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薬局距離制限事件とは?職業活動の自由に関する判例を解説

日本国憲法で重要となる内容のひとつが職業活動の自由です。公務員試験においては、特に薬局距離制限事件が出題されます。

ここでは、薬局距離制限事件を中心に職業活動の自由に関するその他の有名判例も紹介しましょう。

なお今回の範囲は公務員試験のみならず、司法試験用のテキストにもわかりやすく解説されています。

 

 
◆この記事でわかること◆
・薬局距離制限事件の概要と結論
・規制目的二分論とその他の判例
 

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職業活動の自由の基本

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では、職業活動の自由の基本を説明します。具体的な内容までは分からない方もいるはずです。しっかりと条文に何が書かれているかを押さえましょう。

憲法22条の条文

職業活動の自由は憲法22条に保障されています。ただ、憲法22条は職業活動だけでなく、居住や移転・移住についても定められた条文です。

憲法22条を引用してみました。まずは、こちらをご覧ください。

第22条 
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

引用:e-GOV法令検索

この規定があるからこそ、我々は自由に住所を決めて国内外に引っ越すことができ、職業も自由に選べます。

僕はフリーランスですが、そういう生き方ができるのも憲法22条のおかげです。今はなかなか海外に行けない世の中ですが、この条文がある限り「渡航」も自由に行えます。

規制目的二分論

少し難しい内容ではあるものの、憲法22条にかかる判例には規制目的二分論という考え方があります。最高裁は、以下の2つの規制にしたがって判例を出します。

  • 消極的目的規制
  • 積極的目的規制

消極的規制は警察的規制ともいわれ、「危害から公共の安全や社会秩序を守る」ために採られる規制です。

こちらは「厳格な合理性の基準」が審査基準となっており、同じ目的を達成するうえでより緩やかな基準があるかどうかで違憲性を判断します。

一方で積極的規制は政策的規制と言い換えられ、「社会経済を良くする」ための規制が該当します。

積極的目的規制は「明白の原則」が採られており、規制措置が不合理であるのが明白か否かを基準にする方法です。

職業活動の自由の判例

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憲法22条は、自由に職業を選んでいけるように規定されたものです。

会社に勤めるだけではなく、今の社会では次のような働き方も想定されています。

  • 起業
  • フリーランス
  • ユーチューバー

などとありとあらゆる職業活動から我々は生き方を選べます。ちなみに、営業に関しても原則自由とされている点が特徴です。営業の自由

とはいえ、完全なる自由が認められているわけではありません。公共の福祉を軸に制限されるケースも少なからずあります。

 

 

薬局距離制限事件とは

公務員試験の範囲で特に問われやすいのが薬局距離制限事件です。消極的目的規制が争われた事例ですが、内容がボリューミーで混乱する受験者も多いでしょう。

事件の概要と結論を具体的に解説するので、勉強の参考にしてください。

薬局の開設の許可制はOK

ここでは、2つの観点を押さえなければなりません。

  • 薬局の開設が許可制である
  • 薬局の適正配置規制

薬局の解説にかかる規制は、「薬事法」という法律に定められていました。薬局の開設が許可制であることについては、最高裁も合理的な措置だと認めています。

そのため許可制自体は憲法に違反しません。しかし、問題はここからです。

知事が不許可処分を出した理由は、薬局の適正配置規制が問題視されたためでした。

薬局を開設するには、地域ごとに定められている配置基準をクリアする必要がありました。薬局があちこちに設置されると、競争の激しさから経営が乱れる恐れもあるためです。

薬事法の適正配置規制には、以下の期待が寄せられていました。

  • 不良品の薬の供給を防止
  • 過疎地域にも薬局が設置される

ただし最高裁判所は、適正配置規制が本当に妥当なのかと疑問を抱いたわけです。

適正配置規制が「違憲」とされた

最高裁は、「別に経営乱れるとか、不良品の薬が作られるとか配置基準は関係ないのでは?」と考えました。

過疎地域に薬局作られるメリットにも、「他に方法はいくらでもある」と結論を出します。最終的には、以下のように判旨しました。

  • 許可制自体はOK(合憲)
  • 適正配置規制はアウト(違憲)

ちなみに、公務員試験に出題される「職業活動の自由」で違憲判決が下されたものは薬局距離制限事件のみと捉えて問題ありません。

ほかの判例は大体合憲であるため、上手く整理できると思います。

 

 

職業活動の自由に関するその他判例

薬局距離制限事件と併せて覚えておきたい判例が3つあります。

  • 小売市場距離制限事件
  • 西陣ネクタイ訴訟
  • 白タク事件
  • 酒類販売免許制事件

なお公務員試験で細かく問われるのは珍しいですが、ここに挙げた全てが「明白性の原則」に当てはまるわけではありません

特に白タク事件や酒類販売免許制事件は、判例の文章でも「明白性の原則」に触れていないのがポイントです。

小売市場距離制限事件

商売の世界では、小売商業特別調整特別措置法によって小売市場の開設方法が決められています。法律名も漢字だらけで非常に読みづらいと感じるかもしれません。

ある方がこの法律に違反し、小売市場の開設や経営の許可が下りませんでした。この処置に対し、小売商業特別調整特別措置法は憲法に違反すると訴えを起こします。

しかし、最高裁判所は合憲(適正な法律である)と判断しました。

西陣ネクタイ訴訟

この事件の背景には国の政策があります。国は国産の生糸生産を目的とし、外国からの輸入を制限しました。

織物を作っている業者は材料となる生糸が安価で買えなくなり、損害を受けたと賠償請求訴訟を起こします。

最高裁は今回の措置を判断するにあたり、「著しく不合理であることの明白な場合に限って」違憲であると考えました。

そして、輸入制限は上記の条件にはあたらない(合憲)としてと判断します。

白タク事件

道路運送法の規定により、第二種運転免許を持たない人はタクシー業を営んではいけません。一方でこの規定が職業活動の自由に反するとして、訴えられたケースがあります。

最高裁判所は、道路運送法は憲法22条1項に違反しない(合憲)と判旨しました。無免許でのタクシー業が広まるのは、公共の福祉としてよろしくないからです。

酒類販売免許制事件

お酒を販売するときは、酒税法による免許を貰わなければなりません。しかし「経営の基礎が薄弱」と言われた人物が、この法律は憲法22条1項に違反すると訴えを起こします。

しかし最高裁判例は酒税法は合憲であると判旨しました。酒税は国家財政を支える税金の一種であり、政策的な裁量の範囲を逸脱しなければ不合理といえないためです。

 

 

まとめ

今回は職業活動の自由を中心に、以下の判例について紹介しました。

  • 薬局距離制限事件(配置規制は違憲)
  • 小売市場距離制限事件(合憲)
  • 西陣ネクタイ訴訟(合憲)
  • 白タク事件(合憲)
  • 酒類販売免許事件(合憲)

全ての判例が重要なので、絶対に押さえてください。

その他の事件も有名なものがありますが、薬局距離制限事件以外はほぼ全てが合憲です。公務員試験は覚える内容が多いので、自分自身でも理解しやすい方法を見つけましょう。