公務員試験のミクロ経済学では、上級財・下級財・ギッフェン財について出題される可能性もあります。日常生活では使わない言葉ですが、ミクロ経済学の勉強では重要です。
この記事では、公務員試験に一発合格した筆者が、上級財・下級財・ギッフェン財の具体例およびスルツキー分解をわかりやすく解説します。公務員試験を受験される方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
上級財とは
上級財とは、所得が上がると購入量も上がる財のことです。日常生活のほとんどの商品は、上級財に分類されます。定義を押さえるべく、具体例とともにグラフの描き方も見ていきましょう。
上級財の具体例
たとえば皆さんが学生時代の頃、月のバイト代が少なかった人もいるでしょう。月々の所得が少なければ、大きな買い物は基本的にしないはずです。
一方で社会人になり、月の所得が増えていくと車や家電にも手を出しやすくなります。大きい買い物にかかわらず、食品や衣服の購入量も増えていくのが普通です。このように大体の商品は、所得の増加に伴い購入量が増加します。
上級財をグラフで表す

上級財や下級財を分析するうえで、チェックしたい部分がグラフの傾きです。グラフを描く際には、横軸に数量(X)・縦軸に所得(Y)を取ります。
上図のa点を見てみると、横軸では正の方向に線が引かれています。さらに縦軸についても上向きに線が引かれており、同じく正の方向に進んでいるのがポイントです。つまり上級財では、横軸と縦軸の両方とも正の状態と言い換えられます。
下級財とは
下級財とは、所得が上がっているにもかかわらず、購入量が減ってしまう財のことです。上級財と比べると、やや変則的な財ともいえます。同じく具体例とグラフの描き方を詳しく見ていきましょう。
下級財の具体例
下級財の具体例として、筆者の場合は発泡酒が該当します。お金がない大学生の頃は、なるべく安いお酒を中心に飲んでいました。
しかし社会人になってからは、本格的なビールやワインを積極的に購入しています。所得が上がることで、購入量が少なくなる商品は皆さんにもあるはずです。
上級財や下級財については、必ずしも統一された財が存在するわけではありません。所得が上がっても、学生時代に飲んだ発泡酒が忘れられず、購入を続ける方もいるでしょう。
上級財と下級財の内容は、筆者が運営しているYouTubeの動画でも詳しく紹介しています。こちらも併せて参考にしてください。
下級財をグラフで表す

下級財をグラフで表すときも、定義の特徴をしっかりと頭に入れてください。理屈がわかれば、迷うことなく簡単にグラフが描けます。
同じように、縦軸に所得で横軸に数量の図を取ります。そこで、グラフを次のように描きました。
ここでは、b点より先の傾きに注目してみましょう。すると、横軸から見て負の方向(左側)にグラフが動いているはずです。所得が上昇しているにもかかわらず、数量が減っている状態を指しています。
そのため、b点以降のグラフは下級財を示していると判断できます。理屈をしっかりと押さえてしまえば、問題なく解けるため繰り返し練習しましょう。
ギッフェン財は下級財の一種
ギッフェン財とは、代替効果よりも所得効果が大きくなる財のことであり、下級財の一種に含まれます。つまり所得が上がると、逆に消費量を下げてしまうのが特徴です。ここでは、代替効果と所得効果の意味も一緒に解説していきます。
代替効果の意味
まず代替効果とは、2つの財を見比べたとき、片方の価格の変動がそれぞれの消費量にどう影響するかを示した効果です。たとえばおにぎりとパンが売られていました。
どちらも同じくらい好きだと仮定したとき、パンだけ値上がりしたらおにぎりを優先的に購入するはずです。反対にパンの購入量は、おにぎりよりも少なくなるでしょう。
代替効果では、個人の所得については考慮しません。あくまで2つ以上の財の価格を見極め、消費量にどう影響を与えるかを捉えるのが特徴です。
所得効果の意味
所得効果は、所得の変動が財の購入に与える効果のことです。上級財か下級財かを見極める考え方となります。
上級財であれば、所得の上昇に伴って購入量が増加します。一方で下級財は、所得が上昇すると購入量は減少するのが特徴です。ギッフェン財は下級財であるため、所得が上昇したら購入量は減ります。
ギッフェン財は所得効果が大きい
通常の下級財は、所得効果よりも代替効果のほうが大きくなります。たとえば、発泡酒とビールを見比べてみましょう。発泡酒が値下げした場合は、代替効果により発泡酒の購入量が増加します。
一方で発泡酒の価格が値下げすることは、所得的に「得した気分」となります。要するに所得が増加したと同視できますが、下級財は所得が増加すると購入量が減少する財です。このように代替効果と所得効果において、購入量の増減が反対となっています。
そこで通常の下級財は、代替効果のほうが大きくなることを思い返してみましょう。つまり所得効果で購入量が減少するものの、代替効果が大きいため、最終的には購入量がわずかに上昇するわけです。
反対にギッフェン財の関係は、「所得効果>代替効果」です。上記の例で考えると、代替効果による購入量の増加よりも、所得効果による購入量の減少のほうが大きな影響を与えます。したがってギッフェン財においては、最終的な購入量が減ります。
ギッフェン財とスルツキー分解

