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法の下の平等に関する判例|公務員試験や行政書士試験向けの解説

公務員試験や行政書士試験では、法の下の平等に関する判例が数多く出題されます。判例の問題が出てきたら、まず最初に結論部分が当たっているかを確認してください。

しかし結論部分が合っていても、結論を導くまでの道筋が誤っていることもあります。どのようにして結論が導かれたかまでを、この記事では押さえるとよいでしょう。

 

法の下の平等の判例

※画像はイメージです

ここでは、「法の下の平等」における有名な判例を紹介します。全て出題される可能性が高いため、内容と結論部分を必ず押さえてください。

ここでは、特に出題されそうな基本的な内容を取り上げるので必ず頭に入れましょう。法の下の平等における基本的な知識から勉強したい方は、以下の記事を読んでみてください。

尊属殺重罰規定違憲判決

こちらは家庭内で性的暴力を受けていた娘が、父親を殺害してしまった事件です。

親は一般的に「尊属」と位置付けられますが、昔の刑法では尊属を殺害したら「死刑か無期懲役」の2択しかありませんでした。

確かに尊属への殺害に対し、厳しめの罰を設けるのは理にかなっているかもしれません。最高裁判例でも「高度の社会的道義的非難」を受けさせるべく、刑法に反映させても不合理ではないとしました。

一方で最高裁は区別を付けるまではいいものの、「死刑か無期懲役」に限るのはやりすぎと違憲判決(憲法に反する法律)と判旨しました。それから刑法は改正されるようになります。

殺人には変わりないため、もちろんやってはいけない行為です。ただ、世の中には一定数「毒親」に悩まされる子どももいます。

私が知っている事件でも毒親が原因となっているケースはいくつかあるため、殺人をする前のケアが重要だなと日々思います。

大阪市売春取締条例事件

この事件は売春にかかる条例の内容が地域ごとに異なるのはおかしいと争われた事例です。

憲法では、地方自治体が憲法や法律に反しない程度であれば、自由に条例を作成してもよいと認めています。こちらは地域ごとに内容が異なっていても、許容している趣旨です。

最高裁判所もこうした特性を考慮し、大阪市売春取締条例は違憲とはいえないと判断しました。

サラリーマン税金訴訟事件

サラリーマン税金訴訟事件は、大学生の受験生からすると理解するのは難しいかもしれません(103万円の範囲内で働く人が多いため)。

我々はお金を稼いだらその分「所得税」として税金を納めなければなりません。所得税にもさまざまな種類がありますが、「仕事」の観点でみると大きく2つに分かれます。

  • 事業所得(主に個人事業主)
  • 給与所得(主にサラリーマン)

ただし、かつては旧所得税法のこれらの職業における対応が差別的だと訴訟が起こされました。

主な争点は、必要経費(交通費等)を税金から控除できるか否かです。事業所得者には必要経費の特別控除が認められていたものの、給与所得者には認められていませんでした。

この事例において最高裁判例は、旧所得税法の目的が正当であって著しく不合理な点が明らかでなければ憲法14条に違反しないとしました。専門的かつ技術的な判断に委ねる以外ないとして、裁量を認めたわけです。

堀木訴訟

堀木訴訟は、自治体から支給される児童扶養手当について争われた事件です。児童扶養手当とは、ひとり親に対して支給される助成金を指します。

児童扶養手当の特徴は、障害年金や遺族年金をもらっている場合には全額を受け取れない点です。今では差額分が支給されますが、堀木訴訟が起こされた当時は併給自体が禁止でした。

堀木訴訟では「障害年金受給者か否かで手当て対象者の判別をつけるのはおかしい」と争われます。しかし最高裁判例では、不合理な差別ではないと結論を出しました。

児童扶養手当とその他手当を併給させるかどうかは、立法の裁量に委ねられるためです。

日産自動車事件

事件について争われていた頃の日産自動車は、男女ごとに定年年齢が違っていたようです。具体的には「男性60歳」「女性55歳」に設定されていました。この定年年齢の設定が、差別にあたるのではと訴訟に発展します。

