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大麻合法化は日本であり得るのか?規制緩和の背景とは

2023年11月14日、武蔵野のはらっぱ祭りで「大麻グミ」を食べた人が続々と搬送された事件が起こりました。日本でも大麻合法化の声は見かけますが、こうした事件が起こると政府も慎重になるでしょう。

この記事では、日本における大麻合法化の関係と規制緩和について紹介します。社会問題を正しく知りたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

また、この記事は大麻の摂取を推奨する内容ではありません。大麻(マリファナ)はあくまで麻薬の一種であり、人体にも悪影響を及ぼしかねない危険な存在です。

そのあたりは、勘違いのないように目を通していただければ幸いです。

 

大麻合法化の国


(※画像はイメージです)

世界に目を向けてみると、大麻合法化を採用している国は少なくありません。その世界の基準に合わせ、日本でも解禁にせよという声が見かけます。ここでは、大麻を合法と捉えている国を一覧で紹介しましょう。

アメリカ合衆国

アメリカ合衆国は連邦制を採用しているため、国単位で見ると話がややこしくなります。

アメリカの中では、大麻合法化を認めている州もあると説明した方が正しいでしょう。

嗜好品として大麻合法化が適用されている州は以下のとおりです。

  • ワシントン
  • カリフォルニア
  • マサチューセッツ
  • コロラド
  • アラスカ
  • オレゴン
  • バーモンド
  • ネバダ
  • メイン

ほかにも、医療用大麻の利用が許されている州も存在します。しかし、こちらはあくまでそれぞれの州に定められた法律のみに適用された事例です。

アメリカ合衆国全体の連邦法では、依然として大麻の使用は許されていません。

カナダ

カナダは、2018年に国全体で大麻が解禁されました。日本におけるタバコみたいに、成人用の嗜好品として使用が認められています。

大麻合法化が適用されたのは、次のような理由があるそうです。

  • 犯罪組織への流通ルートを閉ざす
  • 市場の混乱を防ぐ
  • 未成年者の健康の保護

 

カナダでは、生産された大麻がマフィアなどの犯罪組織の手に渡る問題に悩まされていました。犯罪組織に資金が集まってしまうと、社会秩序や経済にも悪影響が及びます。

そこで、あえて大麻合法化を採ることで闇市への流通ルートを閉ざしたそうです。一般の市場にで出回れば、自由競争によって不当な資金繰りもできなくなります。

加えて、闇市では当然のように未成年者にも大麻を売買していました。未成年者の健康を守るためにも、成人用の嗜好品として販売することで闇市の減少を狙っています。

このように捉えると、大麻合法化の判断も合理的といえるかもしれません。

ドイツ

ドイツは、2023年8月16日に大麻の娯楽目的での使用を認めるべく閣議決定されました。

ドイツの大麻合法化に至った理由は、カナダと同様に闇市での取引をなくすためとされています。政府がしっかりと管理して、不当な売買を巡る資金繰りのルートを断ちます。

加えて、大麻合法化によって健康被害を防ぐ目的もあるようです。しかし、市場に出回れば当然多くの人が大麻を購入できます。

こうした観点もあり、連邦議会と連邦参議院が作成した法案に関して、国民の間でもさまざまな議論がなされているようです。特に、保守派の政党からは大批判を受けています。

 

 

大麻合法化のメリット


(※画像はイメージです)

大麻合法化は、社会において意外とさまざまなメリットがあります。賛否は置いといて、ここでは一般的に挙げられるメリットを紹介しましょう。

闇市の取引を断ち切れる

カナダとドイツの事例でも触れましたが、大麻は闇市で売買されるリスクが高い代物です。政府の目を盗みながら、裏道で多くの人に売買されています。

人々が大麻に依存すれば、売人はどんどん儲かります。この繰り返しにより、何十億円も稼ぐのが闇市の恐ろしさです。

このような売買が繰り返されれば、社会秩序はもちろんのこと経済状態も悪化してしまいます。正規ではない価格で売買され、他商品の物価にも影響を及ぼしうるためです。

日本では、戦後の闇市によって餓死者を減らすことができたとされています。そのため、時と場合によっては闇市の存在も決して悪になるわけではありません。

しかし、現状では日本でも闇市が法律で禁止されているように、他国でも大きな懸念材料の一つです。政治と経済の関係性が、大麻合法化の理由にも関わっています。

税収の一つとなりうる

大麻合法化を認めると、税収の一つになりうる点も主なメリットです。日本では、タバコや酒税には物品税として各々タバコ税や酒税が徴収されています。

このように大麻にも大麻税を適用できれば、財源確保の要素にもなるでしょう。ここでも、税は財源ではない論争が繰り広げられるかもしれませんが、少なくとも国の施策には役立つはずです。

