公務員試験や行政書士試験の中でも、民衆訴訟と機関訴訟の内容が問われることもあります。これらは終盤のほうに習うため、勉強が追いつかなくなる人もいるでしょう。
しかし民衆訴訟と機関訴訟については、抗告訴訟と比べてそこまで複雑ではありません。この記事では受験生に向けて、特に押さえてほしいポイントを解説しましょう。
主観訴訟と客観訴訟
まず行政事件訴訟法において、押さえてほしいのが主観訴訟と客観訴訟の違いです。それぞれの目的について、リストで簡単に整理してみました。
- 主観訴訟:個人の権利を争う
- 客観訴訟:社会の法秩序を守る
主観訴訟は、あくまで自分の法律上の利益を守るための争いです。そのため「法律上の利益を有する」ことが、一般的な要件となります。
一方で客観訴訟は、法秩序を守るための争いとされています。要するに行政行為全般の是正を求める争いと考えるとわかりやすいでしょう。
公務員試験でも比較的問われる可能性が高いので、制度に目を通しておく必要があります。主観訴訟に関しては、以下の記事を参考にしてください。
民衆訴訟の仕組み・具体例
民衆訴訟とは、行政(国や自治体)が法規に適合しない行為をした場合、その是正を求める訴訟です。訴えを提起できる者は、別途法律で定められます。
民衆訴訟の具体例として挙げられるのが、次の2点です。
- 住民訴訟
- 選挙や当選の効力に関する訴訟
行政書士試験では、住民訴訟の制度も出題範囲となっています。民衆訴訟と併せて勉強するとよいでしょう。
機関訴訟の仕組み・具体例
機関訴訟とは国や自治体等の機関同士で、権限の存否や行使について争う訴えです。民衆訴訟は「機関vs住民」ですが、機関訴訟は「機関vs機関」という違いがあります。
したがって住民の立場からすれば、機関訴訟に直接関与することはありません。しかし社会の法秩序を守る観点では、私たちの生活においても重要な訴えといえます。
機関訴訟の主な例として挙げられるのが、以下の訴訟です。
- 地方議会の議決、選挙に関する訴訟
- 国の関与について、自治体が取消しを求める訴訟
- 職務執行命令に関する訴訟
これらの具体例も併せて押さえておけば、問題なく試験にも対応できるでしょう。
主観訴訟からの準用
客観訴訟は主観訴訟とは区別されますが、全くもって無関係な制度ではありません。取消訴訟と無効等確認訴訟、当事者訴訟と内容が合致すればこれらの規定が準用されます。
基本的にほとんどの規定が準用されますが、中には準用されない規定もいくつかあります。ここでは「準用されない規定」に焦点を当てて解説しましょう。
取消訴訟で準用されない規定
取消訴訟で準用されない規定として挙げられるのが、原告適格です。民衆訴訟と機関訴訟は、訴えを提起できる人物が法律等で定められています。
原告適格の規定を準用すると、法律上の利益がある人は全員が訴えを提起できてしまいます。そのため法律上の利益がない違法を理由とする訴訟提起(10条1項)も準用されません。
無効等確認訴訟で準用されない規定
無効等確認訴訟で準用されない規定も、基本的には原告適格に関するものです。無効等確認訴訟の原告適格は、次のように定められています。
- 損害を受ける恐れのある者
- 法律上の利益を有する者
こちらも取消訴訟のケースと同様に、民衆訴訟や機関訴訟に適合しなくなるので準用が認められていません。
当事者訴訟で準用されない規定
当事者訴訟の規定で準用されないのは、行政庁への通知と出訴期間が挙げられます。
当事者訴訟の場合、訴えが提起されたら裁判所は行政庁に対して通知しなければなりません。しかし民衆訴訟や機関訴訟については、こうした手続きが省かれます。
また当事者訴訟の原告適格は、法令で別に定めるものとされています。こちらも民衆訴訟や機関訴訟に準用されるわけではなく、お互いに別のルールを採用しています。
民衆訴訟や機関訴訟のまとめ
民衆訴訟と機関訴訟は、どちらも客観訴訟に位置づけられる訴えです。ただし民衆訴訟は「機関と住民の争い」、機関訴訟は「機関同士の争い」といった違いがあります。
両者の訴訟について勉強するには、それぞれの具体例を押さえることがコツです。公務員試験での出題方法はワンパターンなので、定期的に見直してみるとよいでしょう。