どーも、やまとのです!公務員試験対策かつ憲法の勉強をしていきましょう!
前回は集会・結社の自由について解説しました。
本日は職業活動の自由にかかる判例を説明した後に、移転の自由も少し深くみていきます。
- 薬局距離制限事件を押さえる
- 外国人と移転の自由を捉える
これらの内容が出題されても、問題に解けるよう対策しましょう。
今回の範囲は公務員試験のみならず、司法試験用のテキストにもわかりやすく解説されています。
より具体的な内容を知りたい方は、購入を検討してみましょう。もちろん、公務員試験に受かる上では上のテキストのみで構いません。
個人的に勉強したい方は、双方の購入を考えてみてください。
職業活動の自由の基本
では、職業活動の自由の基本を説明します。具体的な内容までは分からない方もいるはずです。しっかりと条文に何が書かれているかを押さえましょう。
憲法22条の内容
職業活動の自由は憲法22条に保障されています。ただ、憲法22条は職業活動だけでなく、居住や移転・移住についても定められた条文です。
憲法22条を引用してみました。まずは、こちらをご覧ください。
第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。引用:e-GOV法令検索
この規定があるからこそ我々は自由に住所を決めて国内外に引っ越すことができ、職業も自由に選べます。
僕はフリーランサーですが、そういう生き方ができるのも憲法22条のおかげです。今はなかなか海外に行けない世の中ですが、この条文がある限り渡航も自由に行えます。
消極的規制と積極的規制
少し難しい内容ではあるものの、憲法22条には2つの規制方法があります。
- 消極的規制
- 積極的規制
消極的規制は警察的規制ともいわれ、危害から公共の安全や社会秩序を守るために採られる規制です。(例:薬局距離制限事件)
他の緩やかな規制では、法律の目的が成し遂げられないときにおける必要かつ合理的な措置です。
一方で積極的規制は政策的規制と言い換えられ、社会経済を良くするための規制が該当します。(例:小売市場距離制限事件)
基本的には立法府の裁量を尊重して是非が問われます。
職業活動の自由の判例
憲法22条は、自由に職業を選んでいけるように規定されたものです。
会社に勤めるだけではなく、今の社会では次のような働き方も想定されています。
- 起業
- フリーランス
- ユーチューバー
などとありとあらゆる職業活動から我々は生き方を選べます。ちなみに、営業に関しても原則自由とされている点が特徴です。(営業の自由)
とはいえ、完全なる自由が認められているわけではありません。公共の福祉を軸に制限されるケースも少なからずあります。
今回紹介する職業活動の自由に関する判例は以下の3点です。
- 薬局距離制限事件
- 小売市場距離制限事件
- 西陣ネクタイ訴訟
公務員試験では、いずれも出題される可能性があるため結論を優先的に覚えましょう。
薬局距離制限事件
薬局距離制限事件は薬局を開設しようとした方が申請を出したところ、薬局開設制限規定のために不許可処分が出されたことで起こります。
薬局の開設の許可制自体は合理的
ここでは、2つの観点をチェックしなければなりません。
- 薬局の開設が許可制である
- 薬局の適正配置規制
薬局の解説にかかる規制は薬事法という法律に定められていました。薬局の開設が許可制であることについては、最高裁も合理的な措置だと認めています。
許可制自体は憲法に違反しません。しかし、ここからが重要です。
知事が不許可処分を出した理由は、薬局の適正配置規制が問題視されたためでした。
薬局を開設するには、地域ごとに定められている配置基準をクリアする必要がありました。薬局があちこちに設置されると競争の激しさから経営が乱れる恐れもあるためです。
薬事法の適正配置規制には、以下の期待が寄せられていました。
- 不良品の薬の供給を防止
- 過疎地域にも薬局が設置される
この規制に対して、最高裁は疑問を抱きます。
最高裁は配置規制を違憲と見た
最高裁は、「別に経営乱れるとか、不良品の薬が作られるとか配置基準は関係ないのでは?」と考えました。
過疎地域に薬局作られるメリットにも、「他に方法はいくらでもある」と結論を出します。
最終的には、以下のように判旨しました。
- 許可制自体はOK(合憲)
- 適正配置規制はアウト(違憲)
薬局距離制限事件の違憲審査には、国民の安全や生命を軸に厳格的な基準で判断する『消極的・警察的規制』が用いられています。
ちなみに、公務員試験に出題される「職業活動の自由」で違憲判決が下されたものは薬局距離制限事件のみと捉えて問題ありません。
ほかの判例は大体合憲であるため、上手く整理できると思います。
小売市場距離制限事件
商売の世界では、小売商業特別調整特別措置法によって小売市場の開設方法が決められています。法律名も漢字だらけで非常に読みづらいと感じるかもしれません。
ある方がこの法律に違反し、小売市場の開設や経営の許可が下りませんでした。この処置に対し、小売商業特別調整特別措置法は憲法に違反すると訴えを起こします。
しかし、最高裁判所は合憲(適正な法律である)と判断しました。
判例で用いた考え方は、薬局距離制限事件とは違い『積極的・政策的規制』です。結論を出す際には、基準のひとつである「明白の原則」を設けます。
法律を作る立法府に裁量を認める原則であり、この基準で違憲判決した例は今のところありません。
西陣ネクタイ訴訟
この事件の背景には国の政策があります。国は国産の生糸生産を目的とし、外国からの輸入を制限しました。
織物を作っている業者は材料となる生糸が安価で買えなくなり、損害を受けたと賠償請求訴訟を起こします。
最高裁は今回の措置を判断するにあたり、「著しく不合理であることの明白な場合に限って」違憲であると考えました。
そして、輸入制限は上記の条件にはあたらない(合憲)としてと判断します。
移転の自由について
次に、移転の自由について解説しましょう。上述したとおり、この自由も憲法22条に定められています。
帆足計(ほあしけい)事件
移転の自由において有名な事件に、帆足計事件があります。帆足計とは、大分県出身の官僚(人名)のことです。
当該人物は、ソ連(現ロシア)で開催された会議に出席するため旅券の発行を申請しました。
ただし、外務大臣は旅券法に反するとして申請を拒否します。結局、帆足計さんは会議に参加なかったことから国家賠償請求訴訟をしました。
裁判所は、旅券法の規定が「公共の福祉」にとって合理的な制限を定めているものと判断します。つまり、申請を拒否しても問題ないと考えました。
憲法22条2項は外国へ一時旅行する自由も保障しています。こちらも公務員試験で出題されやすいため、しっかりと押さえましょう。
移転の自由と外国人との関係
移転の自由によって、我々は国籍を離脱することも可能です。しかし、無国籍になることまで認められるわけではありません。
ここで、この憲法22条2項は外国人にも保障されるかが問題となります。
昭和32年12月25日の判例では、外国人に限って保障しない理由はないと判旨しました。
ただし、森川キャサリーン事件では憲法上在留する外国人に『外国へ一時旅行する自由は保障されていない』と述べています。(下記の記事でも別の視点から解説しています。)
このあたりは混乱を招きやすいものの、結論部分からしっかりと覚えるようトレーニングしてください。
まとめ
今回は職業活動の自由をテーマに見ていきました。
- 薬局距離制限事件
(配置規制は違憲) - 小売市場距離制限事件(合憲)
- 西陣ネクタイ訴訟(合憲)
全ての判例が重要なので、絶対に押さえてください。
また、その他の事件も有名なものがありますが、薬局距離制限事件の項目でもいった通り、ほぼ全てが合憲です。
さらに外国人と移転の自由についても、出題される可能性は十分あります。必ず正解できるよう、勉強をしっかりと進めましょう。