公務員試験でかなり狙われやすい範囲の1つに「代理」があります。
今回、紹介するのは「代理権の濫用」の要件です。自己契約や双方代理の内容も解説するため、公務員試験対策の参考にしてください。
公務員試験受験者だけではなく、行政書士や司法試験を受験される方にとっても重要な内容です。
代理に関する記事は、以下にまとめています。ぜひ参考にしてみてください。
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代理の権限とは
代理の権限とは「代理行為ができる範囲」を指します。実際に具体例を用いながら説明しましょう。
代理の権限の具体例
例えば、Aさんが新居を購入するとしましょう。
買おうとしている不動産の登記をする際には、専門家(司法書士)に手続きをしてもらうのが一般的です。Aさんの代わりに手続きする司法書士が、代理人に該当します。
では、代理人である司法書士は、どこまでの業務を行うことができるでしょうか。その答えは、登記に関する手続きのみです。
司法書士は登記を主に任されており、全く関係ない業務には着手できません。
権限の定めがない代理人
しかし、中には明確な権限を定めずに代理人として任命される方もいます。権限の定めがない代理人は、好き勝手に行動しても構わないのでしょうか?
当然、自由奔放な行為はNGです。
とはいえ、何か権限を与えられないと代理人が動きにくくなりますよね?そこで、民法では代理人に対して一定の権限を認めています。
- 保存行為
- 利用
- 改良
聞き覚えのないものも多いと思うので、しっかりと内容をイメージしてください。
保存行為
保存行為は、現状維持の状態を意味します。
「家」を例にすると、保存登記をしたり、傷んだ壁や屋根を修理したりするのが保存行為です。
(修繕を改良と間違えないようにしてくださいね。)
利用行為
利用行為は言葉の意味の通り、財産を使用する行為です。性質を変えない程度であれば、特に問題ありません。
現金を銀行預金や株に変えるのは性質を変えない利用行為だと認められます。家を売って換金するのは、不動産の性質を奪っているのでアウトです。
改良行為
最後に、改良行為は財産の価値を増加させる意味となります。
- 家のベランダに屋根を設置
- インターフォンをモニターに切り替え
などが該当する行為です。
上述で、壁や屋根の修繕は保存行為にあたると書きましたが、これらの例えは現状を保つための工事にあたるので財産価値の増加には繋がりません。
そのため、改良行為ではなく保存行為に該当するのです。権限の定めがない代理人は、3つの行為のみが与えられています。
基本的には民法の規定の範囲を超えた行為はできません。
代理権の濫用の要件
代理権には、ルールを守らずに行為の範囲を逸脱するケースも当たり前のように起こります。代理は本来、契約を結ぶ本人のためにしなければなりません。
それにも関わらず、代理人が自身もしくは全く関係ない第三者のために利益を得ようと活動している場合も考えられます。このような行為の範囲を逸脱した状態が、代理権の濫用です。
ここでは、代理権の濫用の具体的な要件を説明しましょう。
要件を示した民法の条文
はじめに、代理権の濫用の要件を示した民法の条文を見てみましょう。
民法107条:代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。
民法の考えとしては、代理権の濫用が見られても原則として効果は本人に帰属します。取引で影響を受ける、相手方になるべく負担をかけないためです。
相手方の善意無過失が要件
基本的に効果は本人に帰属するものの、あくまで相手方の善意無過失が要件です。
「相手がその目的を知り、又は知ることができた」ときは、無権代理がした行為だと認識されます。
無権代理は、権限が与えられていない代理人のことです。
無権代理人がした行為は、本人がそれを追認しなければ効力が生じません。
無権代理や追認の意味は、下記の記事で紹介しています。
民法に出てくるさまざまな法律用語と合わせて押さえてください。
自己契約と双方代理
