以下の記事でも紹介しているので、併せて参考にしてください。

 

引渡しの4類型まとめ

記事の最後に、引渡しの類型4つの違いを簡潔にまとめていきます。

引渡しの類型 定義
現実の引渡し 現実に目的物を譲渡
簡易の引渡し 占有権の移転の合意
占有改定 譲渡した目的物を借りる
指図による占有移転 第三者のために占有するよう命じる

ただし引渡しの類型を勉強するうえで、定義だけを覚えようとしても理解がしにくいでしょう。この記事で紹介したイラストも参考にしつつ、具体例をマスターするのをおすすめします。

行政書士試験では、即時取得との関係性が問われる可能性もあります。そのため占有改定のみ、即時取得が認められないことを押さえてください。