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地方議会の仕組みとは?行政書士試験向けにわかりやすく解説

行政書士試験において、なかなか勉強が追いつかない範囲として地方自治法あります。しかし地方議会の仕組みは、行政法の勉強でなるべく押さえておきたい分野の一つです。

この記事では、地方議会の仕組みや役割について詳しく解説します。行政書士試験や公務員試験を受験される方は、ぜひ参考にしてください。

 

地方議会とは

※画像はイメージです

地方議会とは、各地方自治体に設置されている合議体のことです。国会の地方自治体バージョンと考えてもらうとわかりやすいと思います。

メンバーは地方議員で構成され、住民の選挙によって選ばれます。条例を制定したり、自治体の仕事ぶりや予算の使い方を調査したりするのが主な役割です。

国のトップに内閣総理大臣がいるように、自治体のトップにも「長」が存在します。しかし国は最高機関であり、内閣総理大臣を指名する立場にあります。一方で地方議会と長の関係は対等です。

国の場合、国民の選挙で国会議員を選びますが、内閣総理大臣を直接選ぶわけではありません。自治体では、地方議員も長も住民の選挙で直接選ばれます。

 

地方議会の仕組み

地方議会は、主に地方議員と議長・副議長によって構成されます。ここでは地方議会の仕組みを深堀りすべく、成立する過程について説明しましょう。

地方議員の役割

地方議員は、自治体に住所を置く住民の選挙によって選ばれます。任期は4年となっており、定数は各自治体の条例で自由に定められます。一方で、以下の役職に就いている人はなることができません(兼職禁止)。

  • 衆議院議員
  • 参議院議員
  • 他の自治体の地方議員
  • 自治体の常勤職員・短時間勤務職員

定数の12分の1以上による賛成があれば、議員から議会へ議案の提出が可能です。ただし予算案については、地方議員からの提出が認められません。予算案は長が提出し、地方議会で決定するのが法律上の流れであるためです。

議長や副議長の役割

議会は、地方議員の中から議長と副議長を1人ずつ選びます。

行政書士試験の勉強をするうえで、「長」と「議長」が混同しやすいです。長は都道府県知事や市区町村長といった自治体のトップ、議長は議場の代表なので区別してください。

議長に選ばれた人は、議場の秩序を守るように取り締まらないといけません。事務や話し合いを整理するほか、委員会に出席できる権利も有しています。

一方で副議長の仕事は、議長が事故に遭った、もしくは欠けたときに議場の代表を務めることです。加えて議長の補佐として、間近でサポートする役割も持ちます。議長と副議長は、議会の代表として式典に参加するのも仕事の一つです。

 

地方議会の活動内容

地方議会の種類について簡潔に説明している図

最後に、地方議会の活動内容と権限について紹介します。行政書士試験では、過半数や3分の2といった記載で引っかけ問題が出題されることもあります。数字の問題に引っかからないよう、確実に覚えてください。

地方議会の招集

地方議会には、大きく分けて定例会と臨時会の2種類があります。定例会が開催される回数は、基本的に条例で定められています。臨時会は定例会以外に、緊急の必要性があるときに開催される議会です。

定例会の招集を行うのは長です。議長ではないので、出題されたら引っかけに注意してください。

臨時会を招集するときは、長に対して請求をしなければなりません。請求方法は以下の二通りです。

  • 議会運営委員会から議決を経た議長の請求
  • 4分の1以上の者の請求(議会を経ないで)

議会の招集請求があったら、長は20日間以内に臨時会を招集する必要があります。仮に長が招集しない場合は、議長が臨時会を招集できます。これらは過去問でも出題されたことが多いので、しっかりと目を通しておきましょう。

会期は国会とは異なる

地方議会の定例会は、国会とは異なり150日間にかけて開かれるわけではありません。基本的に3月・6月・9月・12月と、年4回にわたって開催されます

一応、条例の内容次第では会期を通年とすることも可能です。このように国会と地方議会は、ルールが全くもって違います。憲法科目で「国会」の勉強をする際には、これらを区別できるようにしてください。

議事を開いて議決する

地方議会を開くには、議員定数の半分以上が出席しなければなりません。反対に議員定数の半分以上から請求されたら、議長は会議の開催が義務付けられています。

議事を決定するには、出席議員の過半数の賛成を必要とします。賛成と反対の数が同じの場合、最終的な決定権を持つのは議長です。

なかには、特定の事件に関する議案もあります。この事件について話し合うときは、直接関係している議長や議員は参加できません。

会議は原則として公開する

地方議会は、原則として公開しなければなりません。具体的には、次の方法で広く住民に伝えています。

  • テレビや新聞で取り上げる
  • 現場で傍聴する
  • 議事録を公開する

実際に公務員として働いていた頃も、地方議会の様子を職場のテレビで流していました。基本的に仕事が忙しく、じっくりと見ているヒマなんてありませんが。

このように原則公開となっているものの、議長または議員の3人以上が発議し、出席議員の3分の2が賛成したら秘密会の開催も可能です。

 

地方議会が持つ権限

地方議会は自治体の方向性を決める重要な機関であり、幅広い権限を持ちます。覚えやすいように、表でまとめました。

権限 内容
議決 ・条例の制定や改廃
・予算の議決
・決算の認定
・契約の締結
検査や監査 ・書類の検閲
・事務の検査
調査 ・選挙人等への出頭の請求
・証言や記録の提出の請求

とくに議決できる内容は、狙われる可能性も高いといえます。何となくイメージはできると思いますが、地方自治体第96条1項にも目を通してください。

 

地方議会の解散

地方議会は、次の条件を満たしたときに解散となります。

  • 住民の解散請求があり、投票で過半数の同意があった
  • 長の不信任議決により、長が解散した
  • 議員の4分の3が出席、5分の4以上の同意

このように解散するきっかけは、住民だけではなく長や議員にもあります。特に議員の出席数と同意数については、引っかけ問題で出されることもあるため注意が必要です。

 

地方議会に関するまとめ

地方議会の範囲は、数字を使った引っかけ問題が作られる傾向にあります。ここで紹介した数字を表にまとめるため、勉強する際の参考にしてください。

内容 数(割合)
議会への議案提出 議員定数の12分の1
臨時会の招集 議員定数の4分の1以上
地方議会の開催 議員定数の半分以上
議事の決定 出席議員の過半数
秘密会の開催 出席議員の3分の2の賛成
※議長または議員の3人以上が発議
地方議会の解散 ・議員の4分の3の出席
・5分の4以上の同意

ほかにも試験対策をするには、基本的な部分をしっかりと押さえないといけません。テキストや過去問を使いつつ、徹底的に対策をしてくださいね。