FP試験の出題範囲にもなっている健康保険。私たちにとって身近な存在ではあるものの、イマイチ中身がわからないと感じている人もいるでしょう。
この記事では、FP試験向けに健康保険の給付一覧を紹介します。試験対策のみならず、今後の生活にも役に立つのでしっかりと押さえてください。
公的医療保険とは
公的医療保険とは、病気やケガをした際に国が一部を補助してくれる制度のことです。
日本では国民皆保険のシステムを採っており、全員が何らかの公的医療保険に入ります。なお医療保険の種類を大きく以下の3つに分けられます(※共済組合は除く)。
- 健康保険
- 国民健康保険
- 後期高齢者医療制度
特に健康保険と国民健康保険は混同しやすいので注意してください。
健康保険
健康保険は、主にサラリーマンの人が加入する保険です。協会けんぽと組合健保の2種類がありますが、これらは会社の規模によって区別されます。
健康保険は被扶助者も加入でき、社会保険料の免除や税負担の軽減につながるのがメリットです。なお被扶助者となるには、以下の条件を満たす必要があります。
- 年収130万円未満(60歳以上や障害者は年収180万円未満)
- 年収が同居している被保険者の1/2未満
- 被保険者と別居の場合は年収が仕送り額より少ない
ただし年収には、公的年金や手当金の金額も含みます。さらに75歳以上の場合は、後期高齢者医療制度が適用されるので被扶助者にはなれません。
国民健康保険
国民健康保険とは、自営業者や農林水産業従事者などが対象となる保険です。保険者は主に以下の2通りとなっています。
- 都道府県や市区町
- 国民健康保険組合
健康保険とは違って被扶助者の制度は適用されず、世帯の合計所得に基づいて保険料が算定されます。世帯の代表者である「世帯主」が納付するのが特徴です。
後期高齢者医療制度
後期高齢者医療制度とは、75歳以上の人が対象となる医療制度です。健康保険や国民健康保険からは脱退する形となり、以下の条件を満たしたら自動的に加入となります。
- 75歳以上の人
- 65〜75歳未満で障害認定を受けた人
自己負担割合は1割となり、保険料の納付も個人の所得に基づきます。なお被扶助者の制度は適用されなくなるので、被扶助者だった人は自身で国民健康保険料を納めないといけません。
退職したあとの医療保険
会社を退職したあと、後期高齢者医療制度を受けるまではいくつかの公的医療制度に分かれます。
1つ目が、健康保険の任意継続被保険者になることです。こちらは最長2年間適用されます。
ただし任意継続被保険者になるには、被保険者期間が継続して2カ月以上なくてはなりません。申請は退職の翌日(資格喪失日)から20日以内です。
このように「任意(にんい)」だけに「2(に)」がよく付く制度と覚えてしまいましょう。
それ以外では「国民健康被保険者」「健康保険被保険者の被扶助者」になる方法があります。
健康保険の給付一覧
多額の保険料を納めつつも、これらが何に役立つのかをわからない人もいるでしょう。健康保険には、次のような給付方法があります。
- 療養の給付
- 高額療養費制度
- 出産育児一時金
- 出産手当金
- 傷病手当金
- その他の手当金
全ての方法がFP試験で出題される可能性があるので、概要をしっかりと押さえてください。
療養の給付
療養の給付とは、私たちが病院にかかった際の医療費を給付してくれる制度のことです。
皆さんも病院の診察代は、多くても3割しか払っていないはずです。この分は自己負担額と呼ばれており、残りの7割は国民から納付された保険料でカバーしています。
自己負担額は基本的に3割ですが、年齢に応じて自己負担割合も変わります。
年齢 | 自己負担割合 |
---|---|
小学生入学前 | 2割 |
70歳未満 | 3割 |
70〜74歳 | 2割(※) |
75歳以上 | 1割(※) |
(※)現役世代並の所得があると3割になる
FP試験に関係ない豆知識ですが、保険証(マイナカード)を忘れて窓口で10割払っても、後日病院の窓口で提示すれば7割分が戻ってきます。
