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行政裁量の判例を紹介!公務員試験では必須分野

以前、別の記事で行政裁量の定義について説明しました。

 

今回は、行政裁量の内容に出てくる判例を一通り紹介していきたいなと思います。

きちんと事例を押さえて公務員試験で解けるように勉強していきましょう!

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◆この記事でわかること◆
・マクリーン事件の具体的な内容
・土地収用法に関する法令
・行政裁量に関する法令

 

 

行政裁量に関する判例

では、行政裁量に関する有名な判例を次々と紹介します。

  • マクリーン事件
  • 土地収用法の判例
  • 神戸税関訴訟事件
  • 家永教科書裁判
  • 伊方原発訴訟
  • 児童遊園設置
  • 剣道受講拒否事件

公務員試験で合格するには、全ての内容を網羅しなければなりません。試験で問われそうなポイントを中心に、大まかな背景をマスターしましょう。

マクリーン事件

まず紹介するのが『憲法』や『行政法』の代表的な判例ともいえるマクリーン事件についてです。

マクリーン事件を一言で言えば在留外国人の政治活動や在留期間を決めた法務大臣の行為は適切性が争われた事件です。

公務員試験では重要な範囲となるため、しっかりと内容を押さえましょう。

マクリーン事件の概要

マクリーンさんというアメリカ人の方がベトナム軍事介入や日米安全保障条約の反対運動を日本で行いました。

一方で、マクリーンさんは英語教育と琵琶や琴の研究を行う目的も持っていました。

そこでマクリーンさんは、これらの目的を理由に在留の更新許可を申請します。

しかし、法務大臣は以下の理由から申請の一部を拒否しました。

  • 申請内容と一致していない
  • 政治活動

結果的に、マクリーンさんは希望通りの更新ができないことを不服に感じて行政訴訟を起こします。

最高裁の判例

最終的に最高裁まで持ち込まれ、次のように判決が下されました。

  • 憲法は外国人の入国や在留を保障したものではない
  • 更新事由の有無の判断は法務大臣の裁量に委ねるべき
  • 基本的人権の自由は性質上問題ない
  • 外国人にも及ぶが在留制度の枠内にすぎない

