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財政民主主義とは?4原則と租税法律主義をわかりやすく解説

行政書士試験や公務員試験の勉強をするうえで、財政民主主義も押さえたい勉強の一つです。とくに公務員は予算の管理も重要な仕事であるため、4原則や租税法律主義をしっかりと学んでおく必要があります。

この記事では、行政書士試験と公務員試験に一発合格した筆者が財政民主主義を詳しく解説します。受験される方はぜひ参考にしてください。

 

財政民主主義とは

財政民主主義とは、国民の意見を反映させながら国家の財産を動かすべきという考え方です。国の予算をどのように使うかは、国民によってコントロールされます。

とはいえ一人ひとりの意見を聞いていたらキリがないし、スムーズに運営できなくなってしまいます。そのため国民の代表である「議会」によって運営するのが基本原則です。

憲法第83条にも国の財政は国会の議決に基づいて、行使しなければならないと定められています。世界を探しても、わざわざ憲法に財政の処理を規定している国はほとんどありません。しかし戦前の日本は例外規定が多かったため、日本国憲法では定めるようにしたとのことです。

 

財政の4原則

財政の4原則には何があるかをわかりやすくまとめた図

憲法で定める財政には、大きく分けて4つの原則があります。

  1. 財政民主主義をとる
  2. 租税法律主義をとる
  3. 国費の支出や債務負担は国会の議決による
  4. 公金の支出を禁じる

各原則で覚えたいポイントを紹介しましょう。

財政民主主義をとる

先ほども説明したとおり、日本の財政は財政民主主義を採用しているのが特徴です。つまり財政は、常に国民の監視下にあることを意味しています。

私たち一般市民からすると、自分らが財政の監視に関わっているという実感はあまりないでしょう。しかし国会議員を決めるのは、有権者たちの一票です。誰かに投票するうえでは、財政の動かし方も考慮に入れておくとよいでしょう。

租税法律主義をとる

日本は、憲法第84条で租税法律主義を採用しています。租税法律主義とは国民に税を課したり、租税を変更したりするには法律または法律の定める条件によらないといけないとする考え方です。ここでいう法律には、条例も含まれるとされています。

そもそも租税の目的は、国や自治体が課税権に基づいて経費に充てるための資金を集めることです。特定の給付における反対給付ではなく、条件を満たしたすべての人に対して強制的に金銭を徴収します。

旭川市国民健康保険条例事件

かつて旭川市では、国民健康保険料率を市長に決定させていたことが問題視されました。そこで旭川市の国民健康保険条例が、憲法第84条に照らして合憲か違憲かが争われます。

最高裁判決(H18.3.1)

保険料の場合、租税とは違って反対給付として保険金などの給付があります。そのため憲法第84条が直接適用されるわけではありません。

とはいえ日本は国民健康保険の加入が強制であり、保険料の実態は租税と大して変わらないといえます。以上から保険料についても、憲法第84条が類推適用されると判旨されました(国民健康保険条例自体は合憲となった)。

国費の支出と債務負担

国が国費を支出し、債務を負担するには国会の議決によらないといけません。「支出」について、財政民主主義の概念を具体的に表した規定です。

国費の支出は財政法による現金の支払いを指していますが、使途を限定していません。そのため私法上の支払いについても、国費の支出に該当します。国会の議決は、予算の形式でなされるのがポイントです。

一方で国が必要な経費を調達すべく、国民等に対して債務を負うこともあります。債務に関する国会の議決は、予算または法律の形式でなされるのが特徴です。

損失補償の承認も債務に該当します。損失補償については、以下の記事でも紹介しているので参考にしてください。

公金の支出を禁じる

公金等の財産は、宗教上の組織や団体のために支出・使用することもNGとされています。こちらは憲法第89条前段で定められており、政教分離を保障した規定の一つです。

加えて憲法第89条後段では、公の支配に属しない慈善・教育・博愛の事業に支出・使用することも禁じています。後段部分の考え方は、大きく分けて2つの見解が存在します。

  • 公費の濫用を防止する
  • 私的事業の自主性を重んじる

それぞれの見解を簡潔にまとめましょう。なお政教分離の原則については、以下の記事で詳しくまとめているので併せて参考にしてください。

公費の濫用を防止する

慈善事業や教育事業への公費を支出は、つい不要なものにもお金を払ってしまう恐れがあります。このように公金の浪費を防ぐという見解が、公費濫用防止説です。公費が濫用されないためにも、事業をしっかりと監督する必要があります。

しかしこの考え方に照らし合わせると、前段(政教分離)と方向性が全くもってズレてしまいます。おまけに慈善・教育・博愛以外にも、数々の事業がこの世にはあるはずです。これらに限定して「浪費を防ぐ」と考えるのは不自然といった批判も存在します。

私的事業の自主性を重んじる

こちらの説は、教育等の事業において公権力の干渉を排除する考え方です。世の中の私的事業は、私たちの自由な判断のもとで行わないといけません。

公権力が介入しすぎると、最終的には国家が私的事業を支配する状態になってしまいます。国家に権力を持たせないためにも、公金の支出を避ける必要があるわけです。

とはいえ国家は、慈善・教育・博愛事業に一切お金を投じないわけではありません。この考え方を支持すると、私学助成といった制度も違憲という扱いになります。このように憲法第89条後段には、2つの見解があるものの、それぞれ批判も存在することを押さえてください。

 

財政民主主義に関するまとめ

行政書士試験や公務員試験において、財政民主主義の内容はそこまで深く問われないでしょう。要点さえ理解していれば、たとえ問題に出されても正解を導きやすいといえます。

財政民主主義や租税法律主義の定義、政教分離の考え方をしっかりと見ておきましょう。日本国憲法全体においても重要な考え方となるので、まずは基本的なポイントをチェックしてください。

財政の分野においては、財政民主主義よりも予算や予備費のほうが複雑です。これらは以下の記事で解説しているので、必ず参考にしてください。