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協議離婚と裁判離婚の違いとは?離婚の効果についても解説

行政書士試験や公務員試験では、離婚の分野について出題されることもあります。ただし婚姻の範囲は民法でも後半に規定されており、勉強が追いつかない人もいるでしょう。

この記事では、行政書士試験と公務員試験の合格した筆者が、協議離婚と裁判離婚の違いを解説します。受験生は、ぜひ記事を勉強の材料にしてください。

 

協議離婚とは

協議離婚(協議上の離婚)とは、夫婦の意思に従って婚姻関係を解消する手続きです。夫婦で離婚届にハンコを押し、市役所へ提出すれば基本的には認められます。

成年被後見人の場合、後見人の同意がなくとも自分の意思で離婚できます。成年被後見人の内容については、以下の記事も併せて参考にしてください。

 

離婚の効果

離婚でどのような効果が生じるかをわかりやすくまとめた図

離婚が成立すると、夫婦の関係が消滅します。実生活においても、さまざまな変化が訪れることは皆さんもイメージできるでしょう。具体的にどういった変化が生じるかを説明します。

婚姻の解消は将来効となる

離婚による婚姻の解消は、将来効となっています。将来効とは、将来に向かって効果を取り消すことです。言い換えれば、解消前の効果はそのまま残り続けます。

たとえ夫婦が離婚したとしても、婚姻によって発生した効力が失われるわけではありません。法律上婚姻関係のある夫婦から生まれた子どもは、変わらず嫡出子としての身分を持ちます。

法律の勉強では、将来効や嫡出子という単語は重要です。言葉を覚えるだけではなく、意味もしっかりと理解してください。

原則として氏が戻る

婚姻で苗字(氏)が変わった人は、原則として離婚すると前の氏に戻ります。この効果を「復氏」と呼ぶので、用語も併せて覚えてください。

ただし絶対に元の氏に変えなくてはいけないわけではありません。離婚の日から3ヶ月以内に、市町村役場へ「婚氏続称届」を提出すれば、婚姻後の氏をそのまま使えます。

特に離婚した夫婦の子にとって、苗字が変わるのはデリケートな出来事です。婚氏続称届を活用すれば、離婚したことが周囲にバレにくくなります。

親権者を決める

子のいる夫婦が離婚するときは、どちらか一方が親権者にならないといけません。双方が親権者になるのは認められず、子のほうから決めることもNGとなっています。しかし親権を獲得できなかった一方との関係が、一切なくなるわけではありません。

たとえば母親が、子の親権を得たとしましょう。親権は母にありますが、父親が死亡したとしても、子は財産を相続できる権利があります

仮に父親が再婚し、その相手との間で子ができても関係ありません。このように相続に関しては、離婚後も子との関係が続くといえます。

監護者を決める

親権者以外にも、夫婦は監護者を決定しなければなりません。監護と親権の違いは、子を養育するうえで必要な権利・義務の範囲にあります。

親権は子の財産の管理や契約、養護・教育といった幅広い行為を担える権利です。一方で監護は、一緒に暮らして養護・教育する権利に限定されます。

基本的に親権者と監護者を分ける人はほとんどいないでしょう。一緒にしたほうが、契約や財産管理もスムーズにできるからです。

財産分与の方法を決める

財産分与とは、夫婦が共有していた財産を按分することです。お互いの生活を安定させるべく、離婚する際には一般的に分与額と方法を取り決めます。しかし成立要件ではないため、財産分与の協議が完了していなくとも、離婚は成立します。

また財産分与には、基本的に損害賠償の意図はありません。分与額と方法が決定したあとも、一方に対して不法行為を理由とする慰謝料請求も可能です。

なお婚姻前から自分で持っていた財産は、特有財産に含まれます。共有財産ではないため、この部分については財産分与の対象にはなりません。

 

 

裁判離婚とは

裁判離婚とは夫婦間だけではなく、家庭裁判所の審判で離婚させる手続きです。夫婦での話し合いに決着がつかず、離婚ができない場合に採用されます。しかし強制力を持つため、裁判離婚には条件が定められています。

