民法の中でも、制限行為能力に関する規定は基本的な項目です。
制限行為能力者の単独行為は取り消すことが可能ですが、少なからず相手方は負担がかかります。
今回は制限行為能力者と相手方の保護の関係性を中心に解説していきます。狙われやすい範囲を中心にまとめるので、公務員試験受験者は特に目を通してみてください。
なお制限行為者の一種である成年被後見人・被保佐人・被補助人の内容は、以下の記事で詳しくまとめています。
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制限行為能力者とは
制限行為能力者とは、単独での行為が制限されている人のことです。種類によって単独でできる行為が異なり、大きく4つのパターンに分けられます。
- 未成年者
- 成年被後見人
- 被保佐人
- 被補助人
もし制限を超えて何か法律行為をしたいときは、保護者の同意を得なければなりません。しかし場合によっては、制限行為能力者が単独で法律行為をするケースもあります。
ここで問題となるのが、契約の相手方がどこまで保護されるかです。
法律行為は取り消しの対象
制限行為能力者が保護者の同意を得ずにした法律行為は、原則として取り消しが可能です。取消権は保護者のみならず、制限行為能力者本人にも認められます。
一度取り消された法律行為は、行為時にさかのぼって無効となります。つまり法律行為が、元々存在しなかったと認識されるのがポイントです。
取消権が認められない場合
あらゆる状況において、取り消しが認められてしまうと契約の相手方の権利を著しく害する恐れもあります。そこで民法では、相手方の保護に関する規定についてもまとめています。
最低限、以下の内容は覚えておくといいでしょう。
- 保護者が追認した
- 制限行為能力者が詐術を働いた
このような事情が見られたときは、法律行為が有効なものとして働きます。公務員試験では、相手方の保護に関するルールも勉強しておくことが大切です。
相手方の保護について
次に「相手方の保護」において重要なケースを細かくまとめます。公務員試験でも、応用問題を中心に狙われやすい範囲の一つです。しっかりと内容を押さえるようにしましょう。
制限行為能力者が詐術した
制限行為能力者の詐術を相手方が信じたら、法律行為の取り消しが認められません。
その理由は、相手方の保護を重視するためです。
詐術の主な例として、制限行為能力者が「私はれっきとした行為能力者です」と嘘を吐いて取引した場合が挙げられます。
自身が制限行為能力者であるのを黙秘しただけでは、詐術にはあたりません。
しかし黙秘をし続けた結果、他の言動も相まって相手方が誤信したときは詐術と判断される可能性もあります。
このルールは、すべての制限行為能力者に適用されます。本人はおろか、保護者も取り消せなくなるのがポイントです。
相手方の催告と追認
相手方は、制限行為能力者だと知らずに取引をしてしまう場合があります。
そのうえで取り消しされるかどうかがわからなければ、不安な気持ちを抱えて過ごさないといけません。
そこで民法では相手方に対し、法律行為の可否について催告する権利を与えています。この催告のルールは非常に細かいので、さまざまなケースに分けて解説しましょう。
本人に催告する場合
法律行為の相手方は、被保佐人や被補助人であれば本人に直接催告できます。もし期間内に追認するか否かの確答がない場合は、行為を取り消したとみなされるのが特徴です。
ただし本人が「行為能力者」となったあとに催告をしたら、確答がない際には追認したとみなされます。行為能力者になったかどうかで変わるので注意してください。
一方で未成年者や成年被後見人に対しては、本人への催告ができません。被保佐人や被補助人と比べて、判断力や経験が乏しいと考えられているためです。
この場合は、保護者に催告をする必要があります。
保護者に催告する場合
次に保護者へ催告する場合について紹介します。
こちらの内容は、制限行為能力者の全てに共通することです。
結論を述べれば、期間内に確答がないと追認したとみなされます。
しかし、特別の方式を必要とする行為に関しては、その方式を備えた旨の通知をしないと行為が取り消されたという判断になります。
保護者自身は基本的に行為の是非を判断できるという前提です。
そのため、制限行為能力者の種類問わず取消権を使うには確答が求められます。
制限行為能力の内容は過去問が大切
今回は少し短くなりましたが、制限行為能力者と相手方の保護について解説しました。
公務員試験の民法においては、制限行為能力者の内容はしっかりと勉強しておいて損はありません。基本問題に加え、応用問題にも積極的にチャレンジしましょう。
特に催告のルールは、パターンによって異なるので種類ごとに分けて覚えるのが大切です。
また過去問対策が合否にも大きな影響を与えます。下記の過去問テキストもしっかりとチェックしてください。