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条例・規則・法律の違い|横出し条例と上乗せ条例の具体例

行政法の仕組みを知るには、条例・規則・法律の違いをしっかりと理解しなければなりません。条例に関する内容も、行政書士試験で狙われやすい範囲の一つです。

この記事では、行政書士試験に一発合格した筆者が、条例・規則・法律の違いをわかりやすく解説します。行政書士試験を受験される方は、ぜひ参考にしてください。

 

条例・規則・法律の違い

条例とは、自治体によって定められるルール(法令)のことです。規則や法律と混同しやすいので、それぞれを区別して覚えないといけません。具体的な違いについて解説します。

条例と規則の違い

条例も規則も、地方自治体のルールであることには変わりありません。しかし制定方法と規定できる罰則の種類に違いがあります

条例を制定するのは、地方議会です。地方議員による議会で定められるほか、住民の直接請求により制定・改廃されるケースもあります。

一方で規則を定めるのは、地方公共団体の長です。条例との違いとして、規則は地方公共団体の長が一人で定められることが挙げられます。

次に罰則ですが、条例と規則では以下の範囲まで定められます。

法令の種類 罰則の種類
条例 ・2年以下の懲役または禁錮
・100万円以下の罰金
・拘留や科料、没収
・5万円以下の過料
規則 ・5万円以下の過料

条例と規則の罰則の違いは、刑罰を科すことができるかどうかです。条例の場合、懲役や禁錮といった処置も可能ですが、規則は過料しか適用されません。

過料は、あくまで行政によるペナルティです。たとえ過料に科せられたとしても、前科がつくわけではありません。このように法律を勉強するうえでは、罰則の種類も区別できるようにしてください。

条例と法律の違い

続いて、条例と法律の違いについて説明します。条例と法律の違いを一言でまとめると、国が制定するか、地方自治体が制定するかです。

法律は、国会によって制定されます。衆議院がまずは可決を行い、仮に参議院が否決あるいは議決しなかったときは、任意で両院協議会を開くことも可能です。

最後に衆議院で出席議員の3分の2が可決すれば、法律案が議決となります。このように法律が制定されるには、衆議院と参議院といった2つの組織が関わるのを押さえておきましょう。法律の制定については、以下の記事でも詳しく解説しています。

 

横出し条例と上乗せ条例

条例の内容を勉強するうえで、押さえてほしいワードが横出し条例と上乗せ条例です。それぞれの意味が混同しやすいので、ぜひ区別して覚えてください。

横出し条例の定義と具体例

横出し条例とは、国の法令に定められていない分野を規制している条例のことです。法律で問題視していないのに、「横から口出しした」みたいな感覚で覚えるとよいでしょう。

たとえば国の法令では、空き地で焚き火するのは拘留や科料の対象です。ただし花火に関しては、街中で打ち上げ花火とかしない限りは、法律では特に禁じていません。ここで条例において、すべての花火を禁止したとしましょう。

国の法令はあくまで焚き火した人に罰則を科しますが、対象にしていない花火を条例で規制しているので、横出し条例に含まれます。横出し条例は現在も採用されており、環境問題で活用されるのが特徴です。

上乗せ条例の定義と具体例

上乗せ条例とは、法律よりも重い罰則を科すことです。刑期や罰金の額を、さらに乗せたという感覚で筆者は覚えています。

たとえば道端でポイ捨てする行為は、軽犯罪法に触れるので拘留または科料の対象です。しかし趣旨・目的・内容・効果を比較して、特に矛盾がないときは罰金10万円を科すといったルールも認められます。上乗せ条例に関しても、横出し条例と同じく環境分野にて採用されます。

 

 

条例に関する有名判例

行政書士試験では、条例について争われた判例として主に2つ押さえる必要があります。ここでは有名判例である、徳島市公安条例事件と奈良県ため池条例事件を紹介します。

徳島市公安条例事件

徳島市公安条例事件とは、集団行進に参加していた被告人たちが、交通秩序を乱したとして起訴された事例です。法律よりも条例のほうが、違反の罰則が重くなっていることに対して争われました。まさに上乗せ条例の妥当性が争点の一つとなった事件です。

結論を言うと、条例は合憲となりました。判旨は条例が国の法令に違反するかを判断するにあたり、単に事項や文言を対比するだけではなく、趣旨・目的・内容・効果を比較する必要があるとします。

そのうえで矛盾抵触が見られたら、はじめて違憲と扱われます。矛盾抵触は、「食い違い」を意味するので、併せて覚えてください。

奈良県ため池条例事件

奈良県ため池条例事件とは、条例で財産権に制限をかける行為の違法性が争われた事件です。奈良県ではため池の決壊を防止すべく、堤とう(土手)に農作物を植えるのを条例で禁じました。しかし被告人は、条例が制定されたあとも耕作を続けてしまいます。

最高裁は、財産権に制限をかけた条例も合憲とみなしました。そもそも堤とうを使用する行為は、憲法や民法で保障された財産権にはあたらないためです。加えて損失補償も必要ないとしました。

この事例について「法律で規定するべきでは」という意見もありますが、法律で定めるのが困難となるケースもあります。結局のところ、条例で定めたほうが適切だと結論付けました。

 

条例・規則・法律のまとめ

最後に条例・規則・法律の違いについて表で整理しましょう。

法令の種類 特徴
条例 ・地方自治体が定めた法令
・刑罰を科すことができる
規則 ・地方自治体が定めた法令
・刑罰を科すことはできない(過料のみ)
法律 ・国が定めた法令

条例は原則として法律に合わせる必要がありますが、横出し条例や上乗せ条例も認められています。仮に法律より重い刑罰を科しても、必ず否定されるわけではありません。