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不同意性交罪は冤罪を生みやすい?問題点をわかりやすく解説

刑法第177条の法改正により、強制性交罪が不同意性交罪に名称を改められました。一見すると、被害者を守る良い改正と思うかもしれませんが、冤罪が発生するリスクも少なからずあります。

この記事では、不同意性交罪の問題点をわかりやすく解説します。刑法を勉強される方、被害を未然に防ぎたい方はぜひ参考にしてください。

 

不同意性交罪とは

不同意性交罪とは、同意がないのに性行為をした者を罰する規定です。2023年7月の改正がなされるまでは、強制性交罪という名称が用いられていました。

名称が変わった理由は、強制性交罪の適用される範囲が狭すぎるからでした。暴行や脅迫がないと基本的に成立しなかったため、泣き寝入りする被害者も少なからずいたのです。

そこで適用される範囲を広めるべく、名称が不同意性交罪に変更となります。しかし不同意性交罪への改正は、冤罪を生むリスクも高くなるといわれており、賛否両論分かれています。

 

不同意性交罪の要件8つ

不同意性交罪が適用されるには、大きく分けて8つの要件があります。

  • 暴行・脅迫をした
  • 心身の障害を生じさせた
  • アルコール・薬物を利用した
  • 睡眠・意識不明瞭を利用した
  • 不意打ちで性行為をした
  • 恐怖・驚愕に陥らせた
  • 性虐待をした
  • 地位を利用した

上から内容を簡単に説明します。

暴行・脅迫をした

暴行・脅迫は、改正前の強制性交罪における要件ともなっていました。暴行は皆さんが知っているとおり、暴力行為で性行為を強制することです。殴る、蹴る、髪の毛を引っ張るなどの行為が該当します。

一方で脅迫は「性行為をしないと命はない」などと、脅して行為に迫ることです。撮影した写真や動画をばら撒くように脅す行為も、脅迫の一つとして挙げられます。

心身に障害を生じさせた

性行為をするにあたり、心身への障害を生じさせた人も不同意性交罪の対象となります。主な例として挙げられるのが、無理やり相手を倒したら頚椎が損傷して車いす生活になったというケースです。

また「心身」が対象になるため、精神疾患を生じさせた場合も不同意性交罪が成立します。相手がPTSDを発症したなどが、精神疾患に該当する例の一つです。

アルコール・薬物

アルコールや薬物によって相手を眠らせ、行為に及ぶことも不同意性交罪が成立します。これまでの刑法では、上記の行為は準強制性交罪で禁じられていました。

しかし刑法の改正に伴い、準強制性交罪・準強制わいせつ罪は削除され、不同意性交罪・不同意わいせつ罪にまとめられました

アルコールや薬物も、一歩間違えると相手を死に至らしめるケースもあります。また大麻や覚せい剤については、そもそも所持すること自体が違法であることも押さえておきましょう。

睡眠・意識不明瞭

相手が寝ている隙を狙って、性行為に及ぶのも不同意性交罪の要件の一つです。この事案についても、改正前までは準強制性交罪や準強制わいせつ罪に分類されていました。

改正後の法律では、すべて不同意性交罪・不同意わいせつ罪としてまとめられています。

不意打ち

睡眠や意識不明瞭以外にも、不意打ちで襲われるケースも考えられます。不意打ちとは、抵抗する間もないままわいせつな行為をされることです。

不意打ちでのわいせつに該当する例として、電車内で背後から痴漢されるケースが該当します。実は改正前の刑法では、痴漢した者を裁く規定が存在していませんでした。旧強制わいせつ罪も、暴行や脅迫が要件の一つとされていたためです。

そのため各自治体の迷惑防止条例違反として、痴漢した者は検挙されていました。今回の改正により、痴漢も不同意わいせつ罪に処されるようになります。

恐怖・驚愕

わいせつな行為が被害者にとっても突然のことであり、フリーズしてしまうケースもあるでしょう。特にいきなり知らない異性から触られたら、ショックのあまり動けなくなる場合も珍しくありません。

