夫婦は他人の子どもを養子にできることを知っていながらも、普通養子縁組と特別養子縁組の違いが分からない人もいるでしょう。日常生活においても役立つ知識ですが、行政書士試験の勉強でも押さえておきたい内容の一つです。
この記事では、普通養子縁組と特別養子縁組の違いについて詳しく解説します。行政書士試験を受験される方は、特に記事を参考にしてください。
普通養子縁組とは
普通養子縁組とは、当事者間の合意によって成立する制度です。筆者の場合、婚姻するにあたって妻のご両親の養子になりました。このように結婚や相続対策など、さまざまな理由で活用されることの多い制度です。
普通養子縁組の成立要件
普通養子縁組が成立するには、次の要件を満たす必要があります。
- 当事者間の合意に基づく
- 適切に届出をしている
基本的に普通養子縁組で要件となっているのは、お互いに意思の合致があることです。
養親の資格:20歳に到達
普通養子縁組で養親となる人は、20歳に到達していなければなりません。改正民法では18歳から成人になりますが、養親になれる年齢は20歳からです。改正とともに、年齢が引き下げられているわけではないので注意してください。
仮に20歳に到達していなかった人が、養親になったら家庭裁判所で取り消される要因となります。一方でそのまま20歳に到達してから6ヶ月間経過するか、追認したときは例外として認められます。特別養子縁組とは異なり、夫婦の一方のみが養親になることも可能です。
養子の資格:年齢に注意
養子の要件は、尊属や年長者を養子にはできない点です。仮に30歳の夫婦が、90歳の祖父を養子に迎えることは認められません。
養子が15歳未満である場合は、法定代理人が代わりに縁組の承諾をしなければなりません。未成年者ではなく、15歳未満と年齢が定められているので注意してください。
法定代理人が承諾するにあたり、養子の父母や監護者がほかにいるときは、その人の同意が必要です。父母の親権が停止されたとしても、同意が必要とされています。
ほかにも養子の要件として、以下の例外もあります。
- (養子に配偶者がいる)配偶者の同意がある
- (後見人が被後見人を養子にする)家庭裁判所から許可を得る
- (未成年者を養子)家庭裁判所から許可を得る(自己や配偶者の直系卑属を養子とするときを除く)
少々細かい内容になりますが、これらも併せて押さえてください。
養子縁組によって生じる効果
普通養子縁組が結ばれると、養子は養親の嫡出子となります。養親に血族がいる場合、養子はその人たちの親族として扱われます。
仮に養親が死亡したとき、養子も相続権を有するのが特徴です。相続分や遺留分についても、実子と全く変わりません。
一方で複雑なのが、養子にも子どもがいた場合です。たとえば50歳夫婦の養子として、20代女性が迎えられたとします。この場合に20代女性に1歳の子がいても、基本的に50歳夫婦と1歳の子の親族関係は成立しません。
特別養子縁組とは
特別養子縁組とは、家庭裁判所の審判によって成立する縁組制度です。普通養子縁組の手続きと全くもって異なるので、それぞれ区別してください。
特別養子縁組の成立要件
特別養子縁組を結ぶには、養親となる人が家庭裁判所に審判を請求しなければなりません。原則として、養子となる人の父母の同意が必要です。しかし以下のケースに該当するときは、例外的に同意が不要となります。
- 父母が虐待している
- 悪意の遺棄があった
- その他利益を著しく害した
特別養子縁組を結ぶと、養子となる人と実親の親族関係が消滅します。このように普通養子縁組とは違って、養子を守るのを目的としていることがわかるでしょう。
養親の資格:25歳以上
養親は、原則として25歳以上でなければなりません。さらに特別養子縁組は、夫婦が共同で養子縁組を結ぶ必要があります。夫婦のどちらかが養親にならないのであれば、特別養子縁組が成立しないので注意してください。
なお現代社会において、夫婦で年齢が異なるのは当たり前でしょう。仮に夫が25歳であっても、妻が20歳に到達していたら特別養子縁組が認められます。
養子の資格:原則15歳未満
特別養子縁組において養子となれるのは、原則として15歳未満です。この15歳未満は、養親が家庭裁判所に請求したときの年齢となっています。
しかし状況によっては、家庭裁判所がすぐに審判を下せないこともあるでしょう。そこで18歳に到達するまでは、家庭裁判所が審判を下せるのが特徴です。
普通養子縁組と特別養子縁組の違い
最後に普通養子縁組と特別養子縁組の違いをまとめます。それぞれの相違点を押さえつつ、行政書士試験の勉強に役立ててください。
成立要件の違い
普通養子縁組と特別養子縁組は、成立要件が全くもって異なります。普通養子縁組の場合、届出と当事者間の合意があれば縁組が成立します。
一方で特別養子縁組に関しては、家庭裁判所の審判を経ないと縁組が成立しません。普通養子縁組では、養子に配偶者がいたり、養子が未成年者であったりするときは同意や許可が必要でした。しかし特別養子縁組では、これらの許可も不要とされています。
養親・養子の適用年齢の違い
普通養子縁組と特別養子縁組では、養親・養子ともに適用年齢に違いがあります。普通養子縁組で養親となれるのは、20歳に到達した者のみです。しかし特別養子縁組では、原則として25歳に到達しないといけません(例外的に夫婦一方のみ20歳以上も可)。
養子については、普通養子縁組では養親よりも年齢を超えていなければ何歳でも可能です。一方で特別養子縁組は請求時に15歳未満、縁組時に18歳未満の要件を満たす必要があります。
養子の父母の同意
普通養子縁組については、縁組する際に養子の父母の同意を必要としません。養子が15歳未満において、法定代理人が承諾するケースで例外的に必要となるだけです。
一方で特別養子縁組では、原則として父母の同意を得ないといけません。上述したとおり、虐待や悪意の遺棄が見られたときは、例外的に同意を得なくてもよいとされています。
試験養育期間の有無
普通養子縁組では、試験養育期間は原則として必要ありません。一方で特別養子縁組には、6ヶ月間の試験養育期間が必要です。
特別養子縁組の場合、普通養子縁組とは異なり法律上の親子にならないといけません。そのため親子関係を形成してもよいか、家庭裁判所の判断を求めています。
縁組によって生じる効果
普通養子縁組が成立しても、養子と実方の父母の親族関係は解消されません。一方で特別養子縁組になると、養子と実方の父母は法律上の親子ではなくなります。
そのため特別養子縁組であれば、養子は実方の父母から相続できません。しかし血縁関係自体まで奪うわけではなく、養子が実方の父母と婚姻するのはNGです。
離縁するときの方法
離縁とは、養子縁組を解消する制度を指します。普通養子縁組であれば、意思の合致と届出によって離縁が成立します。ほかにも裁判離縁や死後離縁によることも可能です。
反対に特別養子縁組は、原則として離縁が認められません。とはいえ養親が虐待したり、悪意の遺棄をしたりするなど問題行動が見られたら大変です。そこで養子や実方の父母、検察官の請求により離縁が認められるケースもあります。
養子の内容まとめ
養子の内容を勉強するときは、普通養子縁組と特別養子縁組の違いを押さえないといけません。どのような手続きが必要か、成立要件は何かを理解しましょう。
養親や養子の年齢など、普通養子縁組や特別養子縁組にはさまざまな違いがあります。行政書士試験ではそこまで狙われませんが、範囲には含まれるので余裕があったら目を通してください。