社会保障関係費の確保が喫緊の課題であれば、大麻税を作って補填する方法もあります。

供給力改善も見込める

大麻合法化を認めることで、供給力の改善も見込めます。大麻は違法な薬物との認識が強いですが、衣服の材料にも活用できます。つまり、大麻合法化がなされれば衣服を中心に繊維品の供給力アップを見込める可能性があります。

大麻で作られた衣服を着用して問題ないのかと不安に感じる人もいるでしょう。結論からいえば、全くもって問題ありません。

なぜなら、衣服に使う大麻と嗜好品として使用される大麻はタイプが異なるためです。

一般的に、衣服の場合はヘンプ麻といわれる種類が使われます。嗜好品に使われるマリファナとは区別されます。

両者の違いは、THC(テトラヒドロカンナビノール)の数値です。

THCは大きな多幸感が得られやすいのを特徴とした成分で、情緒不安定や知能低下を招くといわれています。一方で、がん細胞の破壊にも役立つのではと注目されている側面もあります。

ヘンプ麻のTHC成分が3%程度であるのに対し、マリファナは20%以上あるようです。そのため、同じ大麻でも機能は全くもって異なります。

このような構造を理解すれば、決して大麻合法化にメリットはないとは言い切れないでしょう。

 

大麻合法化のデメリット


(※画像はイメージです)

無論、当然ながら大麻合法化が引き起こすデメリットも見なければなりません。今後の政策についても、これらを比較しながら決定することが求められます。

薬物依存につながりうる

大麻は一般的にゲートウェイドラッグと呼ばれています。なぜなら、大麻を発端にさらに毒性の強い薬物に手を染める危険性が高まるためです。

よく「大麻は依存性が少ない」といったデマが流れます。しかし、この見解は法務省や国立保健医療科学院でも警鐘を鳴らしている見解の一つです。簡単に流されないように注意してください。

そもそも、依存性の大小も体質を含めて複雑な要素が数多く絡んでいます。安易に他の薬物と比較できるものではありません

健康被害が増えるリスク

大麻を摂取することで、国民の健康被害が増大する恐れもあります。

嗜好品として使われるマリファナは、人体にとって有害物質の一つです。体質や摂取方法によっては、命を落とすリスクも高まります。

過去にも大麻を摂取した人が死亡したケースも複数ありました。

こちらも「大麻は健康被害がない」とデマを吹聴する人が現れます。このような人々は、大麻を使用する自分を正当化したいだけなので決して近づかないでください。

社会の秩序が乱れる

闇市の話と矛盾してしまいますが、大麻合法化によって社会の秩序が乱れるデメリットもあります。確かに、政府が管理することで闇市への流通は防げるかもしれません。

しかし、裏を返せば誰でも簡単に大麻を入手できる状況が作られています。悪人であれば、法の抜け道を使って簡単に悪事に手を染めることができるはずです。

その意味でも、大麻の栽培については許可制を採用した方がいいという見方もうなずけます。一度解禁すると再度禁止にするのは難しくなるので、慎重な判断が求められます。

 

日本では大麻は合法?


(※画像はイメージです)

日本では、2023年11月現在でも大麻は原則として違法とされています。仮に大麻を所持または使用した場合、次の刑罰の対象になるので厳重に注意してください。

大麻取締法 第24条の2

大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。

 

大麻取締法 第24条の3

次の各号の一に該当する者は、五年以下の懲役に処する。
一 第三条第一項又は第二項の規定に違反して、大麻を使用した者
二 第四条第一項の規定に違反して、大麻から製造された医薬品を施用し、若しくは交付し、又はその施用を受けた者
三 第十四条の規定に違反した者

引用:e-Gov法令検索

基本的に大麻を所持・使用するには、大麻取扱者(大麻栽培者+大麻研究者)として都道府県知事の免許を受けなければなりません。この規定に違反して、所持や栽培した人は5年以下の懲役に処されます。

大麻取扱者の規定も、大麻取締法で厳重に定められています。規制の厳しさから、令和2年時点の大麻栽培者は全国で30人しかいないそうです。

 

 

日本は規制緩和される?


