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IS-LM分析とは?流動性の罠についてわかりやすく解説

公務員試験のマクロ経済学で、出題される可能性が高い分野はIS-LM分析です。グラフの読み方に加え、流動性の罠についても押さえる必要があります。

この記事では、公務員試験に一発合格した筆者が、IS-LM分析をわかりやすく解説します。マクロ経済学を勉強されている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

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IS-LM分析とは?

IS-LM分析とは、財政政策と金融政策が国民所得および金利にどう影響を与えるかを分析するモデルです。マクロ経済学の基本的な考え方であり、日本の経済政策においても重要といえます。

ISとは、一言でまとめると財政政策を指します。一方でLMとは、金融政策のことです。多くの国では、国内の経済を政府と中央銀行で動かしています。

単純に政府だけが対策すればよいのではなく、中央銀行で二人三脚で対処しなければなりません。IS-LM分析は、政府と中央銀行の経済政策を科学的に捉えているのが特徴です。

 

IS(財政政策)とは

IS曲線は、財政政策を表した曲線です。「I」と「S」は、それぞれ以下の用語の頭文字を取っています。

  • 投資(Invest)
  • 貯蓄(Savement)

マクロ経済学では、貯蓄量と投資量は等しくなると考えられています。貯蓄した分だけ、投資すると捉えられるためです。

IS曲線の考え方

横軸を国民所得、縦軸を利子率と置くと、IS曲線は右肩下がりで描かれます。

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仮に利子率が上がると、個人や企業は金融機関からお金を借りにくくなってしまいます。利子が高くなり、最終的に返済する分が高額になるためです。

一方で利子率が下がっていけば、個人や企業はどんどん投資できるため、マクロ経済学の考え方では貯蓄も向上するでしょう。「貯蓄=投資」の関係を念頭に置くと、IS曲線の意味も理解しやすくなります。

IS曲線のシフト

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利子率と国民所得の両方を増やすには、IS曲線を右方向にシフトさせる必要があります。このようにIS曲線を右方向に動かす施策として挙げられるのは、以下のとおりです。

  • 公共事業の拡大
  • 減税

公共事業の拡大とは、一般的にインフラ整備が挙げられます。ほかにも減税をして、国民が消費もしくは投資しやすい環境にすれば、IS曲線を右方向にシフトすることが可能です。

 

LM(金融政策)とは

LMとは、金融政策を指す用語です。「L」と「M」は、それぞれ以下の意味を持ちます。

  • 流動性選好(Liquidity Preference)
  • 貨幣供給(Money Suply)

流動性選好とは、人々の貨幣を保有しようとする欲求のことです。一方で貨幣供給は、市場に出回っている貨幣の量を指します。

お金に価値があると、人々は資産を貨幣として持つようになります。中央銀行も人々のニーズに合わせて、貨幣の量を調整するといったモデルです。

万が一、人々のニーズよりも多くの貨幣を供給してしまうと、インフレーションが発生してしまいます。そうすれば人々はお金ではなく、株式や物といった資産を持つようになるでしょう。

LM曲線の考え方

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LM曲線は、IS曲線とは反対に右肩上がりで描くのがポイントです。仮に中央銀行が金利を高く設定すると、皆さんの預金の利息も高くなります。つまり地方銀行などに預けているだけで、所得も増えやすくなるわけです。

反対に利子率が低くなれば、預金の利息はほとんどもらえません。したがって国民所得も増えにくくなるため、右肩上がりのグラフとなります。

LM曲線のシフト

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IS曲線と同じように、金融政策を積極的に進めると右側にシフトすることが特徴です。具体的な政策として、金融緩和(金利を下げる)政策が挙げられます。

ちなみに、日本銀行が多く貨幣を刷れば、その分価値も下落するため金利も下がります。

 

IS-LM曲線の考え方

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IS曲線とLM曲線は、別々に分けてしまうと経済の分析にはあまり役に立ちません。IS-LM曲線として2つ一緒に考えることで、初めてどう対策を講じるべきか見えてきます。

それぞれの曲線の接点が、利子率および国民所得の値です。したがって国民所得を増やすには、どうグラフを動かすかがポイントとなります。

IS曲線のシフト

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まずは、IS曲線をシフトした場合について考えてみましょう。政府が公共事業や減税を行うと、一般的にIS曲線は右方向にシフトします。すると接点も右上方向に動くため、国民所得も増加しているように見えます。