最後に、自己契約と双方代理の解説をします。普段の生活でも、起こりうるケースのひとつです。
公務員試験対策のみならず、生活に使える豆知識としても覚えておくといいでしょう。
自己契約=自分の利益にする
自己契約とは、同一の行為について相手方の代理人になることです。
イマイチ意味が分かりづらいですね。
例えば、土地を売りたいものの方法を知らないAさんが、不動産の手続きに詳しいBさんに売却手続きをやってもらおうと依頼しました。
しかし、Bさん自身がその土地を欲しくなり、代理の立場にいながらも買い取る契約を交わします。
自分の利益を得るために、代理人として活動することが自己契約です。
このような行為が見られた場合の民法の対応は、双方代理とまとめて紹介します。
双方代理=両者を代理する
双方代理は、買い手と売り手の両方の代理になる状態を指します。
例えば、AさんがCさんに車を売ろうとしました。Bさんが間に入り、AさんとCさん2人を代理する行為が該当します。
自己契約と同じく、民法第108条に規定されている概念です。
原則は禁止だが例外あり
原則として、自己契約と双方代理は民法上で禁止されています。
仮にいずれかを行った場合、無権代理の対象です。権限のない人物が、代理行為をしたとみなされます。
しかし、例外もあるので合わせて押さえてください。
債務の履行や本人の許諾がある
自己契約や双方代理は、債務の履行または本人の許諾があるときは認められます。債務の履行とは、借りていたお金を返還するなどの行為です。
加えて、本人の許諾があるときも自己契約や双方代理を行っても問題ありません。両者の行為を禁止する理由は、あくまで本人の利益を守るためです。
債務の履行や本人の許諾があれば、本人の利益を害される心配がないため、例外規定として定められています。
司法書士の不動産登記
双方代理に当てはまるケースで、債務の履行や本人の許諾以外にも許される場合があります。該当する行為は、司法書士による不動産登記です。
前述のとおり、登記は複雑な知識が求められ、素人同士で簡単にできるものではありません。双方代理を認めてしまうと、手続きが前に進まなくなる危険性も考えられます。
そこで、昭和43年3月8日の最高裁判例において、司法書士の不動産登記に双方代理を認めました。
公務員試験では踏み込んだ内容ですが、自己契約や双方代理のイメージは付いたかなと思います。
双方代理と媒介の違い
双方代理の具体例を見ると「不動産会社の媒介契約が該当するのでは?」と思った方もいるでしょう。
しかし、代理と媒介は意味が異なります。両者の違いを解説しましょう。
双方代理は代理人の名で行う
代理は、代理人が本人の代わりにあらゆる手続きをする制度です。BさんがAさんとCさんを双方代理すれば、両者の手続きを「Bさんの名で」行う状態となります。
Bさんの裁量で進められてしまうため、AさんとCさんの利益を害する恐れがあります。繰り返しにはなるものの、こうしたリスクが双方代理を禁止している理由です。
媒介は双方の間に入るだけ
媒介も、2人の間に入る制度のひとつです。
しかし、Bさんはあくまで仲立ちをするだけであるため、最終的にはAさんとCさんが自分たちの名で決断します。
双方代理のように、代理人が自分一人で全てを決めてしまうような制度ではありません。
代理と媒介の意味合いは大きく異なるので、宅建試験等で深く勉強する際には気をつけましょう。
債務整理や借金の悩みについては、プロの司法書士に依頼することをおすすめします。
「アストレックス司法書士事務所」では、司法書士へ無料相談が可能です。
債務整理のみならず、不動産登記や会社・法人登記にも取り組んでいます。
公式LINEからの相談も可能であるため、気軽にコミュニケーションを取れる会社です。
まとめ
今回は、代理の権限の意味に加えて、次の2点を解説しました。
- 代理権の濫用の要件
- 自己契約と双方代理
公務員試験では、これらも非常に問われやすい内容となっています。過去問と照らし合わせながら、どのように出題されるか研究しましょう。
最終的には、多く暗記できた方の勝利です。
当ブログは、理解を深めるサポートをしていきます。