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根抵当権とは?抵当権との違いについてわかりやすく解説

担保物件の内容でも、根抵当権は比較的理解するのが難しい分野として知られています。行政書士試験や法学検定試験を受験される人の中にも、抵当権との違いがわからない人もいるでしょう。

この記事では、根抵当権と抵当権の違いを詳しく解説します。法律を使った試験を受験される人は、ぜひ参考にしてください。

 

根抵当権とは

根抵当権の仕組みについてわかりやすく説明している図

根抵当権とは、将来にわたり何度も抵当権の発生と消滅を繰り返すケースにおいて、まとめて設定できる担保物件のことです。

例えば金融機関が企業の事業に対し、複数回にわたって融資するとします。仮に企業が返済できなくなった場合に備え、不動産に抵当権を設定しました。

しかし事業資金が複数回支払われる中、何度も抵当権を繰り返し設定していたら手続きも大変です。そこで500万円という上限額(極度額)を設定すれば、この金額の範囲内で担保を継続できます。

 

 

根抵当権に関する重要用語

根抵当権を勉強するうえでは、押さえておきたい重要用語がいくつかあります。試験で混乱しないように、用語とその意味を詳しく紹介しましょう。

極度額

根抵当権で押さえなければならないのが、極度額です。根抵当権は将来に発生する債権が対象となるため、上限額を定めないと範囲が無限大に広がってしまいます。

また具体的な数字が示されていないと、いつまで返済が続くのかと債務者も不安に感じるでしょう。そこで極度額を定め、範囲をある程度把握できるようにします。

被担保債権

被担保債権とは、担保を設定するきっかけとなった債権のことです。企業が事業融資を借りた事例でいえば、融資(借りたお金)が被担保債権となります。

主な被担保債権として挙げられるのが、元本・利息・その他の定期金などです。信用金庫取引による債権を被担保債権とする場合、根抵当債務者に対する保証債務も範囲に含まれます。

元本確定

根抵当権で重要となるタイミングが、元本の確定時期です。何度も被担保債権が発生する根抵当権ですが、仮に根抵当権者や根抵当権設定者が亡くなると2人の間の取引は終了します。

つまり根抵当権を続けるのが難しくなった場合、元本を確定させて通常の抵当権に戻す必要があるわけです。確定事由については、民法に定められています。

  • 抵当権者が差し押さえを申し立てた
  • 競売手続きの開始や滞納処分の差し押さえを知ったときから2週間以内
  • 債務者または根抵当権設定者の破産手続開始の決定など

ほかにも根抵当権の設定から3年を経過したら、根抵当権設定者は元本確定の請求が可能です(請求から2週間後に確定)。一方で根抵当権者は、いつでも請求が認められます。

 

根抵当権の変更

※画像はイメージです

根抵当権は内容を変更したり、処分したりするのも条件次第では可能です。ここでも特に狙われる可能性のある内容を紹介しましょう。

被担保債権の範囲・債務者

被担保債権の範囲と債務者の変更は、元本確定前のみに認められます。元本の確定後にも認めてしまうと、根抵当権の内容が大きく変わってしまうためです。

元本の確定前は、債権の内容が具体的に決まっているわけではありません。したがってこの段階では、これらの内容も変更して問題ないとされています。

被担保債権の範囲と債務者を変更する際には、利害関係人の承諾は必要ありません。後順位抵当権者がいても、極度額は変わらないので不利益が生じないからです。

極度額

極度額は、元本確定前だけではなく元本確定後でも変更が可能です。すでに元本が確定しているにもかかわらず、なぜ極度額を変更できるか疑問に感じる人もいるでしょう。

その理由は、利息や遅延損害金などによって金額が変わるケースもあるためです。弁済が全然なされず、利息が増えていったとしても極度額が固定されたら、根抵当権者はその限度でしか回収できません。

これから起こりうる、さまざまな事情があらかじめ想定されているわけです。

しかし勝手に極度額を変更されると、利害関係人(後順位抵当権者や転抵当権者)に不利益が生じてしまいます

増額すれば完済までの期間が延びる分、後順位抵当権者に権利が渡るのが遅れます。一方で減額されたら、転抵当権者の利益が小さくなってしまうでしょう。

したがって、極度額を変更するには利害関係人の承諾を得なければなりません。

元本確定期日の変更

根抵当権を設定する中で、元本確定期日を定めることもできます。期日の変更に関しても、元本確定前しか認められません。そもそも元本確定したあとは、期日を変更する意味がないためです。

また極度額とは異なり、期日が変わっても利害関係人に著しい支障が出るとは考えられません。そのため利害関係人の承諾は不要とされています。

 

 

抵当権との違い

根抵当権の性質を押さえたら、次に抵当権との違いを詳しくまとめます。混同しやすいポイントとなるので、それぞれを上手く区別できるよう整理してください。

被担保債権の範囲

まずは優先的弁済効力が生じる被担保債権の範囲について紹介します。

抵当権=最後の2年分のみ

抵当権の利息債権またはその他定期金であれば、優先的弁済効力は満期となった最後の2年分のみに限定されます。制限がある理由は、後順位抵当権者や一般債権者の権利も守るためです。

ただし債務者自身は、元本と最後の2年分の利息を弁済したところで、抵当権の抹消を請求できません。制限はあくまで後順位抵当権者等の保護が目的であるので、債務者自身は債務の全額を弁済することが必要です。

根抵当権=2年に限らない

根抵当権は、元本確定前・確定後に限らず優先的弁済効力は2年分に限定されません。民法上では「継続的取引」「一定の種類の取引」が限度とされています。

一方で元本確定後にできる極度額限度額請求は、現存する債務額と以後2年間に生ずる利息等です。行政書士試験では、特にこの辺りが引っかけ問題として出やすいので注意しましょう。

一部譲渡や付従性・随伴性

抵当権や根抵当権を、一部だけ譲渡できるかどうかを解説します。併せて付従性および随伴性の関係についてもチェックしましょう。

付従性とは、債権の発生や消滅により担保物件の有無も左右される性質です。随伴性は第三者に担保物件が移れば、債権もそのまま移動する状態を指します。

抵当権=一部譲渡不可・付従性等あり

抵当権は、一般的に不可分の債権と考えられています。したがって被担保物権の一部を譲渡したからといって、その比率に基づいて抵当権を分けることはできません。

また抵当権には、付従性と随伴性の双方が認められます。抵当権が消滅すれば担保物件も消え、第三者に担保物件が渡ると抵当権は付いていきます。

根抵当権=元本確定前は抵当権の反対

ここで根抵当権の性質をおさらいしましょう。根抵当権は元本が確定したら、通常の抵当権とほとんど同じ性質を持ちます。そのため元本確定後の根抵当権は一部譲渡ができず、付従性等も認められます。

一方で元本確定前は、まだ債権自体が特定されていません。したがって一部譲渡が可能となり、付従性等が認められないという反対の性質を持つようになります。

 

根抵当権に関するまとめ

この記事では、民法に規定されている根抵当権を紹介しました。根抵当権を勉強するときは、元本の確定前と確定後に分けて性質を覚えるとよいでしょう。

元本確定前は、通常の抵当権と異なるところがいくつかあります。極度額の考え方や性質を押さえれば、実際の試験でもある程度対応できます。