公務員試験のマクロ経済学で、基本的な内容として出てくるのが三面等価の原則です。
実際の試験では、GDPの計算式を使った問題が数多く出題されます。この記事の内容を読んで、しっかりと正答できるように練習しましょう。
・GDPの計算式と解き方
三面等価の原則とは
三面等価の原則は、GDPの計算式が3つの視点から導き出せるのを示した用語です。
まず、覚えるべき言葉として「国内総生産」があります。
国内総生産はある国に一定期間で生み出された付加価値の総額です。
言い換えるとGDP(Gross Domestic Product)ですね。
「日本国内で」どのくらいの付加価値が生まれたかを指す数値であり、海外で仕事している日本人の利益は基本換算しません。
付加価値の総額は「企業が一定期間に生み出した価値の合計」を指します。
つまり、国内総生産はこの付加価値と必ず等しくなります。
国内総生産は基本的にこのような生産面から求めていきますが、他にも
- 分配面
- 支出面
から求めていくことが可能です。
分配面
企業は生産活動で得た利益を、ただ金庫に入れているわけではありません。
働いてくれた者に給料として渡すほか、政府に税金として納めなければならないですよね?
余った分は「営業余剰」として企業が保管し、今後の活動や会社の運営に使っていきます。
こうして企業の利益はいろいろなところへ分配されていくようになります。
その「分配面」を全て合わせていけば、同じようにGDPを求めることができるのです。
分配面で見たときの公式
式では「雇用者報酬+営業余剰+固定資本減耗+間接税-補助金」と表せます。
それぞれの用語の解説は、以下のとおりです。
- 雇用者報酬(労働者への報酬)
- 営業余剰(会社に残った利益)
- 固定資本減耗(機械や建物の減耗:減価償却費)
- 間接税(消費税など)
- 補助金
このうち固定資本減耗が分かりづらいと思うので、もう少し具体的に説明します。
固定資本減耗とは
固定資本減耗とは、生産活動を行うための機械や建物にかかる費用を表します。
通常、機械や建物といった資本は数年使うものを一括で購入します。仮に10年使う場合、2〜3年目に突入しても費用はすでに払い終わったので支出はありません。
一方でこれらの固定資本は、時間の経過とともに劣化が進みます。8〜9年経過した時点では、新品の状態と比べて生産ペースが落ちるのが普通です。
会計上では、こうした固定資本の特徴を踏まえて一定期間にわたって費用を均等に分けます(減価償却費)。この計算方法が、GDPの計算にも反映されるわけです。
支出面
次に「支出面」から覗いてみましょう。我々は企業が生産した財やサービスを購入することで生活しています。
- 食材
- 電化製品
- 日用品
- コピー用紙
しかし、こういった支出活動をしているのは我々民間人だけではありません。
企業間でも財やサービスを売買することがあります。
閉鎖経済(貿易を考えない)
我々の消費は「民間消費(C)」、企業間の消費は「民間投資(I)」と言われます。(アルファベットも覚えておきましょう)
では、他に消費活動を行うところはないか探してみましょう。
あまりピンと来ないかもしれませんが、政府も時に企業の財やサービスへ消費します。これが「政府支出(G)」です。
このように3つの支出を合わせたものが「GDP=C+I+G」となります。
開放経済(貿易を考える)
しかし、これはあくまで日本国内の支出活動だけで見たケースに過ぎません。
実際の経済活動においては、海外とも「貿易」を行っています。
貿易は「輸出(E)」と「輸入(IM)」がありますが、日本国内にお金が残るのは「輸出(E)」ですね。
貿易も考慮した計算式では「GDP=C+I+G+(E−IM)」が主に使われます。
このようにして理想のマクロ経済学では、三面等価の原則で3つの視点からGDPが求められるのです。
なおGDPの詳しい概念については、以下の記事でも詳しくまとめています。何がGDPに含まれ、何が含まれないかを知りたい方はこちらを参照ください。
練習問題
ここで公務員試験用に、練習問題を2問ほど用意しました。
問1.分配面で見たGDP
雇用者所得 300
営業余剰 90
固定資本減耗 45
直接税 40
間接税 35
社会保障費 30
貯蓄 30
補助金 25
以上の数値を使ってGDPを求める問題です。
①375
②445
③540
まずは、実際に練習問題を解いてみてください。次の行から解き方を説明しましょう。
これは分配面の「雇用者報酬+営業余剰+固定資本減耗+間接税−補助金」の式を使います。
それぞれの数字を当てはめていくと『300+90+45+35−25』になります。
すると答えは②445と出るはずです。
問2.支出面で見たGDP
続いての問題はこちらです。
民間消費 350
民間投資 330
政府支出 250
海外からの要所得 270
海外への要所得 300
海外への輸出 180
海外からの輸入 200
この数値を使って『国内総生産(GDP)』を求める問題です。
※ただし開放経済を想定します。
①880
②900
③910
では、同じく答え合わせをしましょう。
今回は開放経済(貿易のある世界)を想定しているため、支出面の「民間消費+民間投資+政府支出+輸出−輸入」を使います。
数値を当てはめていくと「350+330+250+(180−200)」です。
計算していくと910と求められます。
このように公務員試験等では「不要な数値」が問題に書かれているので、必要な数字のみを計算しましょう。
必ずしも全部の数字を使う必要はありません。
問題文をよく読んで取捨選択してくださいね。
まとめ
今回は『三面等価の原則』ということで、国内総生産(GDP)は3つの観点から求められる旨書いていきました!
特に
- 分配面
- 支出面
の公式は必ず押さえましょう。
さらに試験で問われる際には不要な数字まで書かれていることが多いので、必要に応じて取捨選択するよう心がけてください。