最終的には、判断が常識的に考えて著しく妥当性を欠かない限りは違法ではないと結論が出されます。

土地収用法の判例

続いては、逆に行政の裁量が認められなかったケースを紹介していきましょう。内容がやや複雑であるため、背景をしっかりと押さえてください。

争われた内容

こちらは、一般国道に面したところでお店を構えていた事業者が『高架道路』の設置のために土地を一部収用された事件です。

土地の収用というと地代が支払えなくなった際に土地を没収されるのを想像するかなと思います。

しかし、中には国や地方自治体の政策を実行するために収用されるケースもあるのです。

事業者は土地を一部収用されて高架道路が建設されたのを機に運営が難しくなりました。

そして、最終的には廃業に追い込まれてしまいます。

国の政策などといった理由で土地を収用され、国が代わりに補償を出す制度を損失補償といいます。

では、このケースでは損失補償の対象となったのでしょうか。地方裁判所と最高裁判所の結論をまとめます。

地方裁判所(地裁)の結論

まず、結論をいうと地裁と最高裁で判断が異なりました

地裁は、高架道路の設置が廃業に追い込まれた直接の原因にはならないと判断しました。

ちなみに直接的な原因ではなく、あくまで間接的な事案に過ぎないという考え方を反射的利益と呼びます。

そのまま事件は上訴されました。

最高裁の判例

最高裁はこの土地収用法における補償金は客観的に認定されるべきであり、土地収用委員会に裁量権はないと判断しました。

そして、次の補償を請求できる逆転裁判へ発展します。

  • 事業者に対する正当な補償
  • 年5分にかかる金利

このような行政行為は、国民の生活にも大きな影響を及ぼします。

その意味では、最高裁の判例も正しいと認識せざるを得ないでしょう。

神戸税関訴訟

これは国家公務員の懲戒解雇に関する判例です。

前回のブログの『効果裁量』の項でまとめたものです。

国家公務員の懲戒処分に関しては、懲戒権者に裁量が認められると司法も判断しました。

詳しくは前回の記事をご覧ください。

教科書検定と国家賠償訴訟

事件名は家永教科書裁判です。ギネス認定されるほど長期間にわたった民事裁判として有名です。

こちらの事件では「教科書検定は行政が書籍の内容をあらかじめチェックする検閲にあたるのでは?」と争われました。

なお、検閲とは行政権が書籍や新聞などの表現内容を強制的に調べることです。日本国憲法下では、行政権がこのような権力を行使するのを禁止しています。

教科書検定も確かに書籍の内容をチェックするものですが、裁判所は検閲に当たらないとしました。

教育において不適切な教科書が使われるのを防ぐ方が重要であるためです。

ただし、検定内容に裁量権の逸脱がないことを条件としています。

伊方原発訴訟

こちらは「原発」の建設について争われた事例です。原発の新設に反対した住民が訴訟を起こしました。

原発の基準は専門委員会の科学的な見解を根拠とすべきでは?と問題視されます。

一応、裁判所は専門委員会の知識も参考にしながらも、内閣総理大臣の裁量は認められるとして住民側が敗訴しました。

しかし、2011年東日本大審災を皮切りに再度訴訟が起こされ、現在も係争中(争いの途中)とされています。

児童遊園設置

これは山形県余目町の事例ですね。余目町にトルコ風呂という風俗店が建設されるとし、住民の反対運動が起こります。

そこで住民は県知事に200m以内のところへ児童遊園を設置するよう申請を出しました。

風俗店は児童施設から200m以内のところでは運営できないこととなっています。

県知事はその申請を受理して児童遊園を設置し、風俗営業側の怒りを招いて訴訟へ発展しました。

司法の判断は行政の児童遊園を設置する行為は裁量の範囲を逸脱しているとし、違法と判断します。

剣道受講拒否事件

最後に剣道受講拒否事件を紹介しましょう。

これはある宗教上の理由により、剣道を受講できない高校生がその授業を休んでいました。

学校側は何の代替措置もとらず、剣道を受講しなかったとしてその生徒に「留年処分及び退学処分」を下します。

この措置に問題あるとして訴訟が起こされました。

最高裁は以下の条件を理由に学校が留年処分や退学処分を下したのは違法だと判断しました。

  • 剣道が進学に必ず必要だと言い切れないこと
  • 代替措置は普通に行えたはず

これらの判例は内容もしっかりと押さえておきましょう。

 

判例問題を解くコツ

これは行政法だけにいえることではないのですが、判例の問題は勉強に悩むでしょう。

ただし、とりあえずは問題集をどんどん解きまくってください

そこから分類するのがいいかなと思います。

行政裁量でいえば、次の2種類に分けるといいでしょう。

  • 裁量が認められる事例
  • 認められなかった事例

このようにするだけでも、ある程度は整理できます。

さらに、判例法において以下のように100%断言する選択肢は間違いである場合が多いです。

  • 全く許容できない
  • 〜する余地はない

あくまで「多い」なので一概にはいえませんが、判例は「〜しない限り」といった逃げ道が割と用意されています。

選択肢が難しくて悩んだ場合は、断言しているものを積極的に取り除くのがいいかもしれません。

どうしても覚え切れなかったときの最終手段と捉えてください。

 

まとめ

今回は行政法から行政裁量の判例について書いていきました!

まずは、上手く分類しながら各パターンを整理しましょう。

  • 行政裁量が適法と認められたケース
  • 行政裁量が違法と判断されたケース

しかし、まだまだ判例はありますので他の参考書も使用しながら押さえてください!

特に、行政法の判例百選から出題されるのが基本です。公務員試験のテキストと同じく、余裕がある方はこちらの書籍にも目を通してみてください。