最高裁判例は、男女で定年年齢が異なるのが民法90条に違反するとしました。

女性の再婚期間禁止

2024年4月1日の改正までは、民法第733条に女性の再婚禁止期間(100日)が定められていました。平成27年、ある女性がこの規定が憲法に反するのではと訴えを起こします。

平成7年にも同様の争いがあり、この頃は「父子関係の紛争の発生を未然に防ぐ」という観点で賠償請求を認めていませんでした。しかし再婚の場合に限り、100日の禁止期間を設けるのは不合理な制約と考えが改められます。

したがって訴訟当時の段階で、法の下の平等および両性の平等に反するとしました。こ当該判例や現代の嫡出推定規定の関係もあり、2024年4月1日以降は民法第733条が廃止されました。

夫婦同氏性の合憲性

民法750条に定められている夫婦同氏性においても、最高裁で合憲性が争われました。

最高裁では、氏名は人格権の内容を構成すると考えています。しかし「氏の変更」に焦点を当てて、人格権を侵害していると判断するのはふさわしくないと判旨しました。

加えて「氏を変更されない自由」は、人格権の内容の一つとはいえないとします。

世間的には、男性の氏を選択する夫婦が多いでしょう。ただしこれ自体は、民法の規定から直ちに結びつかれるものではないと判断しました。

たとえ男性の氏が多くとも、法の下の平等には反しないと判旨されます。なお私は婿養子に入ったため、世間的に見ると少し珍しいのかもしれません。

選挙に関する判例

選挙に関する判例では、一票の格差や議員定数不均衡の問題があります。ただしこれらは判例も多く、この記事でまとめるのは少々難しいです。

選挙の判例につきましては、以下の記事で詳しく説明しています。こちらも併せて参考にしてください。

 

非嫡出子の相続分規定

※画像はイメージです

最後に「非嫡出子の相続分規定」の判例だけまとめてみましょう。こちらは、民法の相続にかかる規定で生じた問題です。

嫡出子・非嫡出子の定義

民法上の子ども(実子)は、大きく分けて2つの種類があります。

  定義
嫡出子 法律婚の男女から生まれた子
非嫡出子 婚姻関係にない男女から生まれた子

民法には相続の規定もありますが、以前までは嫡出子か非嫡出子かで相続分が異なっていました。

非嫡出子の場合、嫡出子の1/2(2分の1)しか相続が認められていなかったのです。

仮に兄が嫡出子で弟が非嫡出子であれば、弟は兄の半分しか相続が貰えないこととなります。この規定が法の下の平等に反すると、過去にも何度か争いがありました。

平成7年の判例

平成7年時点ではこの規定が著しく非合理とはいえないとして、棄却されてしまいました。平成7年の判例において、焦点が当てられたのはあくまで相続の手続きです。

法定相続分は2分の1になったとしても、遺産分割協議で相続分の調整はできます。そのため手続き上は、法律関係に影響を及ぼさないと判断されました。

平成25年度の判例

平成7年度の判例にメスを入れたのが、平成25年度の判例です。

これまでは憲法に違反しないと判断されましたが、平成25年の判例では違憲判決を出しました。理由は子ども自身では、非嫡出子という身分を変えられないためです。

古い問題集を使っていると、こうした判例の変更に気がづかなくなる可能性も高まります。下記の問題集も使いながら、いつでも情報をアップデートできるようにしてください。

 

 

法の下の平等の判例まとめ

今回は、法の下の平等をテーマにあらゆる判例を紹介しました。まずは、法の下の平等の裁判の基準をしっかりと押さえてください。裁判の基準を把握できたら、さまざまな判例の結論を覚えましょう。

判例 違憲か合憲か
尊属殺重罰規定違憲判決 違憲
大阪市売春取締条例事件 合憲
サラリーマン税金訴訟事件 合憲
堀木訴訟 合憲
日産自動車事件 違憲
女性の再婚期間禁止 違憲
夫婦同氏性の合憲性 合憲
非嫡出子の相続分規定 違憲
※平成25年度判例

ただし、判例は古くなるケースもあります。過去のものを使うのではなく、必ずアップデートした参考書を購入してください。