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首班指名選挙とは?仕組みとルールについてわかりやすく解説

公明党が26年続いた連立政権を解消したこともあり、首班指名選挙にさらなる注目が集まっています。しかし首班指名選挙について、仕組みとルールがわからない方も少なからずいるでしょう。

この記事では、首班指名選挙をわかりやすく解説します。昨今の政治が気になる方、政治・経済を詳しく勉強したい方はぜひ参考にしてください。

 

首班指名選挙とは

首班指名選挙とは、簡潔に述べると内閣総理大臣を決める選挙です。2025年10月4日、自民党総裁選で高市早苗氏が女性初の新総裁に任命されました。

しかし総裁はあくまで自民党のリーダーであり、必ずしも内閣総理大臣にそのままなれるわけではありません。内閣総理大臣になるには、首班指名選挙で指名される必要があります

首班指名選挙で投票できるのは、選挙で選ばれた国会議員です。したがって国会議員がどのような動きをとるかが、内閣総理大臣を決めるうえで重要となります。なお自民党の総裁選については、以下の記事でも説明しているので、併せて参考にしてください。

 

首班指名選挙の仕組み

首班指名選挙を大きく分けると、以下の5つの手続きを踏みます。

  1. 議長に通知する
  2. 投開票を行う
  3. 過半数割れたら決選投票へ
  4. 内閣総理大臣を指名する
  5. 内閣総理大臣を任命する

それぞれの詳しい内容について解説していきましょう。

議長に通知する

内閣が総辞職もしくは欠缺の場合、国会法第64条に基づいて衆議院および参議院の議長へ通知します。その後、議長は通知を受けた旨を「本会議」で報告します。

本会議とは、すべての議員が集まって行われる会議のことです。報告が完了したら、直ちに首班指名選挙へ移らないといけません。

2025年の首班指名選挙を行うのであれば、内閣総辞職が理由であるため通知する人は石破茂氏です。ただし2025年10月10日時点では、石破茂氏は内閣総辞職による通知を出したといった報道はありません。

今回の日程について、当初は15日の予定だったものの、20日〜21日あたりとずれ込むようです。自公の連立解消もあり、総裁選終了後から少々日程が空いた状態となっています。

投開票を行う

臨時国会が開かれると、首班指名選挙の投票がスタートします。投票方法は、単記記名投票です。つまり投票用紙には、1人の名前しか書くことができません

投票が終了したら、そのまま開票に移ります。白票や国会議員以外の名前が記載された票については、無効票という扱いになります。

また衆議院の場合は投票用紙に自分(投票者)の氏名も書かなければならず、忘れた場合は同じく無効です。開票の結果、過半数の票を獲得した人が内閣総理大臣に選ばれます。

過半数割れたら決選投票へ

最初の投票で誰も過半数の票を獲得できなかった場合、上位2名だけを残して決戦投票に移ります。この流れについては、自民党総裁選とそこまで大きな違いはありません。決選投票では過半数にいかなくとも、より多くの票を獲得した者が勝利となります。

前回の首班指名選挙においては、約30年ぶりに決選投票まで進みました。今回は決選投票までいかずに指名されるか、2回連続の決選投票までもつれ込むか気になるポイントです。

内閣総理大臣を指名する

開票の結果、過半数の票もしくは決選投票でより多くの票を獲得した者が、議長から内閣総理大臣として指名されます。ただし衆議院と参議院は別々で投票をするため、衆議院がA、参議院がBを選ぶといったケースも考えられます。

両院の意見が異なるとき、憲法第67条より衆議院の優越が働くのが特徴です。内閣総理大臣の指名については、必ず両院協議会を開かないといけません。国会法によれば、両院協議会を求めるのは参議院側と記載されています。

両院協議会でも意見が一致しない、または衆議院が指名の議決をしたあと、10日以内に参議院が議決しないときは衆議院の意見が優先されます。なお国会の休会中は、10日以内には含まれません。

以上から内閣総理大臣の指名は、衆議院から票を得ることが重要です。衆議院の優越については、以下の記事でも詳しく解説しています。

内閣総理大臣を任命する

内閣総理大臣が指名されたら、最後に正式な任命手続きへ移ります。内閣総理大臣の任命権者は、天皇です。

しかし天皇はあくまで日本の象徴であり、自らの考えに基づいて決定する権限はありません。したがって国事行為として、国会の指名に基づいて任命します。ここまでの手続きを踏んで、内閣総理大臣が正式に誕生します。

 

高市早苗氏は首相になれるか

ここで紹介する内容は、あくまで個人的な見解です。なるべく客観的な視点で記載するよう努めていますが、必ずしも正しいわけではないので、あらかじめご了承ください。

自民党新総裁に高市早苗氏が就任したことで、女性初の内閣総理大臣の誕生に期待を寄せる方もいるでしょう。しかし公明党の連立政権解消など、高市早苗氏に反対の立場を採る議員も一定数います。

今回の首班指名選挙において押さえておきたいのが、衆議院における各政党の議席数です*1

  • 自民党:196人
  • 立憲民主党:148人
  • 日本維新の会:35人
  • 国民民主党:27人
  • 公明党:24人
  • れいわ新選組:9人
  • 日本共産党:8人
  • 有志・改革の会:7人
  • 参政党:3人
  • 減税保守こども:2人
  • 無所属:6人

本来は参議院もありますが、とりあえず衆議院だけで考えていきます。高市早苗氏の視点で考えると、今回は公明党の票は望めないため、国民民主党の票がカギを握ります

立憲民主党は国民民主党に接近しているものの、国民民主党側が応じるかどうかは疑問です。政策を優先的に考えるのであれば、高市早苗氏と玉木雄一郎氏の意見は似ているところもあるため、国民民主党からの票を獲得できる可能性はあります

ただし玉木雄一郎氏が立憲民主党の話に応じ、公明党とも本当に寄り添いたいのであれば、さらに事態は複雑になるでしょう。今のところ公明党は斉藤氏を立てると表明していますが、野党の動きには注目が集まります。

あとは無所属の票について、どのくらい獲得できるかもポイント一つです。反対に自民党議員も、全員が高市早苗氏に投票するとは限りません。

とはいえ野党がすべて結託するとも考えにくいため、1回目の投票で過半数取れるかは別として、決選投票も踏まえると高市早苗氏が有利といえます。

 

首班指名選挙のまとめ

首班指名選挙は、主に日本国憲法と国会法、衆議院議員規則、参議院議員規則でルールが規定されています。特に自民党の総裁選と混同しやすいため、ニュースを見るときは注意してください。

首班指名選挙の仕組みを知っておくと、日々の政治に関するニュースも楽しめます。政治は避けられやすいものの、私たちの生活にとって欠かせない要素であるため、自分なりにチェックしておくとよいでしょう。