しかし公共事業や減税をしただけでは、国債発行の影響により利子率も上がっています。この状況では金利も高くなってしまい、個人や企業はお金が借りにくくなるでしょう。

結果的に人々が投資を渋ったことで、国民所得は元に戻ってしまいます。この現象がクラウディングアウトです。

したがって政府が財政出動を進めた場合、中央銀行も金融緩和などを実行するのがセオリーとなっています。クラウディングアウトについては、以下の記事で詳しく説明しているので、併せて参考にしてください。

政府支出と減税の効果!クラウディングアウトとは - 【資格の教室】ヤマトノ塾

LM曲線のシフト

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次に政府が財政出動したあと、中央銀行が金融緩和政策したときの現象を解説します。金融緩和政策は、一般的にLM曲線を右方向にシフトする施策です

金融緩和政策を採ることで、国民所得のさらなる増加に加え、利子率の減少にも期待できます。理論上は、財政出動と金融緩和によって景気が良くなります

とはいえ景気が加熱しすぎると、物価が高騰してしまい国民の生活が苦しくなる可能性もあります。あまりにも物価が高騰しているときは、反対に景気を抑制させなければなりません。

景気を抑制する際には国が増税をして、中央銀行が金利を引き上げればよいわけです。この理屈が分かれば、経済のニュースもまた違った視点で捉えられるでしょう。

 

流動性の罠とは

IS-LM分析でも重要な現象として、流動性の罠が挙げられます。流動性の罠が生じる要因は、超低金利政策が実施されるためです。この記事では日本で超低金利政策が生まれた背景に加え、流動性の罠がどのような影響を与えるかを解説します。

超低金利政策が生まれた背景

このような低金利が生まれた理由には、バブル崩壊やリーマン・ショックの影響などが挙げられます。バブル経済とは不動産や株式といった資産の価格が、実体よりもかけ離れて高騰する現象のことです。

しかし当時の日本銀行は公定歩合を引き上げたことで、投資が一気に抑えられてしまいました。結果的にバブルは崩壊し、借金を抱えた人が続出しました。今の日本の低金利政策は、こうした失敗による反省も影響しています。

またリーマンショックの影響で、日本にも著しい不況が訪れました。そこで失業者を救うべく、ゼロ金利政策を打ち出した背景もあります。

ゼロ金利状態とLM曲線

かつての日本経済のごとく「ゼロ金利」状態になると、LM曲線は下記のように描かれます。

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LM曲線が横一直線の状態では、金融政策を実施しても国民所得は上がりません。反対に考えれば国民所得が上下しても、金利には全く影響を受けないといえます

国民所得を増やしたいのであれば、財政政策でIS曲線のみを動かさないといけません。つまり減税や公共事業の増加といった対策が必要です。

流動性の罠の状態であれば、財政支出によるクラウディング・アウトも起こりにくいといった特徴があります。クラウディング・アウトについては、以下の記事も併せて参考にしてください。

 

IS-LM分析の問題対策

公務員試験において、IS-LM分析は狙われやすい分野の一つです。過去問を解きながら、問題に慣れていかなければなりません。

そこで筆者が使っていた教材として、スー過去を紹介してみましょう。スー過去は難易度ごとに、さまざまな過去問が収録されています。解説も丁寧に記載されているため、初学者の方には特におすすめです。

 

金利の引き上げは正解なのか

高市早苗氏が自民党の新総裁になったあと、日本円が円安の方向に動きました。2025年10月時点では、1ドル=150円を超えています。

このように円安が続くと、日本の低金利政策に不安を感じる方もいるでしょう。しかし安易に金利を引き上げてしまうと、個人・企業の投資を抑制させる恐れもあります。

確かに円安のデメリットとして、国内の物価が上昇しやすくなる点は挙げられます。1ドルの製品を100円で買えていたものが150円になったら、その分日本国内で販売する際にも価格が高くなるためです。

一方で円安には、輸出面に強くなるメリットもあります。輸出が伸びていけば、政府も財政出動がしやすくなり、国民所得にもプラスに働く可能性が出てくるわけです。

この関係をまとめた式を、IS(貯蓄投資)バランスと呼びます。ISバランスの詳しい内容は、以下の記事で説明しています。

 

IS-LM分析のまとめ

国内の経済を分析するうえで、基本となる考え方がIS-LM分析です。普段の生活では聞かない言葉ですが、マクロ経済学ではGDPと同じくらい重要な分野といえます。

IS-LM分析の見方は、中学校で習う一次関数と同じです。縦軸(利子率)・横軸(国民所得)を置きながら、IS曲線とLM曲線のグラフの関係を押さえてください。

超低金利政策が続くと、LM曲線が横軸に水平となる流動性の罠も起こります。IS-LM分析では、特殊な形をしたグラフも出てくるので、公務員試験の過去問も用いながら勉強していきましょう。