刑法の勉強においては、共謀共同正犯も重要な用語の一つです。しかし普通の共犯とどう違うのかがわからず、困っている方もいるでしょう。
この記事では、共謀共同正犯の要件と実行共同正犯との違いをわかりやすく解説します。刑法を勉強している方は、ぜひ参考にしてください。
共謀共同正犯とは
共謀共同正犯とは、犯罪の謀議に関与しただけの人について成立する共犯の一種です。たとえばA・B・Cが連絡しているLINEグループで、3人が甲の住む建物に火をつけようと話し合っていたとしましょう。
Cは内心では放火に賛同していなかったものの、特に止めもせずに「いいね、やろう」とだけメッセージを送っていました。後日AとBが本当に放火した場合、その現場にCがいなかったとしても、Cには共謀共同正犯が成立する可能性があります。
共謀共同正犯が成立する条件
共謀共同正犯が成立するには、以下の条件に該当している必要があります。
- 意思の連絡があること
- 共同犯行の意識があること
- 実行行為があること
これらの条件について詳しく見ていきましょう。
意思の連絡があること
共謀は、共同して犯罪をすることに対する合意を指します。共謀が成立するには、お互いの意思の連絡によって、共同犯行の意思を共有することが条件の一つです。
なお意思の連絡は、必ずしも事前になされている必要はありません。実行行為の現場で共謀の意思を共有するだけでも、成立すると考えられています。また意思の連絡が黙示的に行われた場合でも、共謀共同正犯は成立する可能性があります。
共犯の意思と正犯意思があること
共謀共同正犯は、共犯の意識があることも条件の一つです。共犯の意識とは、犯罪行為について仲間と協力しようとする認識を指します。
また共犯の意識に加え、正犯意思も有していなければなりません。正犯意思とは、自ら犯罪を実現させようとする意思です。
先程のLINEの例では、Cには正犯意思がなかったようにも見えます。しかし内心を立証するのは難しく、形としてメッセージが残っている以上は、共謀共同正犯が成立しうるので注意してください。
実行行為があること
共謀共同正犯は、犯罪の実行行為があってはじめて成立します。LINEの例においても、誰かが甲の家に放火をするまでは、共謀共同正犯の要件を満たしません。
なお犯罪行為の中には、教唆犯や幇助犯も含まれています。したがってAとBが甲に対して私文書偽造罪を教唆し、甲がAだけに相談して実行したケースでも、Bにも教唆犯が成立する可能性はあります。
実行共同正犯との違い
実行共同正犯とは、犯罪の実行行為について共犯者と役割分担することです。たとえばA・B・Cが、銀行強盗を働こうと考えました。その際にAとBで銀行を襲い、Cが車で運搬したら実行共同正犯が成立します。
一方で共謀共同正犯は、一部の人間が実行行為をせず、話し合いのみ参加している状態です。AとBが銀行強盗をし、その戦略を現場には行かないCが考えているケースも該当します。
共謀共同正犯の罰則
共謀共同正犯においては、関与した者すべてが「正犯」とみなされます。この考え方を一部実行全部責任の原則と呼ぶので、併せて覚えておきましょう。
たとえばA・B・Cの3人が甲の住む建物を放火したとき、現住建造物放火罪が適用されます。現住建造物放火罪は、死刑または無期拘禁刑、5年以上の有期拘禁刑に該当する犯罪です。
仮にCが共謀をしただけで、現場にいなかったとしても現住建造物放火罪の刑罰がそのまま下されます。実際にはAやBより量刑は軽くなるのが一般的ですが、それでも放火した仲間の一人と判断されるので、共謀の段階から絶対に加担してはいけません。
共謀共同正犯の学説
共謀共同正犯が刑法上認められるかは、さまざまな考え方(学説)があります。
- 否定説
- 共同意思主体説
- 間接正犯類似説
- 包括的正犯説
現行上は肯定されるのが一般的ですが、4つの説の根拠と批判について見ていきましょう。
否定説
否定説とは、共謀共同正犯は現行の刑法では認められないと捉える学説です。あくまで犯罪を実行している者が、刑法で罰せられるべきだと考えています。
しかし闇バイトにも見られるとおり、黒幕が裏で実行役を指揮しているケースも少なくありません。こういった黒幕を罰せられないのは、秩序的にも望ましくないといった批判が存在します。
共同意思主体説
共同意思主体説とは、一つの目的(犯罪)に対して複数人が共同意思主体を形成していると考える説です。つまり共謀した者も、実行犯と一心同体の関係にあると考えます。
しかし刑法の基本原則の一つに、個人責任の原則があります。当該学説は民法上の組合や団体責任の原理に基づいているため、個人責任の原則に背いているといった批判もできるでしょう。
また共謀共同正犯は、役割によって罪の重大さは異なるはずです。犯罪グループには入っているものの、ほとんど関与していない人もいます。
一方で共同意思主体説を採ると、ほとんど関与していない人も一心同体となるため、同等の責任が課せられます。以上から全員が共同正犯と捉えるのは、望ましくないといった批判も可能です。
間接正犯類似説
間接正犯類似説とは、共謀共同正犯を間接正犯のように捉える考え方です。間接正犯とは、故意のない人や是非を判断する能力がない人を道具のように扱って犯罪させる状態を指します。
仮にA・B・Cが放火の計画を立て、Cが実際に現場には行かなかったときも「AやBを道具のように利用した」と考えれば、共謀共同正犯との関係も導きやすくなります。
しかし共謀共同正犯は、全員が正犯意思を持つため、概念の説明としてふさわしくないといった考え方もあります。なお間接正犯については、以下の記事でも詳しく解説しています。こちらも併せて参考にしてください。
間接正犯とは?教唆犯や共同正犯との違いをわかりやすく解説 - 【資格の教室】ヤマトノ塾
包括的正犯説
包括的正犯説とは、実行行為がなくても重要な役割を担った場合はすべて共謀共同正犯を成立すべきといった考え方です。つまり「共同して犯罪しよう」という意思さえあれば、共謀共同正犯と認められます。
至ってシンプルな考え方ですが、包括的正犯説は基準が不明瞭と批判されることもあります。
共謀共同正犯のまとめ
共謀共同正犯は、犯罪の計画に関する話し合いのみをした人に成立します。たとえ実行行為には関わっていなくても、グループLINEなどで話し合いに関与してはいけません。
共謀共同正犯が成立すると、関与した者全員が「正犯」となります。実際の刑期には違いがあるものの、自身も共犯者と同じ犯罪が成立するため注意してください。
共犯の種類の一つとして実行共同正犯もありますが、こちらは全員が実行行為に参加している状態です。そのため共謀共同正犯とは、一般的に区別されます。
このように刑法のルールは、学者でもさまざまな見解が分かれるくらいに複雑です。少しでも怪しいと感じたら警察に通報するなどして、自分は犯罪行為に参加しない旨を表明しましょう。