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行政書士試験の民法の勉強法!択一式と記述式を攻略するには

行政書士試験で民法は、択一式と記述式の双方で出題されます。しかし民法は条文の数が多く、勉強が追いつかないと感じている人もいるでしょう。

この記事では民法の勉強法について、行政書士試験に短期一発合格を果たした筆者が解説します。受験生はぜひ参考にしてください。

 

行政書士試験の民法の勉強法

行政書士試験の民法の点数配分を簡潔に示した図

民法とは、日常生活に関するルールを定めた法律です。行政書士試験を含め、法律を使ったさまざまな試験で出題されます。

先ほども述べましたが、行政書士試験の民法における出題方法は、択一式と記述式の2通りです。それぞれに分けておすすめの勉強法を解説します。

択一式の勉強法

行政書士試験の民法は、合計で9問出題されます(36点分)。民法には総則から相続まで5つの項目がありますが、すべての範囲から幅広く問われるのが特徴です。

択一式の勉強法は、基本的に問題集を中心に解くことをおすすめします。実際の試験でどのように出題されるか、問題の傾向を先に押さえましょう。

とはいえ問題を解くだけでは、試験に必要な知識をすべて習得できないのも確かです。そこで民法の知識を補うために、テキストも併せて用意してください。

テキストにもさまざまな種類がありますが、個人的にはTAC(早稲田経営出版)がおすすめです。カラフルかつイラスト付きで、初心者でも勉強しやすいと思います。

また司法試験用にはなりますが、同じく早稲田経営出版の逐条テキストを愛用しています。司法試験用なので、より深い知識を身につけられるのが特徴です。

記述式の勉強法

行政書士試験における民法の記述式問題は、合計で2問出題されます。記述式も点数で言うと40点分あり、実質的な配分は択一式と変わりません。つまり択一式と同じくらい重要な範囲といえます。

民法の範囲が広いため、実際にどの内容が出題されるかは明確にはわかりません。ただし記述式で問われやすいのは、物権(特に登記)・契約です

2024年行政書士試験でも、代位登記と先取特権を絡んだ契約の内容が出題されました。問題集も使用しつつ、出題されやすい範囲を中心に勉強するとよいでしょう。

記述式問題は、択一式の勉強をするだけでも知識は身につきます。ただし問題を解くには、実際に文を書く練習も大切です。

特に記述式問題の場合、完答できなくても近い答えを書いていれば部分点がもらえます。キーワードが含まれていることも重要ですが、きちんとした文になっていないと点数は稼げません。知識だけではなく、文の作り方も練習しましょう。

筆者は「LECの過去問題集」を練習用に使っていました。この問題集を2周するだけでも、文をどのように作成すればよいかはわかるはずです。

 

民法の各範囲の勉強法

民法にはどのような分野があるかを簡潔に説明した図

民法には、総則・物権・債権・家族・相続と範囲が5つあります。ここでは、各範囲のおすすめな勉強法について紹介します。

総則:基本を押さえる

総則は制限行為能力者や失踪宣告、意思表示、代理、時効と重要なテーマが数多くあります。総則としての知識だけではなく、次編の物権や債権などにも深く関わるのがポイントです。そのため総則を勉強するときは、基本的な内容から重点的に押さえないといけません。

特に制限行為能力者は、狙われやすい知識も多い分野です。後見開始や保佐開始の審判などが、どのような効果をもたらすかを理解できるようにしましょう。

物権:応用問題も入念に

物権は占有権や所有権、法定担保物権といった物の権利に関わる分野です。こちらもほとんどが重要ですが、特に登記や法定担保物権は押さえておいたほうがよいでしょう。

物権の場合、登場人物が多数出てくる問題も数多く出題されます。「X」や「甲」などの文字も頻繁に使われるので、混乱せず問題を解けるようにしないといけません。

また先取特権や根抵当権など、専門知識の理解が求められる分野でもあります。日常生活で関わりのない知識も多いですが、上手くイメージを膨らませて勉強してください。

債権:総則と契約を中心に

債権の分野は、総則・契約・事務管理・不当利得・不法行為の5つに分けられます。どの分野も問われる可能性はありますが、優先すべき科目は総則と契約でしょう。これらは覚えるところも多いので、より力を入れて勉強する必要があります。

余裕が出てきたら、不法行為も勉強を進めておいたほうが得策です。ちなみに2024年の行政書士試験では、不法行為の問題で正答が2箇所あり、捨て問となりましたね。1問くらいは出題される可能性が高いので、判例を中心に目を通しておきましょう。

