どーも、やまとのです!
前回は『行政裁量』の定義について説明していきました!
今回は同じく行政裁量より判例を一通り紹介していきたいなと思います。
きちんと事例を押さえて公務員試験で解けるように勉強していきましょう!
○今回のポイント
- マクリーン事件とは?
- 土地収用法にかかる判例は?
- その他重要判例一挙紹介!
1.マクリーン事件
では、まず紹介するのが『憲法』や『行政法』の代表的な判例ともいえる
マクリーン事件についてです。
追記(令和3年8月22日)
マクリーン事件についてはYouTubeチャンネルの方で解説してみました!
ぜひご確認ください(^^)
マクリーン事件を一言で言えば、
『在留外国人の政治活動や在留期間を決めた法務大臣の行為は適切か否かが争われた事件』
ですね。
マクリーンさんというアメリカ人の方がベトナム軍事介入や日米安全保障条約の反対運動を日本で行いました。
一方でマクリーンさんは英語教育と琵琶や琴の研究を行うという側面も持ちます。
そこでマクリーンさんは
- 英語教育
- 琵琶や琴の研究
を理由に在留の更新許可を申請しました。
しかし法務大臣は
- 申請内容と一致していない
- 政治活動
を理由に申請の一部を拒否。
希望通りの更新はできませんでした。
マクリーンさんはこれを不服に行政訴訟を起こします。
最終的に最高裁まで持ち込まれ、そこでは
- 憲法は外国人の入国や在留を保障したものではない
- 更新事由の有無の判断は法務大臣の裁量に委ねるべき
- 基本的人権の自由は性質上問題なければ外国人にも及ぶが在留制度の枠内にすぎない
という理由で
『判断が常識的に考えて著しく妥当性を欠かない限りは違法ではない』
と結論を出しました。
2.土地収用法の判例
続いては、逆に行政の裁量が認められないケースを紹介していきましょう。
・事案
これは、一般国道に面したところでお店を構えていた事業者が『高架道路』の設置のために土地を一部収用されたケースです。
土地の収用というと地代が支払えなくなった際に土地を没収されるのを想像するかなと思います。
しかし、中には国や地方自治体の政策を実行するために収用されるケースもあるのです。
事業者は土地を一部収用されて高架道路が建設されたのを機に運営が難しくなりました。
そして、最終的には廃業に追い込まれてしまいます。
国の政策などといった理由で土地を収用され、国が代わりに補償を出す制度を損失補償といいます。
では、このケースでは損失補償の対象となったのでしょうか?
・結果
まず、結論をいうと
地裁と最高裁で判断が異なりました。
地裁は、高架道路の設置が廃業に追い込まれた直接の原因にはならないと判断しました。
ちなみに直接的な原因ではなく、あくまで間接的な事案に過ぎないという考え方を
『反射的利益』といいます。
そのまま事件は上訴されていきます。
最高裁は、
『この土地収用法における補償金は客観的に認定されるべきであり、土地収用委員会に裁量権はない』と判断しました。
そして、
- 事業者に対する正当な補償
- 年5分にかかる金利
を事業者は請求できるという逆転裁判に発展します。
まあ、冷静に考えればこういった損失補償まで行政の裁量が認められたら土地奪いたい放題になりますからね(^◇^;)
3.その他の判例
行政裁量に関する判例はもっと沢山のものがあります。
長くは取り上げないですが、有名な判例を要点部分だけ取り上げましょう。
・行政裁量が合法なケース
○神戸税関訴訟
これは国家公務員の懲戒解雇に関する判例です。
前回のブログの『・効果裁量』の項でまとめたものです。
国家公務員の懲戒処分に関しては、懲戒権者に裁量が認められると司法も判断しました。
詳しくは前回の記事をご覧ください。
○教科書検定と国家賠償訴訟
事件名は家永教科書裁判ですね。
ギネス認定されるほど長い民事裁判として有名です。
教科書検定は行政が書籍の内容をあらかじめチェックする『検閲』にあたるのでは?と争われました。
裁判所は検閲に当たらないとし、行政裁量を認めます。
ただし、検定内容に裁量権の逸脱がないことを条件としています。
○伊方原発訴訟
これは「原発」の建設について争われた事例です。
原発の新設に反対した住民が訴訟を起こしました。
原発の基準は専門委員会の科学的な見解を根拠とすべきでは?と問題視されました。
一応、裁判所は専門委員会の知識も参考にしながらも、内閣総理大臣の裁量は認められるとして住民側が敗訴となります。
しかし、2011年東日本大審災で再度訴訟が起こされ、現在も係争中となっています。
・行政裁量が違法なケース
○児童遊園設置
これは山形県余目町の事例ですね。
余目町にトルコ風呂という風俗店が建設されるとし、住民の反対運動が起こります。
そこで住民は県知事に200m以内のところへ児童遊園を設置するよう申請を出しました。
風俗店は児童施設から200m以内のところでは運営できないこととなっています。
県知事はその申請を受理して児童遊園を設置。
当然風俗営業側は怒ります。
そのまま訴訟へ発展しました。
司法の判断は行政の児童遊園を設置する行為は裁量の範囲を逸脱しているとし、違法と判断しました。
※追記(令和3年8月17日)
なお、この判例についてはYouTubeでも細かく紹介しています!
分かりづらいなと感じた方はぜひご覧ください!
○剣道受講拒否事件
最後に剣道受講拒否事件を紹介しましょう。
これはある宗教上の理由により、剣道を受講できない高校生がその授業を休んでいました。
学校側は何の代替措置もとらず、剣道を受講しなかったとしてその生徒に留年処分及び退学処分を下します。
この措置に問題あるとして訴訟が起こされました。
最高裁は
- 剣道が進学に必ず必要だと言い切れないこと
- 代替措置は普通に行えたはず
といった理由により、学校が留年処分や退学処分を下したのは違法だと判断しました。
4.判例問題を解くコツ
これは行政法だけにいえることではないのですが、判例の問題は勉強に悩むでしょう。
ただし、とりあえずは問題集をどんどん解きまくってください。
それからカテゴライズするのがいいかなと思います。
行政裁量でいえば、
- 裁量が認められる事例
- 認められなかった事例
の2種類に分けるといいでしょう。
そうすれば『整理』して覚えられます。
多項式がやたら出てくる数学の式をそのまま計算する人はいないですよね?
因数分解しながらまとめていくはずです。
勉強もまさに因数分解の作業が必須となります。
さらに、判例法において
- 全く許容できない
- 〜する余地はない
という100%断言する選択肢は間違いである場合が多いです。
これはあくまでも「多い」なので一概にはいえませんが、判例は「〜しない限り」といった逃げ道が割と用意されています。
選択肢が難しくて悩んだ場合は、断言しているものを積極的に取り除くのがいいかもしれません。
ただ、1番はしっかりと正答を選べることなので、最終手段にしてくださいね(笑)
5.まとめ
今回は行政法から『行政裁量の判例』について書いていきました!
まずは、上手くカテゴライズしていきながら
- 行政裁量が適法と認められたケース
- 行政裁量が違法と判断されたケース
の2パターンを整理していきましょう。
○行政裁量が適法と認められたケース
- 神戸税関訴訟
- 教科書検定と国家賠償訴訟
- 伊方原発訴訟
○行政裁量が違法と判断されたケース
- 児童遊園設置
- 剣道受講拒否事件
を今回は紹介しました。
しかし、まだまだ判例はありますので他の参考書も使用しながら押さえてください!
ご覧いただきありがとうございました!