公務員試験の行政法では、行政不服審査法も問われやすい内容のひとつです。行政事件訴訟法との区別が付きにくく、難しいと感じる受験生も少なくないでしょう。
この記事では、行政不服審査法の審査請求・再審査請求・再調査の請求について詳しく解説します。公務員試験や行政書士試験を受けられる方は、ぜひ参考にしてみてください。
行政不服審査法とは
行政不服審査法とは、ある行政の権力行使に不服申立てができる制度です。要するに、行政に対して文句を言える制度を指しています。
こちらも法律として定められており、一般市民の生活を守るうえで欠かせません。公務員になったあとも、少なからず関わってくる法律なので内容をしっかりと押さえてください。
行政不服審査法の重要用語
行政不服審査法を勉強する際に、押さえておくべきワードが以下のとおりです。
- (再)審査請求
- 再調査請求
- 裁決
- 教示
このあたりは、公務員試験の問題にも出てくる可能性があるので押さえてください。
行政事件訴訟との違い
行政事件訴訟とは、第三者機関である裁判所が関与するといった違いがあります。そのため基本的に行われるのは「裁判」です。
行政不服審査はあくまで「裁決」であり、司法が決断を下すわけではありません。
こうした性質上、より厳格な審査が行われるのは行政事件訴訟のほうです。ただし厳格なあまり、手続きや手間がかかりやすいといったデメリットもあります。
行政不服審査は比較的手軽であるものの、行政主体で行われるため公平性がやや欠けるのが欠点です。
行政事件訴訟法については、以前も記事でまとめています。まだ見ていない方は、こちらも参考にしてください。
審査請求とは
審査請求とは、行政の処分や不作為への不服を申し立てることです。
これまで不服申立てには、審査請求と異議申し立ての2種類がありました。しかし平成28年4月施行の行政法改正により、これらは「審査請求」に一元化されます。
不服申立適格
審査請求を申し立てる権利を「不服申立適格」と呼びます。行政事件訴訟法の「原告適格」と同じ概念だと覚えてもらってOKです。
一般的に不服申立適格を持つのは、処分によって法律上保護された利益を侵害される人と定義されます。
例えば、景品表示法に違反するとして不服申立てをした主婦連合会は、一般消費者にすぎないとして審査請求が認められませんでした(主婦連ジュース事件)。
こちらの事件では、あくまで反射的利益(たまたま利益を受けた)と考えられたわけです。行政法の範囲では、たまに問われることがあるので覚えてください。
審査請求期間
審査請求期間は次の2点です。
- 処分があったことを知った日の翌日から3ヶ月
- 処分があった日の翌日から1年
ただし再調査の請求があった場合、主観的期間(知った日の翌日から)は1ヶ月以内と短くなります。行政事件訴訟と比べて、期間が短めに設定されているのが特徴です。
このことからも、審査請求はなるべく短期間で完結させるのを狙いとしています。
不作為にも審査請求できる
行政上の不作為に対しても審査請求ができます。
不作為とは何らかの申請をしたにもかかわらず、行政が動いてくれないことです。ここはその事実だけ押さえてもらえば、とりあえずOKでしょう。
請求先となる行政庁
審査請求ができる行政庁は、原則として最上級行政庁です。しかし処分庁や不作為庁に最上級行政庁がある場合に限られます。
上級行政庁がない場合は、当該処分庁に請求すると定められています。
宮内庁長官や主任の大臣が上級行政庁となる場合、これらに対して請求するのがルールです。
なお「行政庁」は、行政機関の長を指しています。市区町村で見ると市長等、都道府県でいえば都知事等が当てはまると覚えてください。
再審査請求
再審査請求とは、審査請求の裁決に不服のある人が例外的に提起できる不服申し立てのことです。あくまで例外なので、個別の法律で許容される必要があります(条例は不可)。
対象と不服申立て先
再審査請求の対象は、不服に感じた原処分または原裁決です。裁判の控訴に近い性質を持ち、審査請求の第二審と呼ばれることもあります。なお不作為は対象にななりません。
再審査請求の不服申し立て先は、「個別の法律で定められた行政庁」となっています。審査請求と同じく、審理人の指名も可能です。
不服申立て期間
なお不服申立て期間は次のとおりです。
- 原裁決があったのを知った日の翌日から1カ月
- 原裁決があった日の翌日から1年間
こちらも審査請求の場合と同じく、「翌日から」が基準となります。数字の部分は狙われる可能性もあるので、しっかりと覚えておきましょう。
また起算点はあくまで「原裁決があった日の翌日」です。「原処分」ではないので、必ず区別して覚えてください。
再調査の請求
再調査の請求とは、処分に対して取り消しや変更を求めることです。こちらは国税や関税に関する事務など、膨大な量を処分する場合に例外的に認められています。
再調査の請求の基本原則
再調査の請求が認められるのは、処分庁以外の行政庁に審査請求が可能な場合です。当該請求の基本原則として、自由選択主義が挙げられます。
審査請求と再調査の請求を選べるケースを想定しましょう。審査請求を選んだら再調査の請求はできないとされています。一方で再調査の請求を選んだ場合、その決定が下された後でないと審査請求はできません。
再調査請求の対象も「処分のみ(不作為は不可)」であり、判断は裁決ではなく決定をもって行われます。不服申立て先は「処分庁」です。再審査請求と違って、審理員制度はありません。
再調査の請求の申立期間
再調査請求の申立期間は、次のように定められています。
- 処分があったのを知った日の翌日から3カ月
- 処分があった日の翌日から1年間
再審査請求とは数字が異なるので、きちんと区別しましょう。
行政不服審査法の勉強法
行政不服審査法は、行政事件訴訟法と混同しやすい法律です。勉強する際には、これらの制度が全くもって異なることを念頭に置きましょう。
加えて審査請求や裁決など、行政不服審査法ならではの専門用語も覚える必要があります。これらを押さえておけば、問題の内容もイメージしやすくなるでしょう。