財の価格が変化したとき、代替効果と所得効果について解析する手法をスルツキー分解と呼びます。ここでは「X財(ギッフェン財)の価格が減少した」ことを例に出します。横軸はX財の購入量、縦軸はY財の購入量を指しているのが特徴です。
X財とY財それぞれを、どのように購入したいかは無差別曲線で表します。一方で直線については、予算制約線を指します。
予算制約線は元々E0と接する形で引かれていました。しかし無差別曲線が右上にシフトする際、元の予算制約線と接する形で新たな予算制約線が登場します(E2と接する)。
さらに新しく引いた予算制約線との平行線を、シフトする前の無差別曲線と接するように書きます(E1)。こちらがスルツキー分解の基本的な表し方です。
以上を整理したうえで、代替効果と所得効果を見ていきましょう。なお無差別曲線と予算制約線については、下記の記事でも詳しく解説しているのでチェックしてください。
無差別曲線とは?予算制約線と最適消費点をグラフで解説 - 【資格の教室】ヤマトノ塾
代替効果の動き
代替効果は、あくまで2つの財を見比べたときのそれぞれの購入量です。片方の消費量が上がったとしても、もう一方の消費量が下がるため、効用は変化しません。
つまり無差別曲線そのものに動きはないため、U1の範囲で点を動かす必要があります。したがってE0からE1に向かう動きが、代替効果の変化を指しています。
所得効果の動き
続いてX財の価格が減少したことで、発生する所得効果を見ていきましょう。本来は価格が減少すれば、購入できる量が増えるため、無差別曲線は右上方向に動かさないといけません。つまり効用自体は上昇しているのがポイントです。
無差別曲線をシフトさせ、元の予算制約線と接する形で新しく引かれた予算制約線まで持っていきましょう。このときにE1からE2へと変化する状態が、所得効果を表しています。
ギッフェン財の見分け方
E0からE1への動きが代替効果、E1からE2への動きが所得効果です。ギッフェン財は、「所得効果>代替効果」を示しています。
つまりE1からE2への動きが、E0からE1よりも大きくなっていれば、X財はギッフェン財といえます。ここで、もう一度同じ図を見てみましょう。

図を見てみると、X財の価格が低下したにもかかわらず、消費量自体はE0からE2と減っています。この動きから、まずはX財が下級財であることは証明できました。
一方で「E0からE1」と「E1からE2」の矢印を見てみると、後者のほうが長くなっていることがわかるはずです。したがってX財は下級財であり、ギッフェン財であると説明できます。
公務員試験のミクロ経済学では、以上のようにスルツキー分解を用いた問題も出題される可能性があります。練習問題で慣れており、本番では落ち着いて解くようにしてください。
上級財・下級財のまとめ
公務員試験のミクロ経済学を勉強する際には、以下の3つの財を押さえる必要があります。
| 財の名称 | 定義 |
|---|---|
| 上級財 | 所得が増えると購入量が増える財 |
| 下級財 | 所得が増えると購入量は減る財 代替効果>所得効果 |
| ギッフェン財 | 下級財の一種 所得効果>代替効果 |
通常の下級財とギッフェン財の区別がつかないときは、スルツキー分解の問題を解いてみましょう。図で整理すれば、それぞれの特徴をしっかりと覚えられるようになります。
ミクロ経済学は、私たちにとって身近な場面で起こる現象を科学的に捉えた学問です。できる限り日常生活から具体例をイメージすると、勉強しやすくなるでしょう。