表現の自由の中でも、マスメディアとの関係で重視されているのが報道の自由や取材の自由です。
これまでの歴史の中でも、報道の自由や取材の自由を巡る争いが繰り広げられました。
ここでは、博多駅事件を含めてさまざまな判例を紹介します。公務員試験でも問われる可能性があるので、しっかりと内容を押さえましょう。
また表現の自由に関しては、別の記事でまとめています。
上の記事も参考にしつつ、今回の内容を見ていきましょう。
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・博多駅事件の内容
・北海タイムス事件や夕刊和歌山時事事件の内容
博多駅事件
報道の自由を語る上で、博多駅事件を外すことはできませんね。
報道は皆さんもご存知の通り、テレビやインターネットを通して世の中に情報を伝える手段です。
『表現の自由』を最大限に活かした仕事ともいえるでしょう。
現代においてあらゆる問題を抱えている報道ですが、これは今に始まったことではありません。
報道の自由を巡るトラブルは、昭和時代の頃から多く見られていました。
そのうちの1つが博多駅事件です。
博多駅事件の内容
アメリカの軍艦が福岡県の佐世保に寄港したことがあったそうです。(昭和44年頃)
それを知った学生が、博多駅で反対運動に参加しました。
機動隊員が警備に入りますが、その方法が職権濫用にあたるとして学生は告発します。
しかし、検察官は機動隊員の行為を不起訴処分で終わらせたため、学生は福岡地裁に審査を求めました。
裁判所は衝突の映像を確認しようと、テレビ会社にテレビフィルムを送るよう命令しますが…。
報道の自由と取材の自由
テレビ会社側は「その命令は報道の自由を侵害する」として争いました。
結果はどうなったでしょうか?
一応、結論としてはフィルム提出命令はやむを得ないとして最高裁も認めました。ただ、ここで重要なのは結論ではありません。
『報道の自由』と『取材の自由』の立ち位置が押さえるべきポイントです。
まず、最高裁は『報道の自由』もまた憲法21条において保障される旨を提示しました。
だから、表現の自由と同等に扱えば、公共の福祉に反しない限り報道の自由も認められていることになります。
一方で、『取材の自由』はどうかというと
憲法21条で十分尊重されるべきと判旨しました。
一瞬、「うん?」と疑問に感じるかもしれません。
ただ、ここで頭に入れてほしいのが『報道の自由』と『取材の自由』の保障の程度は同等ではないということです。
そして、最高裁はテレビフィルムの提出命令は報道の自由を妨げるものでなく、あくまで将来への取材の自由にかかる制限と判断しました。
「取材の自由はある程度の制約があっても差し支えないよね」と提出命令が認められたのです。
同じようにビデオテープの差押命令が問題となったTBSの事件も、憲法21条に反しないと判断されています。
その他の判例
博多駅事件の事例で報道の自由はひと通り説明できたかと思います。
次は報道の自由にかかるその他の判例を見ていきましょう!
北海タイムス事件
この事件は公判が行われている法廷でカメラマンが写真を撮影して起きた騒動です。
果たして、公判中は写真撮影が認められるのでしょうか?
前回の記事でも書いた通り、裁判は基本的に公開して行います。
先日説明したレペタ訴訟では、公判中にメモを取ってもいいけど事件によっては制約される旨を紹介しました。
では、写真撮影はというとこれに関しては最高裁も顔をしかめます。
なぜなら、刑事訴訟法規則(現行では215条)に「公判廷における写真撮影や録音、放送は裁判所の許可が無ければ認めない」とされているからです。
この規則が憲法に違反しないのを改めて認め、許可もまた裁判所の裁量に委ねられていると示しました。
夕刊和歌山時事事件
この事件を見ていく前に刑法230条の2を触れていきましょう。
刑法230条の2は名誉毀損罪の例外と押さえていればOKです。
いくら名誉毀損にあたる内容を報道しても、それが公共の利益を守る目的であれば適用されません。
この事件は新聞発行者が刑法230条の2に触れるかどうかを争われました。
ここで問題だったのが、指摘した事実が真実であるという証明ができなかったんですね。ただし最高裁はその場合でも、事実を真実と誤信しました。
さらに誤信したことについて、「確実な資料や根拠」に照らして相当の理由があれば名誉毀損は成立しないとしました。
長ったらしいのでまとめると、
- 確実な資料や根拠があれば誤信しても名誉毀損は成立しない
- 真実を証明する必要はない
となります。
石井記者事件
税務署の職員が収賄事件を起こした際にその情報が新聞社の手違いで漏れてしまいました。
証人として石井記者が召喚されますが、証言を拒み続けます。
石井記者は、義務である証言をしなかったとして起訴されて有罪判決を受けます(刑法161条違反)。
一方で、『取材源の秘匿は権利である』ことを理由に上訴しました。
確かに、公務員とかであれば職務上知り得た情報は口外してはいけないので、そういうものに限り証言を拒むのも認められます。
しかし、そういった権利は新聞記者にも認められているわけではありません。
憲法21条は取材秘匿権を認めたとはいえないとして石井記者は敗訴しました。
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まとめ
今回は表現の自由の中にある『報道の自由』をかいつまんで見ていきました!
特に博多駅事件や北海タイムス事件、夕刊和歌山時事事件は問題でも問われやすいので丁寧に勉強することが大切です。
公務員試験の勉強に役立たせてみてください。
『報道の自由は憲法21条で保障されているが、取材の自由は憲法21条において十分に尊重されるべきもの』
という独特な捉え方は絶対に押さえましょう!
後は公務員試験お得意の判例問題が出題されるので、ここで紹介し切れなかったものも覚えるようにしてくださいね!