離婚調停からスタートする

裁判離婚の場合、まずは離婚調停から先に進めないといけません。調停は調停委員会の仲介を頼りに、夫婦間で話し合いをする手続きです。

夫婦は直接話し合うわけではなく、調停委員に対してお互いの意見を主張します。調停委員がブレーキとなってくれるため、感情も抑えられやすいのがメリットです。仮に調停で決着がつかなければ、最終的に訴訟へ進みます。

もちろん離婚調停は多額の費用がかかり、貴重な時間も奪われてしまいます。とはいえ早く解決したい夫婦からすれば、頼りになる手続きとなるでしょう。

離婚の条件が定められている

裁判離婚の条件についてまとめた図

離婚に家庭裁判所を絡ませるには、あらかじめ民法第770条で条件が定められています。

  1. 配偶者に不貞行為があった
  2. 配偶者から悪意で遺棄された
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでない
  4. 配偶者が強度の精神病を患い、回復の見込みがない
  5. その他婚姻が継続できない重大な事由がある

第770条は、この5つの原因があるときに限り、訴訟を起こせると記載されています。しかし実際には、さまざまな理由で裁判離婚が実施されているのが現状です。

第5号の「その他婚姻が継続できない重大な事由」が、幅広い理由による訴訟を認めているためです。このポイントも含め、裁判離婚ができる条件を詳しく解説しましょう。

1.配偶者の不貞行為

不貞行為は、ほかの異性と性的な関係を結ぶことです。不倫と言いかえれば、理解しやすいでしょう。

実際の生活においても、不貞行為が原因で離婚に至るケースは珍しくありません。皆さんも週刊誌やテレビなどで、不倫のニュースを見ることで身近に感じる人もいると思います。

2.配偶者からの悪意の遺棄

悪意の遺棄とは、積極的な意思に基づき同居・協力・扶助義務に違反することです。正当な理由がないのに別居したり、子育てに全く関わらなかったりする行為が該当します。

一方で相手からDVをされたなど、正当な理由のある別居は認められます。悪質かどうかが、悪意の遺棄と認識される条件です。

3.配偶者の生死が3年間不明

配偶者の生死が3年間不明なときも、裁判離婚が認められる条件の一つです。あくまで生死不明な状態を指し、居所はわからないものの連絡が来ているケースは含まれません。

なお生死不明な状態が7年間続いたとき、自然災害などの危難が発生して1年間経過したときは失踪宣告ができます。失踪宣告の具体的なルールは、以下の記事で解説しているので併せて参考にしてください。

4.配偶者が強度の精神病を患った

配偶者が強度の精神病を患い、回復する見込みがないときも裁判離婚が認められます。強度の精神病は、重度のうつ病や統合失調症と考えてもらうとよいでしょう。

とはいえ軽度の症状であれば、基本的に相互扶助義務が優先されます(民法第752条)。夫婦の生活を送るのが難しいくらい、重い症状を抱えているのが条件です。

5.その他重大な事由がある

ほかにも重大な事由があるときは、裁判離婚が提起されることもあります。例えばDVや経済的ネグレクト、長期間の別居、育児放棄などが該当します。

先ほども説明したとおり、裁判離婚はさまざまな理由によって行われているのが現状です。とはいえ裁判所が「重大」と認めなければ、原則として婚姻を継続する判決が下されます。

性格の不一致のような軽い原因である場合、裁判上で離婚を成立させるのは難しいです。行政書士試験の勉強では、ここまで細かく勉強する必要はないものの、実生活では役立つときがあるかもしれません。

 

協議離婚・裁判離婚のまとめ

協議離婚と裁判離婚の違いは、裁判所を介入させるかどうかです。裁判離婚は要件も細かく定められており、訴訟を提起したからといって必ず離婚が認められるわけではありません。

行政書士試験や公務員試験の勉強では、離婚の効果が出題される可能性が高いでしょう。実生活にも関連する内容であるため、上手くイメージしながら重要ポイントを押さえてください。