公務員試験の憲法や財政学では、予算の種類も出題範囲となっています。国家の予算を勉強するうえで、特に押さえてほしいのが本予算・暫定予算・補正予算です。
私は大学生の頃、予算と予備費の違いをあまり理解できていませんでした。そのため今回の記事では、予算の種類や特徴だけではなく、予備費の説明もします。
公務員試験や行政書士試験を受験される人は、ぜひ参考にしてください。
予算の種類
内容や時期ごとに分類すると、予算の種類は大きく3つあります。
予算の種類 | 定義 |
---|---|
本予算 | 本年度の当初予算 |
暫定予算 | 本予算成立までのつなぎ |
補正予算 | 本予算を修正する |
公務員試験の憲法や財政学を勉強するうえでは、これらを全て押さえなければなりません。今回はあくまで憲法の解説なので、厳選して紹介します。
本予算(当初予算)
本予算は次年度が始まる前に作成しておく予算であり、当初予算とも呼ばれています。
本予算に関しては、公務員試験の憲法ではそこまで深く問われません。存在だけ押さえていればOKです。
暫定予算
本来は本予算を作って次年度に備えるのですが、話がまとまらない可能性もあります。そうなったら予算の確保ができず、事業に費やすお金を準備できなくなるでしょう。
本予算がなかなか決まらないときに支出するのが、暫定予算です。こちらも、国会の議決が必要となります。
暫定予算は、あくまで本予算が完成するまでのつなぎです。したがって本予算が組まれたら、暫定予算は消滅します。
補正予算
内閣はいろいろと考えて予算を作りますが、現実は予定通りにいかないものです。
地方公務員として働いていたときもそうでしたが、金額が固定されている事業でなければ、予算は足りなくなるのが当たり前でした。特に日本は自然災害が多いため、予想できない事態も頻繁に起こります。
一方で当初予定していた事業がなくなり、本予算が大幅に余ることも考えられます。この場合は、減額修正が必要です。
こうした事態において、当初の予算を修正するものが補正予算です。補正予算もほかの予算と同様、国会の議会に基づいて成立します。
補正予算と予備費の違い
補正予算と制度が似ているのが、予備費です。予備費も、足りない予算を充当するためのシステムといえます。それぞれの制度がどのように異なるのかをまとめましょう。
補正予算=上乗せ額が大きい
補正予算が優れているのは、大きな金額を上乗せできる点です。仮に大地震が発生すると、街全体が壊滅する危険性もあります。
被害額が予測できない中、当初予算分だけで対応するのは困難です。そこで補正予算を組むことで、多額のお金を使って復旧に充てられるようになります。
補正予算のデメリットは、成立までに時間がかかることです。新潟中越地震や東日本大震災では、スピーディーに補正予算を組めたものの、どうしても1〜2カ月はかかります。そのため機動性はやや劣ります。
予備費=迅速に対応できる
予備費のメリットは、補正予算と比べて機動性が高い点です。予備費は当初予算時に用意されますが、使用目的が具体的に決まっているわけではありません。
さらに閣議にかけるだけで使用でき、国会からは「事後に」承認を得ればよいのがポイントです。そのため突然費用が必要になり、補正予算が組めない間の応急処置ができます。
ただし予備費の場合、補正予算と比べて使用できる額が多くありません。予備費は閣議のみで出費できることから、あくまで例外的に繰り出せるお金です。
予算は内閣が作成するものの、基本的には国会の事前承認が必要とされています。事後に承認となる予備費の額が大きくなるのは、三権分立の概念から見ても好ましくないわけです。
したがって自然災害が発生したら、予備費も使いつつスピーディーな補正予算の成立が求められます。
補正予算はガッポリ!
予備費はスピード命!
予算が成立する流れ
国の予算がどのように成立するかを押さえるには、国会と内閣の関係性を知ることが大切です。
ここでは双方の役割に触れながら、予算が成立する流れを解説しましょう。上図も踏まえつつ、以下の文を読んでみてください。
予算案を作るのは内閣
先ほども説明しましたが、予算案の作成は内閣の仕事です。内閣は財政状況を把握し、1年に1回の頻度で国会に報告しなければなりません(憲法91条)。
一方で国会は予算案における発議権がありません。内閣が作成した予算案に対し、審議する立場であるため、間違えないように区別してください。
国会と内閣の違いがあまり分からない場合は、議院内閣制について勉強するのをおすすめします。こちらの記事で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
国会が予算案を審議する
国会は、内閣から受け取った予算案について審議します。憲法上では、国会が予算に対して修正を加えることも可能です(増額修正・減額修正のどちらもOK)。
衆議院の優越により、内閣は先に衆議院へ予算案を提出しなければなりません。衆議院は、参議院よりも先に予算案を審議する権限があります。
衆議院と参議院の議決が異なり、両院協議会でも一致しないとき、または参議院が30日以内に議決しないときは衆議院の議決が採用されます。
ただし衆議院が解散しており、参議院の緊急集会で予算を成立させる分には問題ありません(衆議院の優越に反しない)。
衆議院の優越については、以下の記事でも詳しく紹介しています。併せて参考にしてください。
予算の種類をおさらい
予算には、大きく分けて本予算(当初予算)・暫定予算・補正予算の3つがあります。それぞれの定義をしっかりと押さえましょう。
さらに憲法では、自然災害などで活用できる予備費についても規定されています。補正予算との違いを押さえ、区別して覚えてください。
予算に関する内容は、憲法のみならず財政学でも出題される可能性があります。はじめはさまざまな制度が混同するかもしれませんが、ニュースも見ながら徐々に慣れてください。