(※画像はイメージです)

世界で大麻合法化を採用する国は増えていることから、日本でも規制緩和されるのではと思う人もいるでしょう。しかし、嗜好品目的での大麻合法化は一般的にされないと考えた方が賢明です。

ここでは、日本の大麻に関する法整備の歴史も振り返りつつ、規制緩和の現状を紹介します。

大麻が禁止された背景

日本で大麻の所持や栽培が禁止された背景には、GHQによる法整備があります。戦前の日本では、伝統の一つとしてヘンプ麻は自由に栽培されていました。

特に天皇の衣装づくりにも大きく貢献したとされています。しかし、GHQの指導によって大麻はヘンプ麻も含め、一律に所持および栽培を禁止されました。突然の出来事に、当時の日本政府も驚きを隠せなかったようです。

その法改正の真意を知らなかった農家が、ヘンプ麻を栽培してしまいGHQに検挙されたケースも起こりました。

元々、大麻取締法はヘンプ麻とマリファナを区別し、合法的に栽培している農家を救うための法律でした。

ところが、結果的に大麻を全て悪とみなしてしまい、農家の活動を制限したとも考えられています。日本で大麻取扱者が30人しかいない現状にも繋がっているでしょう。

大麻取締法改正が閣議決定

大麻取締法が制定されたのは1948年です。この頃は日本国内において、大麻の種子も含めて取り扱うのが禁じられていました。

1953年の法改正で種子については対象外となるものの、1991年では日本国外の所持や栽培においても日本の法律で処罰する方針に変わります。

そこから時が経ち、2021年には大麻取締法において新たな動きが見られました。その内容が下記の2点です。

  • 大麻使用罪の適用
  • 医療用大麻の解禁

それぞれの内容をさらに細かく解説しましょう。

大麻使用罪の適用

大麻取締法は所持や栽培による使用を禁じているものの、実は単純な使用には罰則が適用されていません。なぜなら、日本では古くから大麻が文化に用いられていたのもあり、身近に大麻草があったからです。

つまり、大麻草を野焼きすると誰でも簡単に吸引してしまうような環境でした。そのため、使用罪を認めてしまうと故意がないのに検挙されてしまうリスクがありました。検査する際には、尿から判断するほかないからです。

しかし、使用罪が存在していないと「大麻は使っても違法ではない」という誤解が広がってしまいます。こうした誤解を正すべく、使用罪の成立を政府は順調に進めています。

医療用大麻の解禁

大麻の使用を禁ずるものの、医療用大麻の解禁に向けた法整備も行われています。一般的に大麻に含まれている成分は、THCとCBD(カンナビジオール)です。

前者は幻覚作用を引き起こす悪い物質、後者は食品にも用いられるストレス緩和の効果があるとされています。

一方で、THCにも抗がん作用や認知症の改善にも効果があるのではとアメリカを中心に注目されているのが現状です。

もし医療用大麻が解禁されたら、医学の進歩を後押しする可能性はあります。大麻について「害を及ぼす存在」と断片的に捉えるのではなく、さまざまな観点からの考察が必要です。

 

まとめ

今回は、大麻合法化と日本および世界の現状について詳しく紹介しました。

まず、大麻は健康リスクや依存性が全くないといったデマには流されないでください。摂取方法によっては、最悪死に至るケースもあると覚えておきましょう。

その一方で、大麻にも繊維業や医療とさまざまな分野で活躍できるポテンシャルが隠れています。単に一括りするのではなく、細かく分けたうえで捉えることが大切です。

特に医療の業界で大麻が使われるようになれば、がんや認知症などの病気に悩まされる患者を1人でも多く救える可能性もあります。

正しい使われ方をするのであれば、規制緩和を行いつつ大麻合法化を目指してもいいのかもしれません。