公務員試験のミクロ経済学について、数々の分野を学習しました。
ここで一度、最も基本的な内容に戻りましょう。以下に記事を用意しているため、まだ読んでいない方は目を通してください。
ミクロ経済学は、大きく分けて下記の3点の捉え方があります。
- 消費者の視点
- 生産者の視点
- 社会全体の視点
今回は、生産者の視点に立ったミクロ経済学の内容を解説します。
仕事で何かを作るとき、常に利益を重視しなければなりません。
赤字の状態が続いてしまうと、生産を辞めざるを得ない状況にもなり得ます。
ここでは、損益分岐点と操業停止点の違いを主に説明しましょう。
損益分岐点と操業停止点
まずは、損益分岐点と操業停止点の違いを説明します。
ミクロ経済学を勉強し始めたばかりの頃は、違いが上手くわからないと感じた方もいるでしょう。
これらを区別するだけで、計算もある程度は解きやすくなるはずです。
ここでは、具体例も織り交ぜながら違いについてまとめます。
損益分岐点=赤字か黒字か
損益分岐点とは、生産活動が赤字か黒字かを決める点のことです。
ちょうど価格が損益分岐点にあたる企業は利益が0の状態です。要するに、赤字でも黒字でもありません。損益分岐点を下回った企業は、赤字と判断されます。
しかし、たとえ損益分岐点を下回っても生産活動自体を止めるわけではありません。
変わらず、製品は作り続けていきます。この辺りは、試験でも問われやすいポイントなので押さえておきましょう。
操業停止点=生産活動の停止
操業停止点は、生産活動を停止させるか否かの分岐点です。損益分岐点よりも下側に位置します。
赤字経営を続けた企業が操業停止点を下回ると、いよいよ生産活動を止めなければなりません。
なぜなら、固定費(機械などの維持費)も支払えなくなるからです。
このまま生産活動を続けても、ただ出費を増やしてしまいます。会社の存続にも関わる、重要な局面を迎えているといえるでしょう。
計算方法の違い
次に、損益分岐点と操業停止点の計算方法を解説します。
ここでポイントとなるのが計算式です。理屈も押さえた上で、式を作れるようにしなければなりません。
それぞれの内容を見比べながら説明しましょう。
損益分岐点の計算方法
損益分岐点を式にすると、
「MC=AC」です。
ミクロ経済学を勉強したばかりの方は、MCもACもいまいち意味が分からないでしょう。
それぞれの内容について説明します。
MC(限界費用)の考え方
MCは限界費用を指しており、完全競争市場では価格Pと同じ値になります。
このことから、「MC=P=AC」と式を置き換えられます。
ちなみに、完全競争市場とは以下の特徴を持つ状態のことです。
- 売り手と買い手がたくさんいる
- 市場への参加が自由
- 取引される財の質が同じ
- 全員が共通の情報を持つ
簡単にいえば、差別が存在しないような状態を指します。現実世界では特許や広告で差別化されるため、完全競争市場を作り出すことは困難です。
しかし、公務員試験を筆頭にミクロ経済学の問題を解くときには完全競争市場がベースとなります。
AC(平均費用)の考え方
一方で、ACは平均費用を指す記号です。とある期間の中で、平均していくらの出費が発生したかを指します。
企業が支払った費用の合計を示した記号は「TC(もしくはC)」です。こちらは、「総費用」と呼ばれています。
総費用を数量で割り算したものが平均費用です。
式で表すと「TC÷X」ですね。数量は基本的にxの文字が使われます。
こちらの具体的な話は以下の記事もぜひ参考にしてください。
MC=ACの関係性を取る
MCとACをそれぞれ求めたら、「=」で結ぶように式を作ってください(MC=AC)。この数式を解けば、損益分岐点にあたる費用と数量が求められます。
問題では、「TC=」の形で出題されるケースがほとんどです。まずは、数量Xを割り算して「AC=」の形に直します。
そこから「MC=」と置き換えるには、ACの式を「微分」しなければなりません。
微分のやり方については、こちらの記事を参考にしてください。
この計算をすれば、数量と価格をそれぞれ求められます。
ここで注意してほしいポイントは、最終的に求めるものを間違えないことです。
問題では数量について問われているにもかかわらず、価格を答えたら不正解となります。
せっかく解き方が合っていても、ケアレスミスをしてしまったら意味がありません。
公務員試験は時間との戦いですが、できる限り見直しするのをおすすめします。
赤字になったとしても、必ずしも生産活動を止めるわけではないよ!