親族:優先度は低めでOK

民法では、婚姻や養子縁組といった親族の分野も含まれます。ただし総則や物権、債権と比べると優先度は低いといえます。

もちろん親権や後見開始の審判など、ほかの分野にも絡んでくる範囲であるため勉強はしておいたほうが得策です。一方で2024年度は選択肢には少し絡んできたものの、家族法から丸々出題されていませんでした。

まずは頻出度の高い、総則・物権・債権で6割程度取れるようにしましょう。なお、まれに記述式で家族法から出題されることもあります(2015年度など)。家族法の中でも、どこが狙われやすいかは見ておくのがおすすめです。

相続:択一式を押さえよう

相続の範囲は、択一式で数問程度出題される可能性はあります。しかし筆者が過去問を見た限りでは、2012年の遺言(遺留分)に関する内容くらいだったと思います。とりあえずは、択一式の対策をしていれば問題はないでしょう。

仮に記述式で出題されても、択一式の勉強だけである程度はカバーできます。ほかの受験生も、正直対策できている人は少ないはずです。

 

民法は何点取れればいい?

行政書士試験の民法は、記述式も2問ほど出題されますが、何点取れるかは模試を受けない限りはわかりません。本番の試験では、記述式は3問まとめての点数しか表示されないためです。

そのため択一式に限定して解説しますが、9問中5〜6問は正解したいところです。3ヶ月の勉強で合格を果たした筆者も、民法の正答数は5問ピッタリでした。とはいえ6割のボーダーを確実に超えるには、6問以上の正答を目指したほうが安心でしょう。

筆者の場合、記述式でおそらく1問は完答だったと思います。仮に択一式で5問以上を取ることができなくても、記述式での逆転自体は可能です。とはいえギャンブル性が少々高いので、択一式で点数を稼ぐに越したことはありません

一方で択一式で7割や8割取れていても、全く記述できなければ逆転される恐れもあります。択一式の目安は5問ですが、以下の記事も参考にしながら記述式の対策を講じておきましょう。

 

民法が難しい理由

行政法や憲法と比べて、民法が難しいと感じる人は多いはずです。その理由は、民法ならではの特性にあると考えています。ここで難易度の高い理由を知り、普段の勉強に生かしましょう。

そもそも条文が多すぎる

民法が難しく感じるのは、そもそも条文が全部で1050条と多すぎるためです。おまけに知識の幅も広く、物権や契約、相続とさまざまな内容を勉強しなければなりません。普段から目を通していないと、これらを理解するのは極めて困難です。

一方で民法の場合、各分野での知識が関連し合います。そのため点と点をつなぎながら、線で覚える意識が重要です

また日常生活に関わる内容であるため、行政法や商法よりはイメージしやすいでしょう。幅広い範囲を学ばないといけませんが、工夫次第では理解しやすい分野ともいえます。

応用問題がとにかく難しい

民法は、基本知識を活用した応用問題もいくつか出題されます。「甲」や「A」などの記号に惑わされ、思考が停止してしまった経験をほぼ全員が一度はしたはずです。筆者もその一人でした。

応用問題を解くには、自分で法律関係を示した図を書けるようにしましょう。下図で示したとおり、矢印やイラストを上手く組み合わせて対策してください。

判例まで手が届かない

民法も、憲法や行政法と同じく判例から出題されることがあります。憲法や行政法は条文が少なく、むしろ判例がカギを握る分野といえます。しかし民法の場合は条文の勉強に手一杯となり、判例まで追いつかない人もいるでしょう。

そこで勉強する際には、テキストや問題集で掲載されている判例を最低限覚えるのがおすすめです。全部に手をつけようとすると、逆に効率が悪くなってしまいます。

正直な話、あまりにもマニアックな判例はほかの受験生も対策できていません。テキストや問題集に記載されている頻出度を参考にしつつ、押さえるべきポイントをしぼりましょう。

 

行政書士試験は民法が重要

行政書士試験において、民法を得点源にするのは難しいと感じる人も多いでしょう。筆者も当初はそこまで得意ではなかったので、その難しさは十分理解できます。

ただし民法で足を引っ張ってしまうと、合格が遠のいてしまうのも事実です。範囲が膨大で大変ではあるものの、とりあえず点数を大きく落とさないことを意識してください。

行政書士試験の民法で稼ぐためには、記述式の対策が重要です。記述式では40点分も出題されるので、逆転できるくらいの点数を取れれば安心でしょう。記述式を1問でも完答に近い答案を書けたら、逆転する可能性は十分高まります。