病院が払い戻しに対応していない場合は、自身の住んでいる自治体の窓口で提示しましょう。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1カ月の医療費が自己負担限度額を超えた場合に事後申請で給付される制度のことです。
要するに医療費が高額に達した場合でも、条件さえクリアすればほとんどを国がカバーしてくれます。
たとえ民間保険に入っていなくとも、負担を大きく軽減してくれるケースもあります(民間保険への加入は高額療養費制度を考慮して決めるとよい)
外来や入院も対象ですが、食事代・ベッド代・先進医療費は対象にはなりません(保険外併用療養費)。
なお介護保険には同じような制度である「高額介護サービス費」が存在します。それぞれを利用しても、医療費と介護費の合計額が自己負担額を超えるときは、高額医療・高額介護合算制度が採られます。
自己負担額は以下のように計算されますが、金額を細かく覚えるのは難しいので後回しにしても問題ありません。
なお多数該当とは療養を受けた月以前の1年間、3カ月以上の高額療養費を受けた場合の4カ月目からのことです。
標準報酬月額 (報酬月額) |
自己負担限度額 | 多数該当 |
---|---|---|
83万円以上 (81万円以上) |
252,600円+ (総医療費(10割)-842,000円)×1% |
140,100円 |
53万〜79万円 (51.5万〜 81万円未満) |
167,400円+ (総医療費-558,000円)×1% |
93,000円 |
28万〜50万円 (27万〜 51.5万円未満) |
80,100円+ (総医療費-267,000円)×1% |
44,400円 |
26万円以下 (27万円未満) |
57,600円 | 44,400円 |
住民税非課税者 | 35,400円 | 24,600円 |
出産育児一時金
出産育児一時金とは、健康保険(国民健康保険)の被保険者と健康保険被保険者の配偶者(被扶助者)に対して支給される一時金です。
金額は原則42万円ですが、産科医療保険制度に加入していない医療機関で出産した場合は40.4万円に減額されます。一時金を貰う以外にも、窓口負担を軽減させる制度の利用も可能です。
また出産育児一時金が支給されるまでに金銭が必要になった場合は、出産費貸付制度も利用できます。こちらは当該一時金の8割相当が貸付けされ、返済は給付金から差し引かれる形を採ります。
出産手当金
出産育児一時金とは別に、健康保険の被保険者には出産手当金も支給されます。こちらは出産で会社を休業している間、給料をカバーするための給付金です。
支給対象期間は98日間です(出産前42日と出産後56日)。支給金額は「12カ月間(継続した期間)の標準報酬月額の平均額÷30日×2/3」で計算されます。
なお国民健康保険の加入者は、出産手当金の対象外となる点に注意してください。
傷病手当金
傷病手当金は業務外の理由で病気やケガとなり、連続して4日目から支給される給付金です(3日目までは待機期間)。支給期間の最長1年6カ月と定められています。
支給額の計算方法は、出産手当金と同じです。こちらも国民健康保険の加入者は、傷病手当金の対象にならないので注意しましょう。
その他の手当金
ほかにも健康保険給付金には以下の種類があります。
- 埋葬料(葬祭費)
- 入院時食事療養費
- 訪問看護療養費
- 移送費など
この中では、埋葬料(葬祭費)については押さえておくとよいでしょう。
健康保険の被保険者や被扶助者が亡くなったときは5万円(埋葬料)、国民健康保険の加入者が亡くなったときに7万円(葬祭費)支給される制度です。
ほかの種類についてはほぼ重要ではありませんが、自身が購入したテキストや問題集に合わせて必要ならば各自勉強してください。
公的医療保険の勉強では構造を理解しよう
今回は健康保険の給付一覧を中心に勉強しましたが、まずは公的医療保険の構造をしっかりと覚えなければなりません。
公的医療保険には、国民健康保険・健康保険・後期高齢者医療制度の3つの軸があることを念頭に置いてください。そうすれば、国民健康保険と健康保険で混同しにくくなるでしょう。
FP試験は「数字を正しく覚える」ことがカギを握るので、計算方法や支給額はチェックしながら勉強するのをおすすめします。