操業停止点の計算方法
操業停止点の計算式は、
「MC=AVC」です。
損益分岐点と異なり、AC(平均費用)ではなくAVC(平均可変費用)が使われていることに注目しましょう。
平均可変費用の意味も踏まえて、式の作り方を解説します。
平均費用と平均可変費用の違い
まずは、AC(平均費用)とAVC(平均可変費用)の違いに触れていきましょう。
平均費用とは、上述のとおり一定の期間で平均して発生する費用のことです。この場合の費用には、大きく分けて固定費用と可変費用の2種類があります。
固定費用は、先述した機械にかかる電気代などの維持費です。こちらは、売上の状況にかかわらず一定額が発生します。
一方で、可変費用は時期によって大きく上下する費用です。具体例として、原材料費が挙げられます。
もし八百屋さんを営んでいた場合、基本的にイチゴは冬から春にかけて多く生産されます。
もちろん、育て方で時期をずらす方法もありますが、旬な野菜や果物は適した季節に販売するはずです。
このように同じ原材料でも、春夏秋冬で価格が大きく変わります。こちらが可変費用の考え方です。
そして、平均可変費用とは「可変費用のみ」を平均化したものになります。
MC=AVCを取る
平均可変費用は、「VC÷X」の式で算出できます。
そのため、TC(総費用)からFC(固定費用)を引き算しなければなりません。VC(可変費用)を出してから求めるようにしましょう。
次に、VC(可変費用)から数量Xを割り算してAVC(平均可変費用)を求めます。
後は、MCを出すためにAVC(平均可変費用)を微分するだけです。
基本的には、操業停止点の方が固定費用分を除くため簡単に計算できます。
損益分岐点と操業停止点の問題が出題されたら、操業停止点から先に求めることをおすすめします。
計算問題に挑戦
損益分岐点と操業停止点に関する練習問題を作ってみました。それぞれの計算方法に違いを押さえ、まずは自分で解いてみてください。
TC=X3-4X2+8X+2
ヒントは操業停止点を求めるには「固定費用を除いて考える」ことです。固定費用がどの部分にあたるか、しっかりと考えてみましょう。
解けた方も分からなかった方も、次の解説を参考にしてください。
操業停止点から求める
先程も書きましたが、このような問題が出てきたら「操業停止点」から先に求めましょう。
公務員試験の一次試験はマークシートが基本です。したがって、操業停止点が分かれば選択肢を半分まで削れます。
最悪、損益分岐点の部分が分からなかったとしても、正答できる確率は上がるはずです。簡単なところから解いてください。
操業停止点は固定費用を除きます。固定費用は、問題の「2」にあたる部分です。
文字(X)は、代入する数字によって値が変化します。つまり、以下の法則を押さえてください。
- 文字式→可変費用
- 文字がない→固定費用
そのため、VCは「6」を取り除いた形になります。
そこから数量にあたるXを割り算して、AVC(平均可変費用)を求めるだけです。
ここまで解いたら、AVCに「X=2」を代入してください。
最終的に求められる価格は4です。
後に損益分岐点を求める
操業停止点が分かったら、次は損益分岐点を求めます。しかし、損益分岐点は計算が難しくなるケースも少なくありません。
なぜなら、固定費用にもXを割り算しなければならないからです。と微分したときに計算しづらい形となります。
微分した後は、ダメ元で数字をどんどん代入してください。1から順番に代入すれば、数量は導き出せます。
ここでXに「1」を代入しましょう。
すると、となって見事に「0」となりました。
したがって、損益分岐点のときの数量Xの値は「1」です。
最後にの式のXに1を代入してください。
価格(AC)は7となるはずです。
損益分岐点の求め方が難しそうだな〜...
公務員試験だと生産量Xは1とか-1のように簡単な数字がよく入るよ!地道に数字を入れるのも1つの方法だね。
まとめ
今回は損益分岐点と操業停止点の違いについて解説しました。
企業の経営状況を把握する上で欠かせない概念であり、費用曲線を応用させた考え方です。
計算方法をそれぞれ押さえ、公務員試験に出題されても問題なく解けるように練習してください。