相手を恐怖や驚愕に陥れただけでも、不同意わいせつ罪が適用される可能性があります。スキンシップのつもりが、相手に大きな傷を負わせてしまうこともあるため注意してください。

虐待

親が子どもに対して、性的な虐待をするケースもあります。統計的にはそこまで多くありませんが、こうした行為をする家庭があること自体を問題視しなければなりません。

刑法第179条では、親などの監護者が18歳未満に性的な行為をしたときは、不同意性交罪や不同意わいせつ罪で罰する旨が定められています。法律で定められている刑期も、特に変わりありません。

地位の利用

上司や取引先といった上下関係を利用し、性行為やわいせつな行為に及ぶことも処罰の対象です。特に2024年あたりから芸能人男性やテレビ局の職員が、女性アナウンサーにわいせつ行為をした疑いがあるとして、次々に問題視されていきました。

今後は芸能関係の仕事においても、異性との関係はより厳しい目が向けられるでしょう。同様に上司から部下への発言も、捉え方次第では「セクハラ」となりうるので注意しなければなりません。

 

不同意性交罪の問題点

筆者としては、同意のない性行為やわいせつはどんどん罰せられるべきだと考えています。しかし不同意性交罪や不同意わいせつ罪は、明確な証拠が残りにくいのも事実です。

そのため本当は同意していたにもかかわらず、これらの罪で検挙されるケースも否定できません。不同意性交罪や不同意わいせつ罪への改正が、どのような問題を生じうるかを解説していきます。

故意犯処罰の原則との関係

まず日本の刑法が適用されるには、故意犯処罰の原則に該当している必要があります。要するに、故意に罪を犯そうとしていない者を罰してはいけないわけです。

不同意性交罪においても、相手の同意があれば本来は罪に問われません。しかし同意があった事実の立証が極めて難しく、冤罪を生みやすいのではと疑問視されています。

冤罪の立証が難しい

不同意性交罪や不同意わいせつ罪は、そのような事実がなかったにもかかわらず、でっち上げで訴えられる恐れもあります。無実を証明することも難しく、冤罪で逮捕・起訴されるケースもないとは言い切れません。

特にこれらの犯罪の恐ろしいところは、冤罪で捕まった人の社会的に抹殺されうる点です。たとえ無罪で釈放されても、その件が公に報道されるとは限りません。

したがって無実で釈放された人も、亡くなるまで「性犯罪者」と世間から烙印を押されてしまいます。実際のところ逮捕されただけでは、本当に犯罪をしたかどうかはわかりません。

確かに犯罪者が不起訴処分となる例もありますが、本当に無実で起訴されないケースも少なからずあります。ただし「逮捕=犯罪者」と考えてしまう日本の社会では、一度逮捕されただけでも人生において大きな障壁となるでしょう。

要件があまり明確でない

強制性交罪に関しては、暴行・脅迫と証拠に残りやすい要件が定められていました。しかし不同意性交罪に名称が変更になってからは、恐怖や驚愕、地位の利用などと証拠が不明瞭になりやすい項目も増えました

仮に上司と部下の関係だったとしても、恋愛関係に発展することは少なからずあるでしょう。特に現代社会では、年の差婚も珍しくはありません。

しかし「地位の利用」が項目に含まれていれば、恋愛感情を利用して相手を陥れるといった行為もできてしまいます。法改正により、悪意かつ不法行為のない人も裁かれてしまう可能性があるため、トラブルに巻き込まれないよう注意しなければなりません。

 

不同意性交罪に関するまとめ

2023年7月の改正で強制性交罪が不同意性交罪に名称が変わり、刑法の運用方法も大きく変化していきました。不同意性交罪の長所は、改正前までは裁けなかった人も刑事事件が適用される点です。

一方で冤罪を生みやすくなる、立証が難しいといった短所もあります。今後も不同意性交罪が間違えた方向で人を裁かないか、注意深く見ていかなければいけません。